【R18】きみを抱く理由

さくら蒼

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番外編:お風呂できみを抱く理由

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「豊さん……?」
「撮りたい」

 下から突き上げられながら、頬を指で撫でられる。

「今の君を残しておきたい。ずっと」
「写真……撮らなくても……いつでも見られる……じゃないです、か……っ……」
「……言われてみればそうだな。見たくなったらいつでも君を抱けばいい」
「――っ、んあ」

 豊さんの限界が近い。
 その証拠に私を責める律動が速くなっている。
 呼応するように私の身体も反応した。

「……っ、志保、どけ」
「この、ままで……いいです、からっ……」

 豊さんが目を見開く。
 結婚を約束してはいても、私たちの関係はまだあくまで婚約者に過ぎない。
 身体を重ねてもきちんと避妊していた豊さんにとって、このままでいいというのは衝撃的だったのだろう。

「志保」

 やや、焦った声がする。
 また豊さんの普段見ない顔を見てしまった。

「欲しい、です。豊さんの……全部」

 ねだったのが、決定的になった。

「あっ……あっ……あ、あーっ……」

 注ぎ込みたいという本能のまま、奥を突かれ、広げられ、こじ開けられる。
 強すぎる快感に腰を浮かせて逃げようとするも、豊さんの手が私を固定していた。

「っ……志保、出す」
「わた、しも……もう……っ……」

 ぎゅう、と抱き合って、豊さんをもっと感じようとした。
 一回、二回、三回――と突き立てられ、ちょうど達した瞬間に抱き締めていた身体がびくんと跳ねる。
 押し殺した吐息が詰まって、一気に吐き出された。
 摺り込むように中へ出し入れされ、そのぬるい刺激に声がこぼれる。

「……できたらどうする?」

 もう少し余韻に浸ればいいのに、やっぱり豊さんはせっかちだった。

「ふふふ。名前を考えておきましょうか」
「……明日、市役所に行ってくる」
「えっ、まさか」
「式に合わせたいなら、式の方をさっさとする」
「……もう」

 放っておいたら、本当に婚姻届を取りに行ってしまうだろう。
 この人のよくわからない行動力は侮れない。なにせ、片思いしていた相手を恋人にした上、そのまま婚約者にまでするような人である。

「もうちょっとゆっくり考えませんか?」
「こういうことは普通、君の方から急かすものじゃないのか」
「急かす前に走り抜ける人がいるせいです」
「……俺か」
「そうですね」

 私からキスをひとつ。
 豊さんはくすぐったそうに身をよじって、やっと自身を引き抜いた。

「やっと君が手に入ったのに、のんびりしている理由がない」
「……普通、手に入ったら逆にのんびりするものじゃないですか?」
「だから君はいつもぼーっとしているのか」
「どういう意味ですか、それ」
「うん?」

 身体がぽかぽかするのは、きっとたくさん抱かれたせい。
 頭がぽかぽかするのは、湯船に浸かりすぎたせい。
 心がぽかぽかするのは、こんな時間がとても幸せだから。

「後で結婚式の話を詰めましょうか」
「そうだな」

 こんな妙な形で結婚の話をする恋人が、この世界にどれだけいることだろう。
 でも、だからこそ特別だと心から思える。

(また忙しくなりそう)

 豊さんから贈られるキスを返しながら、頭の中でスケジュールを組み立てていく。
 私たちの結婚は、案外早く行われそうだった。
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