【R18】きみを抱く理由

さくら蒼

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きみを抱く理由

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「こっちも?」
「……っ」

 素直に頷く。
 更に深みへと潜り込んだ指は下着をするりと奪い取った。
 そうして中心を割り開き、ぬめりを確かめるようにしながら沈んでいく。

「っは……あっ……あ……」

 かつて、私の心は身体に裏切られた。
 混乱しながらも抗えなかったあのときにはわからなかったけれど、今なら裏切っていたのが心の方だとわかる。
 ずっと触れてほしかった。
 感じさせて、溶かしてほしかった。
 身体が感じている想いに従えば、こんなにも――気持ちいい。

「あっ……んっ……あ、んぁっ……あっ……」

 中指が秘裂をなぞって中心を責める。

「興奮しすぎじゃないのか。こんなに硬くして」
「ひあ……やぁ、んっ……」
「まだイクなよ」

 ぬちぬちと突起に自分の出した蜜を擦り付けられる。
 絶妙な力加減のせいで、もどかしさと気持ちよさが交互に襲ってきた。
 次から次へと溢れて止まらない。
 指は私が限界に近付くと入口の方へ滑り、その周囲をゆっくりとなぞった。
 また落ち着けば戻ってきて、硬くなった突起を押し潰したり擦ったりしてくる。

「豊さん……そこ、ばっかり……」
「腰を動かしているのは君の方だぞ」
「あぁっ、ん」

 身体を抱き起こされ、指がぐっと私の弱点を押していく。
 豊さんは座った体勢で私を上に乗せると、足を広げさせてぐちゅぐちゅとそこを刺激した。

「ほら、動いてみろ」
「い、じわる……です……っ……」

 しがみついて、でも、もっとしてほしくて言う通りにしてしまう。

「……っ、ん、んっ……」
「ぎこちないな。さっきの方がうまかった」
「そん、なのっ……知りま、せん……っ」

 いつもはもっと黙って私を抱くくせに、今日はやけに口数が多い。
 心なしか嬉しそうに見えるのは想いが通じ合ったからか。

(そんな顔するなんて、ずるい)

 好きすぎて、愛おしすぎて、どうにかなりそうになる。
 同じ想いを感じているのかもしれないと思うと、ますます気持ちが募った。
 ぎゅっとしがみついて自分から求める。
 指だけでは物足りない。

「豊さん……欲し、です……」
「なにを?」
「……っ、なんで今日、そういう感じなんですか……」
「君がかわいいから」

 近距離で囁くなんて本当にずるい人だった。
 いやいやするように首を振ってからキスをする。

「意地悪する人は嫌いです……」
「君の嫌いは信じない。嘘だってわかったからな」
「あれは……」
「結構傷付いた」
「……ごめんなさい」
「その分、好きって言ってくれ。そうしたら許すよ」

 頷くと、腰を掴まれた。
 かちゃり、とベルトを外す音がする。

「好きです。大好きです……」
「そうか」
「私も聞きたい……」
「……困ったな」

 下からゆっくり豊さんが入ってくる。

「君がかわいすぎて辛い」
「……っんぅ」

 私も腰を落として奥まで導く。
 普段と体勢が違うせいで、いつも当たらない場所に豊さんを感じた。
 お腹にぎゅっと力を入れれば、中のそれが反応する。

「俺も好きだ」
「もっと言ってください」
「……恥ずかしいんだが」
「私には言わせようとするくせに……」
「聞きたいから仕方ないだろう」

 ぴったり密着しながら少しずつ腰を揺すられる。
 激しくない分、身体の快感より心の快感を強く感じられた。

「志保」
「それ……名前呼ばれるの、どきどきします……」
「わかる」
「豊さんも……?」
「好きな人に名前を呼ばれたら、誰だってそうなる」
「……うん」
「……敬語ももう使わなくていいんだぞ」
「……慣れない、です」
「恋人同士なんだから慣れてくれ」

 恋人同士――。
 改めて実感すると、泣きたいぐらい嬉しい。

「呼び捨てはまだ難しいので、豊さんって呼ぶのは許してほしい……です」
「俺は呼ばせてもらうよ。その方が俺のものになったと思える」
「……とっくにあなたのものです」
「違うな。俺が、君のものだったんだ」

 どちらからともなく唇を重ね、次第に動きを速めていく。

「ん、んっ……」

 肌を打ち付け合う音が少しずつ大きくなっていった。
 私の漏らす声からも余裕が消えていく。

「あ、う……あっ……んっ……ん、んっ……」
「今の顔も、撮りたい、な」
「や……」
「ずっと残しておきたい」

 豊さんの声にも切ないものが混ざり始めた。
 思い出したようにキスをし、きゅっと指を絡める。
 もう、一方的に相手を縛るような繋ぎ方ではない。
 私たちはどちらもお互いに縛り、縛られ合っている。

「好き……好きです、好き……っ……」
「……っ」
「豊さん、好き――んんむ」

 やや強引に唇を塞がれてそれ以上言えないようにされてしまう。
 繋がった場所から必死さが伝わってきた。

「あ……っ……んっ……や、やっ……あっ……!」

 じゅぷ、と突き上げられるたびに淫らな音がする。
 荒い息を吐きながらのキスが私に与える快感を強めていった。

「ひぁ……あっ……や、もう……」
「一緒にイクか」
「っ……」

 こくんと頷くと肩を押された。
 シーツに倒され、ぐぐっと深く貫かれる。

「や、んっ……ふか……ぁっ……あっ……!」
「っは……っ、く……」

 息も吐けないほど繰り返し奥を責め立てられた。
 こつんと何度も突かれて、シーツではなく豊さんにすがる。

「……イっちゃ……んっ……イっちゃ、う……あぁっ……!」
「――っ、う」

 自分がすさまじい勢いで豊さんを締め上げたのがわかった。
 びくんと跳ねたそれが中で急速に膨れ上がる。
 どっと熱いものを感じた気がして、ひくりと繋がった場所が疼いた。
 長い余韻を経て達した私の中を浅く何度か突くと、豊さんは肩で息をしながら自身を引き抜いた。

「結婚しよう」
「……今、ですか?」
「もう待てない」

(せめて落ち着いてからじゃない……?)

 どこまでも『今』を突き進みたいらしい。
 そんな豊さんが微笑ましくて、また好きになる。

「私でよければ、幸せにしてください」
「式の写真なら任せておけ」
「……新郎なんだから撮影しちゃだめだと思います」

 そう突っ込みはしたけれど、たぶん、この人は本当に当日私のウェディングドレス姿を撮るのだろう。
 自分も主役の一人だとか、そんなことは関係ない。
 三年前からずっと、私の『幸せ』を撮るために生きてきたのだから――。
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