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なにも見えない振りをする
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「っん、ぅ……」
まだ焦らされている。
唇を噛むだけでは足りない気がして、自身の小指を噛んだ。
そうすれば溢れそうなものをすべて押しとどめられると思った。
「声を出さないつもりか」
「…………っ」
「君の啼いたところが好きなのに」
ふぅ、と舌で湿った素肌に息を吹きかけられる。
ぞくぞくした刺激が走り抜け、たったそれだけで息が荒くなった。
「我慢するところもかわいい」
(そんなこと言わないで)
指を噛みながら、更に焦らしてくる舌の動きを意識する。
かわいい、なんて言われて喜ぶ単純な自分が憎い。
「……っ……ふ……っ……ぅ……」
「抑えきれていないな。諦めればいいだろうに」
「い……や、です……」
「どうして今日は素直じゃないんだ?」
(あなたに囚われたくないから)
心の中で返し、軽く睨む。
それが気に入ったのか、微かに笑われた。
「最初の夜の君は従順だった」
(……思い出させないで)
もっとしてほしいとねだってしまった、はしたない初夜。
あんなに気持ちのいいものなんて知らず、自分で自分がわからなくなるぐらい喘いで、狂った。
あの後の夜も多くの快感を教え込まされたけれど、一番乱れたのはきっとそのときだろう。
「抵抗されると燃える」
短い言葉が肌に落ちる。
「……欲しいと言わせたくなるんだが、だめか?」
その熱っぽい乞うような声が大嫌いだった。
だって、なにも抗えなくなる。
「好きに……してください……」
「いつもそれだな」
また笑われてふっと肩の力が抜ける。
油断したその瞬間、今の今まで触れなかった先端を軽く噛まれた。
「んんんっ……!」
ぐ、と小指を噛んで耐えようとした。
けれど、繰り返し吸われ、舌で転がされる。
(いつもより、意地悪だ)
少し強めに噛まれて背中がのけ反った。
普段の溶かすような優しい甘さがない。
下手な抵抗などしたからだろうか。次々と与えられる快感が強くて、支配されそうになる。
「んん、んっ……んっ……!」
強引に足を割り開かれ、手を入れられた。
そこも下着を引き抜かれたけれど、その際、微かな水音がこだまする。
「最初にこっちも脱がしておくべきだった。履いて帰れないだろう、これは」
「んん」
どれだけ感じて濡らしてしまっているのか思い知らせるように、わざと音を立てて足の付け根を擦られる。
ぐじゅぐじゅという淫らな音がした。
動く指が一本ではないことを、中に入ってきた熱の数で理解する。
「ん、っう……あっ……んん、ふっ……ふ、ぅっ……」
「自分の身体がどうなっているのかわかるか? 俺に教えられた通り素直に感じて、シーツを汚すぐらい濡らしているのが」
「っ……んんん、んっ……」
「指摘されると締め付けがきつくなる。……俺以外、誰も知らない情報だな」
優越感をにじませて囁くと、散々私の中をかき回していた指を引き抜いてしまう。
「まだ頑張りたいならおあずけだな」
ひく、と喉と身体が震える。
抵抗すればまた焦らされるだけ。諦めて支配を受け入れれば、いつものようにとびきりの快感を与えられる。
(選択肢なんてない)
悔しいけれど、私の身体はもうこの先に得られる悦びを覚えてしまっていた。
せめてもの抵抗に神宮寺さんを抱き寄せる。
「っ……おい」
それは予想していなかったらしく、少し驚かれた。
「嫌い、です」
声を許し、飲み込み続けたものをあふれさせる。
「大嫌い……」
やや、沈黙が落ちる。
私の必死な思いをどう受け止めたのか、神宮寺さんは無言で自身をあてがってきた。
入口をかすめ、ぬるりと奥へ忍び込む。
すべての熱が私に収まる直前、押し殺した声が耳朶に触れた。
「…………それでも今は、俺のものだ」
「っ、あ――」
その瞬間、奥を満たされる。
誰の手によってこの身体が作り変えられたのか、嫌でも理解せずにはいられなかった。
「あっ……あっ……あんっ……あっ……!」
もう、私の中は彼の形になっている。
そうでなければこんなにもぴったり重なるはずがない。
「やっ……あっ……あ、ぅっ……」
「嫌いな男に抱かれて感じるな」
「んん、んあっ……っく……」
「……っ」
小さく、悪態をついたのが聞こえたような気がした。
きっと軽蔑しているのだろう。嫌いな人に満たされて、こんなにも啼いているのだから。
(私だって感じたくない)
嫌いだと思わなければどうしようもなかった。
身体は私を裏切り続ける。
これは恋人とする行為で、この人に愛されているのだと、不要なシグナルを発しながら。
愛している――なんてありえないのに、身体の反応に心が引きずられる。
これまで彼に勘違いしてきた数多の女性の一人にはなりたくなかった。
「っは……あっ……あ、い……やっ……あっ……ぃ、く……っ」
涙目になりながら目を開き、後悔した。
仕事では見られない、ベッドの上でだけの神宮寺さんと目が合ってしまったせいで。
(今、この人に――抱かれてる)
それを強く意識した瞬間、私はあっけなく限界を迎えてしまった。
まだ焦らされている。
唇を噛むだけでは足りない気がして、自身の小指を噛んだ。
そうすれば溢れそうなものをすべて押しとどめられると思った。
「声を出さないつもりか」
「…………っ」
「君の啼いたところが好きなのに」
ふぅ、と舌で湿った素肌に息を吹きかけられる。
ぞくぞくした刺激が走り抜け、たったそれだけで息が荒くなった。
「我慢するところもかわいい」
(そんなこと言わないで)
指を噛みながら、更に焦らしてくる舌の動きを意識する。
かわいい、なんて言われて喜ぶ単純な自分が憎い。
「……っ……ふ……っ……ぅ……」
「抑えきれていないな。諦めればいいだろうに」
「い……や、です……」
「どうして今日は素直じゃないんだ?」
(あなたに囚われたくないから)
心の中で返し、軽く睨む。
それが気に入ったのか、微かに笑われた。
「最初の夜の君は従順だった」
(……思い出させないで)
もっとしてほしいとねだってしまった、はしたない初夜。
あんなに気持ちのいいものなんて知らず、自分で自分がわからなくなるぐらい喘いで、狂った。
あの後の夜も多くの快感を教え込まされたけれど、一番乱れたのはきっとそのときだろう。
「抵抗されると燃える」
短い言葉が肌に落ちる。
「……欲しいと言わせたくなるんだが、だめか?」
その熱っぽい乞うような声が大嫌いだった。
だって、なにも抗えなくなる。
「好きに……してください……」
「いつもそれだな」
また笑われてふっと肩の力が抜ける。
油断したその瞬間、今の今まで触れなかった先端を軽く噛まれた。
「んんんっ……!」
ぐ、と小指を噛んで耐えようとした。
けれど、繰り返し吸われ、舌で転がされる。
(いつもより、意地悪だ)
少し強めに噛まれて背中がのけ反った。
普段の溶かすような優しい甘さがない。
下手な抵抗などしたからだろうか。次々と与えられる快感が強くて、支配されそうになる。
「んん、んっ……んっ……!」
強引に足を割り開かれ、手を入れられた。
そこも下着を引き抜かれたけれど、その際、微かな水音がこだまする。
「最初にこっちも脱がしておくべきだった。履いて帰れないだろう、これは」
「んん」
どれだけ感じて濡らしてしまっているのか思い知らせるように、わざと音を立てて足の付け根を擦られる。
ぐじゅぐじゅという淫らな音がした。
動く指が一本ではないことを、中に入ってきた熱の数で理解する。
「ん、っう……あっ……んん、ふっ……ふ、ぅっ……」
「自分の身体がどうなっているのかわかるか? 俺に教えられた通り素直に感じて、シーツを汚すぐらい濡らしているのが」
「っ……んんん、んっ……」
「指摘されると締め付けがきつくなる。……俺以外、誰も知らない情報だな」
優越感をにじませて囁くと、散々私の中をかき回していた指を引き抜いてしまう。
「まだ頑張りたいならおあずけだな」
ひく、と喉と身体が震える。
抵抗すればまた焦らされるだけ。諦めて支配を受け入れれば、いつものようにとびきりの快感を与えられる。
(選択肢なんてない)
悔しいけれど、私の身体はもうこの先に得られる悦びを覚えてしまっていた。
せめてもの抵抗に神宮寺さんを抱き寄せる。
「っ……おい」
それは予想していなかったらしく、少し驚かれた。
「嫌い、です」
声を許し、飲み込み続けたものをあふれさせる。
「大嫌い……」
やや、沈黙が落ちる。
私の必死な思いをどう受け止めたのか、神宮寺さんは無言で自身をあてがってきた。
入口をかすめ、ぬるりと奥へ忍び込む。
すべての熱が私に収まる直前、押し殺した声が耳朶に触れた。
「…………それでも今は、俺のものだ」
「っ、あ――」
その瞬間、奥を満たされる。
誰の手によってこの身体が作り変えられたのか、嫌でも理解せずにはいられなかった。
「あっ……あっ……あんっ……あっ……!」
もう、私の中は彼の形になっている。
そうでなければこんなにもぴったり重なるはずがない。
「やっ……あっ……あ、ぅっ……」
「嫌いな男に抱かれて感じるな」
「んん、んあっ……っく……」
「……っ」
小さく、悪態をついたのが聞こえたような気がした。
きっと軽蔑しているのだろう。嫌いな人に満たされて、こんなにも啼いているのだから。
(私だって感じたくない)
嫌いだと思わなければどうしようもなかった。
身体は私を裏切り続ける。
これは恋人とする行為で、この人に愛されているのだと、不要なシグナルを発しながら。
愛している――なんてありえないのに、身体の反応に心が引きずられる。
これまで彼に勘違いしてきた数多の女性の一人にはなりたくなかった。
「っは……あっ……あ、い……やっ……あっ……ぃ、く……っ」
涙目になりながら目を開き、後悔した。
仕事では見られない、ベッドの上でだけの神宮寺さんと目が合ってしまったせいで。
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それを強く意識した瞬間、私はあっけなく限界を迎えてしまった。
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