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帰国
情報
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翌朝、約束通り奏が早めに医局のあるフロアーに姿を現した。
昨夜の中等部時代の友人達との飲み会での情報を伝えに来た。
「昨日は中等部時代の5人で集まったんだけど、アイツの中等部以降の事は医者になるまではあんまり分からなかったのが現状。でも、七草の家は、兄貴に姉貴結婚してて、姉貴はウチの病院に近い都内に住んでるらしいって。妹は今、ウチの大学生やってて薬学学んでるんだと。で、昨日集まったヤツの中にはアイツがΩだと思ったり知ったりする奴はいなかった。七草自身んのことは、中等部卒業後は多分兄貴の手元にある履歴に書いてある通りだとおもうけど、アイツ向こうで高校飛び級してるらしい。」
「あぁ、確かに高校は1年で修業していたな。」
「昨日のメンツに向こうの大学の医学部に半年だけ交換留学してたヤツが居たんだけど、そいつ曰く俺より2年は早く医師免許取ってたみたいで、あのキャロライン先生の元でバリバリやってたらしいよ。」
「確かに履歴書にはDr.キャロラインの勤めているSt. George Hospitalに勤務していたな。」
「だから、医学部の講師が出来るくらい知識も経験も豊富らしく、キャロライン先生の代理で何度か講義もしてたってさ。その講義を受けた時、何で医者になろうと思ったか聞いて見たら、『すごく尊敬する先輩が日本で医者をやってるから、いつか自分も一緒に働きたいと思って医者を目指した』って答えたんだってさ。だから、今回の帰国は多分その尊敬する先輩の医者と一緒に働くことが目的なんじゃねえのか?って話になってさ…。」
「ほう…。Dr.キャロラインより尊敬する医者がこの日本にいるのか。」
「でもよ、アイツが医者を目指そうと思ったのはアッチに行ってからじゃないんだぜ。交換留学に行ってたヤツも七草の稼業は知ってたみたいで、全くとは言い難いけど家業に沿う分野じゃない事に疑問を持ったらしくて、いつから目指したとかも聞いたら、『日本を立つ前には決めてた。』って答えたらしい。おまけに、心臓血管の専門を選んだのもその医者が循環器系の専門医になったから、らしいんだ」
「よっぽど、その医者と働きたいってことか…。しかし、日本で循環器系でそれほど尊敬する医者と言ったら限られるな。」
「そこなんだよ。世界的権威のキャロライン先生以上の医者ってマズいねぇと俺は思うけど、兄貴はどう思う?」
「よっぽど、その尊敬する先生に心酔してるか、恋愛感情でも持ってるかのどちらかってことか…?」
「後者だった場合、変な事態が起こったらマジやばいんじゃね?七草の家の事情もあるし、Ωだから万が一勤務中にヒートでも起きたら、一溜まりもないぜ。αなら、発情が来そうになったら匂いで感じ取れるけどウチの病院のα何人いるか分かんね~じゃん?」
「奏の言う通りだな。指導医選びが更に厳しくなって来たじゃね~か…。」
2人して、頭をひねっていると突然奏が手をポンと叩いた。
「管理職特権で、兄貴が指導医すればいいんじゃね?下手に、他の先生に任せず、自分の監視下においとけば都合いいじゃん!アイツの経歴からしても、今の外科の医局で兄貴以上の適任者はいねぇだろ?」
食い気味に身を乗り出して訴える。
「俺が指導医か…。そこは盲点だったな…。」
「だろ?俺って、アッタマいい~♪」
奏が自画自賛しているので
「助かった。マジで、指導医決定に苦慮していたんだ。奏、今度飯でも奢るわ。」
そう伝えると、
「じゃ、叙○苑の焼肉で!救急はヘリ担当もあるし、マジで体力いるんで。兄貴の奢りならいくらでも食えるし!」
と、ガッツポーズを決めていた。
「そうだな、七草が来てから顔合わせも兼ねて行くか?お前も同級生だった体なら同席しててもおかしくあるまい。」
と提案すれば、
「じゃ、日時決まったらまた連絡してよ!俺、朝のカンファレンスあるから行くわ。」
後ろ手で手をヒラヒラさせて部長室から出て行った。
昨夜の中等部時代の友人達との飲み会での情報を伝えに来た。
「昨日は中等部時代の5人で集まったんだけど、アイツの中等部以降の事は医者になるまではあんまり分からなかったのが現状。でも、七草の家は、兄貴に姉貴結婚してて、姉貴はウチの病院に近い都内に住んでるらしいって。妹は今、ウチの大学生やってて薬学学んでるんだと。で、昨日集まったヤツの中にはアイツがΩだと思ったり知ったりする奴はいなかった。七草自身んのことは、中等部卒業後は多分兄貴の手元にある履歴に書いてある通りだとおもうけど、アイツ向こうで高校飛び級してるらしい。」
「あぁ、確かに高校は1年で修業していたな。」
「昨日のメンツに向こうの大学の医学部に半年だけ交換留学してたヤツが居たんだけど、そいつ曰く俺より2年は早く医師免許取ってたみたいで、あのキャロライン先生の元でバリバリやってたらしいよ。」
「確かに履歴書にはDr.キャロラインの勤めているSt. George Hospitalに勤務していたな。」
「だから、医学部の講師が出来るくらい知識も経験も豊富らしく、キャロライン先生の代理で何度か講義もしてたってさ。その講義を受けた時、何で医者になろうと思ったか聞いて見たら、『すごく尊敬する先輩が日本で医者をやってるから、いつか自分も一緒に働きたいと思って医者を目指した』って答えたんだってさ。だから、今回の帰国は多分その尊敬する先輩の医者と一緒に働くことが目的なんじゃねえのか?って話になってさ…。」
「ほう…。Dr.キャロラインより尊敬する医者がこの日本にいるのか。」
「でもよ、アイツが医者を目指そうと思ったのはアッチに行ってからじゃないんだぜ。交換留学に行ってたヤツも七草の稼業は知ってたみたいで、全くとは言い難いけど家業に沿う分野じゃない事に疑問を持ったらしくて、いつから目指したとかも聞いたら、『日本を立つ前には決めてた。』って答えたらしい。おまけに、心臓血管の専門を選んだのもその医者が循環器系の専門医になったから、らしいんだ」
「よっぽど、その医者と働きたいってことか…。しかし、日本で循環器系でそれほど尊敬する医者と言ったら限られるな。」
「そこなんだよ。世界的権威のキャロライン先生以上の医者ってマズいねぇと俺は思うけど、兄貴はどう思う?」
「よっぽど、その尊敬する先生に心酔してるか、恋愛感情でも持ってるかのどちらかってことか…?」
「後者だった場合、変な事態が起こったらマジやばいんじゃね?七草の家の事情もあるし、Ωだから万が一勤務中にヒートでも起きたら、一溜まりもないぜ。αなら、発情が来そうになったら匂いで感じ取れるけどウチの病院のα何人いるか分かんね~じゃん?」
「奏の言う通りだな。指導医選びが更に厳しくなって来たじゃね~か…。」
2人して、頭をひねっていると突然奏が手をポンと叩いた。
「管理職特権で、兄貴が指導医すればいいんじゃね?下手に、他の先生に任せず、自分の監視下においとけば都合いいじゃん!アイツの経歴からしても、今の外科の医局で兄貴以上の適任者はいねぇだろ?」
食い気味に身を乗り出して訴える。
「俺が指導医か…。そこは盲点だったな…。」
「だろ?俺って、アッタマいい~♪」
奏が自画自賛しているので
「助かった。マジで、指導医決定に苦慮していたんだ。奏、今度飯でも奢るわ。」
そう伝えると、
「じゃ、叙○苑の焼肉で!救急はヘリ担当もあるし、マジで体力いるんで。兄貴の奢りならいくらでも食えるし!」
と、ガッツポーズを決めていた。
「そうだな、七草が来てから顔合わせも兼ねて行くか?お前も同級生だった体なら同席しててもおかしくあるまい。」
と提案すれば、
「じゃ、日時決まったらまた連絡してよ!俺、朝のカンファレンスあるから行くわ。」
後ろ手で手をヒラヒラさせて部長室から出て行った。
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