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『どこまで』するの?
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とさり、と軽い音がして、身体が柔らかいシーツに包み込まれる。
「君が思っているより、ずっと……その、なんだ、興奮しているんだ」
再び私に覆いかぶさりながら、そんな宣言をしてくる。
ぺり、と袋を破るような音がしたのはきっとそういうことなのだろう。
「恋人なら、俺が気を遣わなきゃいけなかったのにな」
「し、してくれました」
思わず、そう反論していた。
「たくさん気を遣ってくれました。キスだって優しくて……。ちゃんと、優しくしてって言った分だけ優しくしてくれました」
「そう思ってくれたならいい」
「どうしてここまでしてくれるんですか?」
私たちは三ヶ月だけの契約の恋人なんでしょう――と続ける。
気を遣っても遣わなくても、終わりの見えているひとときだけの関係。
ちょっとした大人の遊びと割り切るなら、初めての私を慣らす必要なんてない。
神宮寺さんがなにを言うか待つ。
だけど、答えを言う前に私の膝を持ち上げてきた。
そこ、に硬いものが押し当てられる。
ぎょっと身を強張らせた私の視界に映ったのは、諦めたように口角を上げた神宮寺さんの姿。
「どうしてここまでするのか? ……そんなの、ここまでするつもりがなかったから、だな」
「あ――っ」
ゆっくり繋がるかと思いきや、一息に貫かれる。
こんなにも抵抗なく、滑るように奥まで導いてしまうとは思わなかった。
(全然痛くない、どころか)
肌を重ねて、深いところで繋がって。
ひどく満たされている自分がいる。
「……っ、あんまり力を入れないでもらえると助かる」
苦しげな吐息が私の唇をかすめた。
「いろいろと、きつい」
今日は神宮寺さんの知らない顔をいくつも見ている。
その中でも今の真剣な顔が一番、私をぞくぞくさせた。
「……したいように……してください」
そう返し、やっと私の方からキスをする。
初めて自分からしたキスは、微妙に唇を逸れる目も当てられない下手なものだった。
「好きにされたいです」
まだ唇の触れ合う距離でそう告げると、く、と息を呑む気配がした。
「ずるいだろう、そんなの」
「……え?」
「君は俺の扱い方を理解しすぎている」
「――っ、ふ、あっ」
もうとっくに一番奥まで貫かれたと思っていたのに、更に深い場所をえぐられる。
今まで動かずにいてくれたのは、やはり私を気遣ってのことだったのだろう。
好きにしていいと言った通り、神宮寺さんは荒っぽく抽挿を繰り返し始めた。
「あっ……っあ、あっ……!」
「……っは」
「や、奥……っ……くる、し……」
「君、が……締め付けるからだ……っ」
薄々察していた激しい欲望が私の中で荒れ狂う。
こんなにも求められたことは人生で一度もない。
これほどの快感を味わったのも、一度もない。
「んん……っ……!」
初体験はもっと痛くて、なにが起きたかわからないまま終わるものではなかったのか。
イメージしていたものと現実との違いが私を戸惑わせ、思考を奪っていく。
いくら恋人になると言えど、愛があっての関係じゃないのだから身体を許すのはおかしい。
そう言うつもりだったのに、私は神宮寺さんのすべてを受け入れてしまっていた。
神宮寺さんもまた、私からなにもかも奪おうと中をいっぱいにしていく。
肌を打ち付け合う音と、日常では聞くことのない泡立った水音が交互に私の鼓膜を犯していく。
ときおり思い出したように吐息が聞こえて、その艶っぽさにまた身体が反応した。
ここまで私が求めてしまうのは、ひそかに憧れていた人だったからだろうか?
それともただ、快楽に溺れているだけなのだろうか?
わからないまま求めて、足も腕も絡める。
他人の素肌がこうまで温かいものだとも知らず、少しの隙間もないようぎゅっと抱き締めた。
「……っ、ん、あ」
なにか、くる。
「や……抜い、て……変……だか、ら……ぁっ……」
「早い」
含み笑いを漏らしたかと思うと、神宮寺さんは更に私の奥を突く。
「や、やだ……やっ……!」
「いいんだ、それで」
――君の好きなようにイってくれ。
そう言ってすぐ、啼く私の唇を塞いでしまう。
「んん、ん、ん……っ」
上も下も塞がれ、受け入れるだけ。
焦る私を限界まで追いやり、そして――。
「ん……んんーっ……ん……んん、んっ……!」
一気に視界が白く弾けた。
びくん、と身体が跳ね、一拍置いて脱力する。
「っふ……ぁ……」
どっと疲れが押し寄せてきた。
全身を倦怠感が包み込んでいくけれど、神宮寺さんは動くのをやめない。
「勝手に終わらせるな」
は、と熱い吐息がこぼれる。
「……出しても?」
許可を取ると言うよりも、乞うように聞こえた。
また神宮寺さんの知らない一面を見た気がして、反射的に頷く。
刹那、ぐっと私の中に収まったそれが大きさを増した気がした。
「……っ、く……はっ……」
ひどく切ない声がして、きゅう、と私の身体が反応する。
「神宮寺さん」
思いがけず甘えた声が出た。
向こうから再度唇を重ねられるその瞬間。
「――――志保」
「君が思っているより、ずっと……その、なんだ、興奮しているんだ」
再び私に覆いかぶさりながら、そんな宣言をしてくる。
ぺり、と袋を破るような音がしたのはきっとそういうことなのだろう。
「恋人なら、俺が気を遣わなきゃいけなかったのにな」
「し、してくれました」
思わず、そう反論していた。
「たくさん気を遣ってくれました。キスだって優しくて……。ちゃんと、優しくしてって言った分だけ優しくしてくれました」
「そう思ってくれたならいい」
「どうしてここまでしてくれるんですか?」
私たちは三ヶ月だけの契約の恋人なんでしょう――と続ける。
気を遣っても遣わなくても、終わりの見えているひとときだけの関係。
ちょっとした大人の遊びと割り切るなら、初めての私を慣らす必要なんてない。
神宮寺さんがなにを言うか待つ。
だけど、答えを言う前に私の膝を持ち上げてきた。
そこ、に硬いものが押し当てられる。
ぎょっと身を強張らせた私の視界に映ったのは、諦めたように口角を上げた神宮寺さんの姿。
「どうしてここまでするのか? ……そんなの、ここまでするつもりがなかったから、だな」
「あ――っ」
ゆっくり繋がるかと思いきや、一息に貫かれる。
こんなにも抵抗なく、滑るように奥まで導いてしまうとは思わなかった。
(全然痛くない、どころか)
肌を重ねて、深いところで繋がって。
ひどく満たされている自分がいる。
「……っ、あんまり力を入れないでもらえると助かる」
苦しげな吐息が私の唇をかすめた。
「いろいろと、きつい」
今日は神宮寺さんの知らない顔をいくつも見ている。
その中でも今の真剣な顔が一番、私をぞくぞくさせた。
「……したいように……してください」
そう返し、やっと私の方からキスをする。
初めて自分からしたキスは、微妙に唇を逸れる目も当てられない下手なものだった。
「好きにされたいです」
まだ唇の触れ合う距離でそう告げると、く、と息を呑む気配がした。
「ずるいだろう、そんなの」
「……え?」
「君は俺の扱い方を理解しすぎている」
「――っ、ふ、あっ」
もうとっくに一番奥まで貫かれたと思っていたのに、更に深い場所をえぐられる。
今まで動かずにいてくれたのは、やはり私を気遣ってのことだったのだろう。
好きにしていいと言った通り、神宮寺さんは荒っぽく抽挿を繰り返し始めた。
「あっ……っあ、あっ……!」
「……っは」
「や、奥……っ……くる、し……」
「君、が……締め付けるからだ……っ」
薄々察していた激しい欲望が私の中で荒れ狂う。
こんなにも求められたことは人生で一度もない。
これほどの快感を味わったのも、一度もない。
「んん……っ……!」
初体験はもっと痛くて、なにが起きたかわからないまま終わるものではなかったのか。
イメージしていたものと現実との違いが私を戸惑わせ、思考を奪っていく。
いくら恋人になると言えど、愛があっての関係じゃないのだから身体を許すのはおかしい。
そう言うつもりだったのに、私は神宮寺さんのすべてを受け入れてしまっていた。
神宮寺さんもまた、私からなにもかも奪おうと中をいっぱいにしていく。
肌を打ち付け合う音と、日常では聞くことのない泡立った水音が交互に私の鼓膜を犯していく。
ときおり思い出したように吐息が聞こえて、その艶っぽさにまた身体が反応した。
ここまで私が求めてしまうのは、ひそかに憧れていた人だったからだろうか?
それともただ、快楽に溺れているだけなのだろうか?
わからないまま求めて、足も腕も絡める。
他人の素肌がこうまで温かいものだとも知らず、少しの隙間もないようぎゅっと抱き締めた。
「……っ、ん、あ」
なにか、くる。
「や……抜い、て……変……だか、ら……ぁっ……」
「早い」
含み笑いを漏らしたかと思うと、神宮寺さんは更に私の奥を突く。
「や、やだ……やっ……!」
「いいんだ、それで」
――君の好きなようにイってくれ。
そう言ってすぐ、啼く私の唇を塞いでしまう。
「んん、ん、ん……っ」
上も下も塞がれ、受け入れるだけ。
焦る私を限界まで追いやり、そして――。
「ん……んんーっ……ん……んん、んっ……!」
一気に視界が白く弾けた。
びくん、と身体が跳ね、一拍置いて脱力する。
「っふ……ぁ……」
どっと疲れが押し寄せてきた。
全身を倦怠感が包み込んでいくけれど、神宮寺さんは動くのをやめない。
「勝手に終わらせるな」
は、と熱い吐息がこぼれる。
「……出しても?」
許可を取ると言うよりも、乞うように聞こえた。
また神宮寺さんの知らない一面を見た気がして、反射的に頷く。
刹那、ぐっと私の中に収まったそれが大きさを増した気がした。
「……っ、く……はっ……」
ひどく切ない声がして、きゅう、と私の身体が反応する。
「神宮寺さん」
思いがけず甘えた声が出た。
向こうから再度唇を重ねられるその瞬間。
「――――志保」
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