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『どこまで』するの?
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「や、らっ……あっ……」
頭の中がぐちゃぐちゃになっていた。
なにをすれば私が感じてしまうのか、この人は全部知っている。
そんな風に思えてしまうほど、繰り返し気持ちいい場所ばかり責められている。
自分の意識さえ持って行かれそうなのが怖くて、必死にすがった。
舌で胸先への愛撫を続けていた神宮寺さんが、軽く顔を上げる。
またなにか言われてしまうのかと思ったとき、空いていた片方の手で髪を撫でられる。
「怖がらなくていい」
囁きが、落ちる。
「嫌がることはしないから」
嘘つき――と反射的に思ってしまったけれど、今まで私が言った「嫌」という言葉はどこまでが真実だと言えるのか、自分でもわからない。
髪を撫でられながら、熱をはらんだ頬へとキスされる。
怖がっている心を包み込むように。安心させるように。
(慣れてるんだな……)
ほんの一瞬で恐れもなにもかも消えてしまったのを認めたくなくて、私がほだされたのではなく、神宮寺さんが慣れているからと考えることにしてしまった。
そうでなければ、あまりにも自分がだめすぎる。
こんなにも身体が心を裏切るなんて思いもしなかった。
まともに話したのは今日の昼間が最初。
それまでは離れた場所で見るだけだった人に、ここまで自分を許してしまうなんて。
(これは契約なのに)
優しくしてくれるのも、甘い刺激をくれるのも、全部恋人を演じるため。
そう思わないと、もう自分を信じられない。
「……で、続けるか?」
はっと意識が現実に戻ってくる。
私が落ち着くまで愛撫をやめてくれていたのだと、今更気付いた。
「俺は続けたい。……君が、欲しい」
その言葉に嘘がないことを、先ほど太ももに触れていた熱が教えてくれている。
キスをしただけで求めてしまったのは私だけじゃない。
「……や、優しくしてください……」
なんて間の抜けた言葉なんだろうと自分でも思った。
さっきだって同じことを言ったのに、他にどう言うのが正しいかわからなくて。
でも、神宮寺さんは笑ってくれた。
「俺が優しくしなかったときなんてあるか?」
「……あっ、ぅ」
――つぷ、と指が私の中に沈み込む。
「最初からずっと優しくしていたつもりだった」
言いながら、更に深く。
「もしそう感じていなかったんだとしたら、悪かったな」
初めて異物が侵入してくる。
怖いのに、やはり身体は心を裏切った。
(な、か……入って……)
ゆるゆると私の中を広げながら、指が奥へと侵入する。
たった一本で既に苦しい。
嫌な異物感が消えない。
「…………そこまで余裕をなくしたつもりはないんだが」
かすれた声が聞こえて、きゅっと指を締め付けてしまう。
自分がどんな顔で私を感じさせていたのか、気付いていないのだろうか?
「……ん」
粘ついた水音がくちくちと部屋に響く。
微かな痛みに身体は強張ったけれど、思っていたほどのものではない。
それとも、この人が気遣ってくれているからなのか。
恐らくは後者だろうと考えて、急に違和感が快感へと変わる。
「ぁ……っ……」
漏れ出た声に神宮寺さんも気付いてしまった。
「早いな。もう少し時間がかかるんだと思っていた」
初めてならもっとゆっくり慣れるべきだったのかもしれない。
どうして私の身体はこんなにも心を裏切るのだろう。
自分がここまで淫らだなんて、想像できるはずがない。
「あっ……や、指……」
「もう一本増やすぞ」
「あ……っ」
宣言通りに指を増やされる。
きつくて、痛い。
けれど、それも中でバラバラに動かされるまでの話。
「んっ……あ……あっ……あ、んっ……」
鈍かった身体はあっさりその刺激を受け入れた。
ずん、と沈むような快感がじりじりお腹の奥に広がっていく。
そうと気付いた後は早かった。
熱が頭の上から足の先まで走り抜け、そこに異物を挿入されると気持ちいいのだと触れまわる。
すっかり快楽に溺れて溶かされてしまう。
しかし、本能は物足りなさを訴えていた。
「……っ」
「……どうかしたのか?」
ずるいと言いたくなるほど、私の反応に注力していた神宮寺さんが尋ねてくる。
また私が怯えているとでも思ったのか、甘い刺激を繰り返していた指が引き抜かれた。
その、抜ける一瞬の動きにも電流が走る。
「もっと……奥……してほしく、て……」
指では届かない場所が苦しいと訴えている。
そのまま口に出すと、なんとも言えない顔をされた。
「……一応聞いておくが、本当に処女なんだよな」
「やっぱりおかしいでしょうか、こんなの……」
「おかしいとまでは言わないが……」
「私にもわからないんです」
羞恥なのか情けなさなのか、顔を覆って見られないようにする。
「初めてだし、神宮寺さんともほとんど話したことがないのに。キスも、触られるのも、全部気持ちよくて……。もっとしてほしいって思うんです。きっと変なんです……」
「……あー。……悪かった」
衣擦れが聞こえて、少しだけ手をどかしてみる。
神宮寺さんがシャツを脱ぎ捨てていた。
「君が感じすぎているのを疑うんじゃなく、喜ぶべきだったな」
「……あっ」
背中に腕を回され、抱き締められる。
そのまま力強く抱き上げられた。
「あ、あの」
「そもそも、ソファでするのが間違いだ」
「危ないです、下ろして――」
「ベッドに着いたら下ろしてやる」
その言葉通り、神宮寺さんは私をソファからベッドへと運んだ。
頭の中がぐちゃぐちゃになっていた。
なにをすれば私が感じてしまうのか、この人は全部知っている。
そんな風に思えてしまうほど、繰り返し気持ちいい場所ばかり責められている。
自分の意識さえ持って行かれそうなのが怖くて、必死にすがった。
舌で胸先への愛撫を続けていた神宮寺さんが、軽く顔を上げる。
またなにか言われてしまうのかと思ったとき、空いていた片方の手で髪を撫でられる。
「怖がらなくていい」
囁きが、落ちる。
「嫌がることはしないから」
嘘つき――と反射的に思ってしまったけれど、今まで私が言った「嫌」という言葉はどこまでが真実だと言えるのか、自分でもわからない。
髪を撫でられながら、熱をはらんだ頬へとキスされる。
怖がっている心を包み込むように。安心させるように。
(慣れてるんだな……)
ほんの一瞬で恐れもなにもかも消えてしまったのを認めたくなくて、私がほだされたのではなく、神宮寺さんが慣れているからと考えることにしてしまった。
そうでなければ、あまりにも自分がだめすぎる。
こんなにも身体が心を裏切るなんて思いもしなかった。
まともに話したのは今日の昼間が最初。
それまでは離れた場所で見るだけだった人に、ここまで自分を許してしまうなんて。
(これは契約なのに)
優しくしてくれるのも、甘い刺激をくれるのも、全部恋人を演じるため。
そう思わないと、もう自分を信じられない。
「……で、続けるか?」
はっと意識が現実に戻ってくる。
私が落ち着くまで愛撫をやめてくれていたのだと、今更気付いた。
「俺は続けたい。……君が、欲しい」
その言葉に嘘がないことを、先ほど太ももに触れていた熱が教えてくれている。
キスをしただけで求めてしまったのは私だけじゃない。
「……や、優しくしてください……」
なんて間の抜けた言葉なんだろうと自分でも思った。
さっきだって同じことを言ったのに、他にどう言うのが正しいかわからなくて。
でも、神宮寺さんは笑ってくれた。
「俺が優しくしなかったときなんてあるか?」
「……あっ、ぅ」
――つぷ、と指が私の中に沈み込む。
「最初からずっと優しくしていたつもりだった」
言いながら、更に深く。
「もしそう感じていなかったんだとしたら、悪かったな」
初めて異物が侵入してくる。
怖いのに、やはり身体は心を裏切った。
(な、か……入って……)
ゆるゆると私の中を広げながら、指が奥へと侵入する。
たった一本で既に苦しい。
嫌な異物感が消えない。
「…………そこまで余裕をなくしたつもりはないんだが」
かすれた声が聞こえて、きゅっと指を締め付けてしまう。
自分がどんな顔で私を感じさせていたのか、気付いていないのだろうか?
「……ん」
粘ついた水音がくちくちと部屋に響く。
微かな痛みに身体は強張ったけれど、思っていたほどのものではない。
それとも、この人が気遣ってくれているからなのか。
恐らくは後者だろうと考えて、急に違和感が快感へと変わる。
「ぁ……っ……」
漏れ出た声に神宮寺さんも気付いてしまった。
「早いな。もう少し時間がかかるんだと思っていた」
初めてならもっとゆっくり慣れるべきだったのかもしれない。
どうして私の身体はこんなにも心を裏切るのだろう。
自分がここまで淫らだなんて、想像できるはずがない。
「あっ……や、指……」
「もう一本増やすぞ」
「あ……っ」
宣言通りに指を増やされる。
きつくて、痛い。
けれど、それも中でバラバラに動かされるまでの話。
「んっ……あ……あっ……あ、んっ……」
鈍かった身体はあっさりその刺激を受け入れた。
ずん、と沈むような快感がじりじりお腹の奥に広がっていく。
そうと気付いた後は早かった。
熱が頭の上から足の先まで走り抜け、そこに異物を挿入されると気持ちいいのだと触れまわる。
すっかり快楽に溺れて溶かされてしまう。
しかし、本能は物足りなさを訴えていた。
「……っ」
「……どうかしたのか?」
ずるいと言いたくなるほど、私の反応に注力していた神宮寺さんが尋ねてくる。
また私が怯えているとでも思ったのか、甘い刺激を繰り返していた指が引き抜かれた。
その、抜ける一瞬の動きにも電流が走る。
「もっと……奥……してほしく、て……」
指では届かない場所が苦しいと訴えている。
そのまま口に出すと、なんとも言えない顔をされた。
「……一応聞いておくが、本当に処女なんだよな」
「やっぱりおかしいでしょうか、こんなの……」
「おかしいとまでは言わないが……」
「私にもわからないんです」
羞恥なのか情けなさなのか、顔を覆って見られないようにする。
「初めてだし、神宮寺さんともほとんど話したことがないのに。キスも、触られるのも、全部気持ちよくて……。もっとしてほしいって思うんです。きっと変なんです……」
「……あー。……悪かった」
衣擦れが聞こえて、少しだけ手をどかしてみる。
神宮寺さんがシャツを脱ぎ捨てていた。
「君が感じすぎているのを疑うんじゃなく、喜ぶべきだったな」
「……あっ」
背中に腕を回され、抱き締められる。
そのまま力強く抱き上げられた。
「あ、あの」
「そもそも、ソファでするのが間違いだ」
「危ないです、下ろして――」
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