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番外編:疑われてもきみを抱く理由
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いつもと変わらない、忙しい一日が過ぎていった。
仕事を終えた私のもとに有沢さんがやってくる。
「ちょっといい? 五分だけでいいから」
「構いませんが……」
あんまり有沢さんらしくない言い方だった。
この人はいつだってきっぱりはっきりものを言う。
仕事に関係したことだとすれば、よほど人に聞かせたくない話なのだろう。
そんなに秘密にしなければならないことと言えば、やはりアキくんに関わることに違いない。
いい話か、悪い話か――。
少しドキドキしながら有沢さんと空き部屋に向かった。
先に入った有沢さんを追うようにして、後ろ手にドアを閉める。
そうするともう私たち二人だけで、一気に緊張が増した。
「それで……お話っていうのは」
「……神宮寺さんのことなんだけど」
「あの人が、なにか?」
有沢さんには早い段階ですべてを伝えている。
私が悩んでいた頃に助言をしてくれたからというのもあるけれど、顔を合わせることが多い以上、どういう関係かをはっきりさせておいた方がのちのち困らないだろうという判断によるものが大きかった。
「はあ……。ちょっと言いにくいことなのよね」
「……言いにくいこと、ですか」
「…………最近、神宮司さんとうまくやってる?」
「……え」
やはり、有沢さんらしくない。
もっとびしっと突っ込んできてくれれば、私だってどう答えればいいかすぐにわかる。
しかし、これではよくわからない。
(うまく……うまく……やれてる、よね……)
住まいをあのマンションに移してからというもの、ほぼ毎日のように求められている。
休みの日だって神宮寺さんの身体があいていればデートに行くし、そうでなくとも家で二人の時間をなるべく取るようにしている。
そう考えてから、確かに最近少し忙しさから過ごす時間が短くなっていたのを思い出した。
「関係が悪化したとは思っていませんが、最近はお互い仕事に注力しているので、そういう意味ではうまくやれていないと言えるかもしれません」
「あー……うん、そうね。うん、真面目な回答をありがとう」
「……そういうことを聞いているんじゃない、とかでしたか?」
「んー……いや、そういうわけでもないんだけど」
さすがに首を傾げる。
あまりにも、らしくない。
「有沢さんらしくないです。聞きたいことがあるなら聞いてください。別に隠すこともないですし」
「そう……ね。うん……」
「職場だからプライベートの話はしない……なんて気にしてるわけじゃないですよね」
アキくんが同じことをしたら止める。
でも、有沢さんなら別に止めない。
この人は頼れるかっこいい人であると同時に、とても女性的な人でもある。
恋バナと聞けば必ず首を突っ込むし、積極的に聞き出そうと飲みに誘うのもザラ。
かといって本当に不躾な質問はしてこないし、のろけもきっちり聞いてくれる。
からっと気持ちのいい性格だから、私も安心して話せていたのだけれど。
「私、なにを言われても気にしませんよ?」
「……はあ」
有沢さんが額を押さえて溜息を吐いた。
そして、意を決したように言う。
「神宮寺さん、浮気してるわよ」
仕事を終えた私のもとに有沢さんがやってくる。
「ちょっといい? 五分だけでいいから」
「構いませんが……」
あんまり有沢さんらしくない言い方だった。
この人はいつだってきっぱりはっきりものを言う。
仕事に関係したことだとすれば、よほど人に聞かせたくない話なのだろう。
そんなに秘密にしなければならないことと言えば、やはりアキくんに関わることに違いない。
いい話か、悪い話か――。
少しドキドキしながら有沢さんと空き部屋に向かった。
先に入った有沢さんを追うようにして、後ろ手にドアを閉める。
そうするともう私たち二人だけで、一気に緊張が増した。
「それで……お話っていうのは」
「……神宮寺さんのことなんだけど」
「あの人が、なにか?」
有沢さんには早い段階ですべてを伝えている。
私が悩んでいた頃に助言をしてくれたからというのもあるけれど、顔を合わせることが多い以上、どういう関係かをはっきりさせておいた方がのちのち困らないだろうという判断によるものが大きかった。
「はあ……。ちょっと言いにくいことなのよね」
「……言いにくいこと、ですか」
「…………最近、神宮司さんとうまくやってる?」
「……え」
やはり、有沢さんらしくない。
もっとびしっと突っ込んできてくれれば、私だってどう答えればいいかすぐにわかる。
しかし、これではよくわからない。
(うまく……うまく……やれてる、よね……)
住まいをあのマンションに移してからというもの、ほぼ毎日のように求められている。
休みの日だって神宮寺さんの身体があいていればデートに行くし、そうでなくとも家で二人の時間をなるべく取るようにしている。
そう考えてから、確かに最近少し忙しさから過ごす時間が短くなっていたのを思い出した。
「関係が悪化したとは思っていませんが、最近はお互い仕事に注力しているので、そういう意味ではうまくやれていないと言えるかもしれません」
「あー……うん、そうね。うん、真面目な回答をありがとう」
「……そういうことを聞いているんじゃない、とかでしたか?」
「んー……いや、そういうわけでもないんだけど」
さすがに首を傾げる。
あまりにも、らしくない。
「有沢さんらしくないです。聞きたいことがあるなら聞いてください。別に隠すこともないですし」
「そう……ね。うん……」
「職場だからプライベートの話はしない……なんて気にしてるわけじゃないですよね」
アキくんが同じことをしたら止める。
でも、有沢さんなら別に止めない。
この人は頼れるかっこいい人であると同時に、とても女性的な人でもある。
恋バナと聞けば必ず首を突っ込むし、積極的に聞き出そうと飲みに誘うのもザラ。
かといって本当に不躾な質問はしてこないし、のろけもきっちり聞いてくれる。
からっと気持ちのいい性格だから、私も安心して話せていたのだけれど。
「私、なにを言われても気にしませんよ?」
「……はあ」
有沢さんが額を押さえて溜息を吐いた。
そして、意を決したように言う。
「神宮寺さん、浮気してるわよ」
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