【R18】きみを抱く理由

さくら蒼

文字の大きさ
上 下
11 / 81
『どこまで』するの?

しおりを挟む
 とさり、と軽い音がして、身体が柔らかいシーツに包み込まれる。

「君が思っているより、ずっと……その、なんだ、興奮しているんだ」

 再び私に覆いかぶさりながら、そんな宣言をしてくる。
 ぺり、と袋を破るような音がしたのはきっとそういうことなのだろう。

「恋人なら、俺が気を遣わなきゃいけなかったのにな」
「し、してくれました」

 思わず、そう反論していた。

「たくさん気を遣ってくれました。キスだって優しくて……。ちゃんと、優しくしてって言った分だけ優しくしてくれました」
「そう思ってくれたならいい」
「どうしてここまでしてくれるんですか?」

 私たちは三ヶ月だけの契約の恋人なんでしょう――と続ける。
 気を遣っても遣わなくても、終わりの見えているひとときだけの関係。
 ちょっとした大人の遊びと割り切るなら、初めての私を慣らす必要なんてない。
 神宮寺さんがなにを言うか待つ。
 だけど、答えを言う前に私の膝を持ち上げてきた。
 そこ、に硬いものが押し当てられる。
 ぎょっと身を強張らせた私の視界に映ったのは、諦めたように口角を上げた神宮寺さんの姿。

「どうしてここまでするのか? ……そんなの、ここまでするつもりがなかったから、だな」
「あ――っ」

 ゆっくり繋がるかと思いきや、一息に貫かれる。
 こんなにも抵抗なく、滑るように奥まで導いてしまうとは思わなかった。

(全然痛くない、どころか)

 肌を重ねて、深いところで繋がって。
 ひどく満たされている自分がいる。

「……っ、あんまり力を入れないでもらえると助かる」

 苦しげな吐息が私の唇をかすめた。

「いろいろと、きつい」

 今日は神宮寺さんの知らない顔をいくつも見ている。
 その中でも今の真剣な顔が一番、私をぞくぞくさせた。

「……したいように……してください」

 そう返し、やっと私の方からキスをする。
 初めて自分からしたキスは、微妙に唇を逸れる目も当てられない下手なものだった。

「好きにされたいです」

 まだ唇の触れ合う距離でそう告げると、く、と息を呑む気配がした。

「ずるいだろう、そんなの」
「……え?」
「君は俺の扱い方を理解しすぎている」
「――っ、ふ、あっ」

 もうとっくに一番奥まで貫かれたと思っていたのに、更に深い場所をえぐられる。
 今まで動かずにいてくれたのは、やはり私を気遣ってのことだったのだろう。
 好きにしていいと言った通り、神宮寺さんは荒っぽく抽挿を繰り返し始めた。

「あっ……っあ、あっ……!」
「……っは」
「や、奥……っ……くる、し……」
「君、が……締め付けるからだ……っ」

 薄々察していた激しい欲望が私の中で荒れ狂う。
 こんなにも求められたことは人生で一度もない。
 これほどの快感を味わったのも、一度もない。

「んん……っ……!」

 初体験はもっと痛くて、なにが起きたかわからないまま終わるものではなかったのか。
 イメージしていたものと現実との違いが私を戸惑わせ、思考を奪っていく。
 いくら恋人になると言えど、愛があっての関係じゃないのだから身体を許すのはおかしい。
 そう言うつもりだったのに、私は神宮寺さんのすべてを受け入れてしまっていた。
 神宮寺さんもまた、私からなにもかも奪おうと中をいっぱいにしていく。
 肌を打ち付け合う音と、日常では聞くことのない泡立った水音が交互に私の鼓膜を犯していく。
 ときおり思い出したように吐息が聞こえて、その艶っぽさにまた身体が反応した。
 ここまで私が求めてしまうのは、ひそかに憧れていた人だったからだろうか?
 それともただ、快楽に溺れているだけなのだろうか?
 わからないまま求めて、足も腕も絡める。
 他人の素肌がこうまで温かいものだとも知らず、少しの隙間もないようぎゅっと抱き締めた。

「……っ、ん、あ」

 なにか、くる。

「や……抜い、て……変……だか、ら……ぁっ……」
「早い」

 含み笑いを漏らしたかと思うと、神宮寺さんは更に私の奥を突く。

「や、やだ……やっ……!」
「いいんだ、それで」

 ――君の好きなようにイってくれ。
 そう言ってすぐ、啼く私の唇を塞いでしまう。

「んん、ん、ん……っ」

 上も下も塞がれ、受け入れるだけ。
 焦る私を限界まで追いやり、そして――。

「ん……んんーっ……ん……んん、んっ……!」

 一気に視界が白く弾けた。
 びくん、と身体が跳ね、一拍置いて脱力する。

「っふ……ぁ……」

 どっと疲れが押し寄せてきた。
 全身を倦怠感が包み込んでいくけれど、神宮寺さんは動くのをやめない。

「勝手に終わらせるな」

 は、と熱い吐息がこぼれる。

「……出しても?」

 許可を取ると言うよりも、乞うように聞こえた。
 また神宮寺さんの知らない一面を見た気がして、反射的に頷く。
 刹那、ぐっと私の中に収まったそれが大きさを増した気がした。

「……っ、く……はっ……」

 ひどく切ない声がして、きゅう、と私の身体が反応する。

「神宮寺さん」

 思いがけず甘えた声が出た。
 向こうから再度唇を重ねられるその瞬間。

「――――志保」
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜

雪井しい
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。 【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】 ☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆ ※ベリーズカフェでも掲載中 ※推敲、校正前のものです。ご注意下さい

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~

菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。 だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。 車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。 あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

あまやかしても、いいですか?

藤川巴/智江千佳子
恋愛
結婚相手は会社の王子様。 「俺ね、ダメなんだ」 「あーもう、キスしたい」 「それこそだめです」  甘々(しすぎる)男子×冷静(に見えるだけ)女子の 契約結婚生活とはこれいかに。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...