Words of love 〜αとΩ番の誓い〜

浅葱

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帰国

再会

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無事に成田に着陸し、緊急患者の為降機が一番に行われる為自席に戻り機内持ち込みの荷物を手早く纏める。
患者に付き添い降機する僕。

CAに、降機の際に協力の感謝の言葉を伝え、機長にも伝えてくれる様に頼んだ。
グランドスタッフには、預けている荷物は申し訳ないが聖心大学付属病院外科の僕宛に送ってもらう様に伝えると、快く了承してくれた。

地上には既に救急車が待機しており、ドクターヘリの駐機場所までの短距離だが搬送を担ってくれた。
ドクターヘリの側には、黒い影が2つ見える。1人はスクラブを着ている。多分、司波奏だろう。
と言うことは、もう1人は憧れていた司波部長…。

救急車が、ヘリの直ぐ後方に停止した。
ヘリの後方は既に搬入ができる様に解放されていた。救急車の後部のドアが開き、さっと降車し司波兄妹の元に歩み寄った。

「先ほどはお電話で失礼しました。七草真琴です。よろしくお願いします。」

と頭を下げた。

「こちらこそ。私が司波理です。で、こちらが弟の奏です。」

電話から聞こえたバリトンボイスが心地よく響いた。
僕の身体の奥から、何かが震える様に沸き起こってきた。

「兄貴、患者の搬送を急ごう。必要があれば、機内での鎮静と挿管、CV挿入が必要かもしれない。」

患者の様子を見ていた司波奏が叫んだ。

「そうだな、今回は看護師の同乗が無いので機内のことに詳しい奏がその位置に搭乗します。七草先生は患者の頭部側へ。」

挨拶もそこそこに、僕は、機体の向かって右側から機内に乗り込みヘッドセットを装着した。

離陸して間も無く、今後の検査や処置に患者に鎮静が必要となる為鎮静をかけることを提案した。
奏先生が、鎮静剤の準備をしてくれ、更に挿管の準備も整えてくれた。
鎮静を行なった後、経口からの挿管を試みたが頸部の可動域制限があり困難な為、経鼻挿管に切り替えた。
ヘッドセットを片方外し、挿管チューブの端に耳を近づけ全神経を集中させ、患者の呼気に合わせブラインドで挿管を行なった。
無事に挿管ができたことを確認してから、留置を行った。

「流石、キャロライン教授の秘蔵っ子やな。一発でブラインド挿管を決めるとは…。救命でも活躍できるだけの技術がしっかりあるよ。七草先生。」

「見事な手技でした。私でも、ブラインド挿管はこんなに短時間では出来ませんよ。」

「いえ、僕もブラインドを一発で決めれることは稀ですから…。まだまだですよ。」

「循環器専門の医師のフライトドクターがウチはいないから、何かあった時にはフライトドクターとして搭乗して欲しいくらいだよ。院長に交渉してみてもいいかもなぁ~。」

「司波部長、到着後の検査なのですがカテ造影、必要に応じてPCIも行う方向ではどうかと考えていますが準備的にはいかがでしょうか?」

この後の方針決定は、着任前の為に僕には決定権がないので確認したのだ。

「カテ室、オペ室全て抑えていますから安心して下さい。それと、七草先生には本日は臨時職員として全ての処置において決定権を委ねますので任せましたよ。目の前の患者さんを全力で救って下さい。」

尊敬する人からの一言が僕をやる気にさせてくれる。

「全力で治療にあたります。有難うございます。」

そう頭を垂れて言うと、

「そろそろ、患者情報をセンターに報告した方が良いかもね。センターに繋げるよ?」

奏先生がフットスイッチで通話を開始した。
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