Words of love 〜αとΩ番の誓い〜

浅葱

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帰国

突然の発情②

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ーside 奏ー

「で、どうなってこんなことになったんだ?兄貴?」

換気のために室内の窓を暫く解放した後、向かい合わせの1人がけのソファーに座り聞く。

兄貴は、仔猫のように丸まって意識を飛ばした七草を優しく仰向けにしてやり、頭をそっと自身の膝の上に載せてやった。

「今回の緊急事態で抑制剤の服用を丸1日分飲み忘れてたんだと…。と言うか、急患対応で飲む暇もなかったんだと思う。元々、不順だったって言ってたから何らかのホルモンバランスの乱れを引き起こしたんだと思う。その上、αの俺とこの空間に2人きりになった事で発情ヒートを引き起こした。」

「なるほどね…。αの中でも数パーセントしか居ない運命の番ってヤツを見つけちゃったってワケか…。」

七草の頭を優しく撫でる兄貴は、

「多分な…。でも、こいつはそんな事、からっきしも思ってないかも知れないけどな。発情ヒート状態でも、必死に俺のことを心配して遠ざけようとしてた…。」

と悔しそうに言い、頭を撫でていた兄貴の手は白くなる程握りしめられていた。

「尊敬しているってヤツについては、何か聞き出せたの?」

換気のために開放していた窓を閉め、クローゼットになっている部分からタオルケットを手に戻って来ながら聞く。

「いや、それについては何も聞けてない。唯、恋人はいないって言ってた。番がいないのは、頸をさっき見たから間違い無いと思う。」

タオルケットを掛けながら、

「なら、ネックガード着けさせた方がいんじゃねぇの?うちの職員、殆どαだぞ。格好の餌食になっちまう。兄貴から言いにくいんなら、俺から話してやろうか?」

「今夜、食事に誘っている。そこで話してみようと思うが、お前も同席してくれないか?もし…、もし、俺が言えなかったらお前から話してくれないか?」

俺から見ても完璧だった兄貴が、こんなにもしおらしくなって拍子抜けといえば拍子抜けだが、恋愛初心者と言っても過言ではない兄貴には、初っ端からデカすぎる課題だろう…。


「わかった。何処に行く予定?」

ソファーに座りながら尋ねると、

「天ぷらが旨い店…」

ボソリと呟く兄貴。

「はぁ?天ぷらが旨い店っ⁇」

驚いて問いただせば、

「向こうで、多少は自炊してたらしいけど日本食に飢えてたって。だから、日本に帰ってきたら天ぷらが食いたかったって…。」

お~、お~、完全にデレてますやん!超レアだけど、何処に行ったんだ、完璧な兄貴の姿ぁ~~!
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