【R18】きみを抱く理由

さくら蒼

文字の大きさ
上 下
10 / 81
『どこまで』するの?

しおりを挟む
「や、らっ……あっ……」

 頭の中がぐちゃぐちゃになっていた。
 なにをすれば私が感じてしまうのか、この人は全部知っている。
 そんな風に思えてしまうほど、繰り返し気持ちいい場所ばかり責められている。
 自分の意識さえ持って行かれそうなのが怖くて、必死にすがった。
 舌で胸先への愛撫を続けていた神宮寺さんが、軽く顔を上げる。
 またなにか言われてしまうのかと思ったとき、空いていた片方の手で髪を撫でられる。

「怖がらなくていい」

 囁きが、落ちる。

「嫌がることはしないから」

 嘘つき――と反射的に思ってしまったけれど、今まで私が言った「嫌」という言葉はどこまでが真実だと言えるのか、自分でもわからない。
 髪を撫でられながら、熱をはらんだ頬へとキスされる。
 怖がっている心を包み込むように。安心させるように。

(慣れてるんだな……)

 ほんの一瞬で恐れもなにもかも消えてしまったのを認めたくなくて、私がほだされたのではなく、神宮寺さんが慣れているからと考えることにしてしまった。
 そうでなければ、あまりにも自分がだめすぎる。
 こんなにも身体が心を裏切るなんて思いもしなかった。
 まともに話したのは今日の昼間が最初。
 それまでは離れた場所で見るだけだった人に、ここまで自分を許してしまうなんて。

(これは契約なのに)

 優しくしてくれるのも、甘い刺激をくれるのも、全部恋人を演じるため。
 そう思わないと、もう自分を信じられない。

「……で、続けるか?」

 はっと意識が現実に戻ってくる。
 私が落ち着くまで愛撫をやめてくれていたのだと、今更気付いた。

「俺は続けたい。……君が、欲しい」

 その言葉に嘘がないことを、先ほど太ももに触れていた熱が教えてくれている。
 キスをしただけで求めてしまったのは私だけじゃない。

「……や、優しくしてください……」

 なんて間の抜けた言葉なんだろうと自分でも思った。
 さっきだって同じことを言ったのに、他にどう言うのが正しいかわからなくて。
 でも、神宮寺さんは笑ってくれた。

「俺が優しくしなかったときなんてあるか?」
「……あっ、ぅ」

 ――つぷ、と指が私の中に沈み込む。

「最初からずっと優しくしていたつもりだった」

 言いながら、更に深く。

「もしそう感じていなかったんだとしたら、悪かったな」

 初めて異物が侵入してくる。
 怖いのに、やはり身体は心を裏切った。

(な、か……入って……)

 ゆるゆると私の中を広げながら、指が奥へと侵入する。
 たった一本で既に苦しい。
 嫌な異物感が消えない。

「…………そこまで余裕をなくしたつもりはないんだが」

 かすれた声が聞こえて、きゅっと指を締め付けてしまう。
 自分がどんな顔で私を感じさせていたのか、気付いていないのだろうか?

「……ん」

 粘ついた水音がくちくちと部屋に響く。
 微かな痛みに身体は強張ったけれど、思っていたほどのものではない。
 それとも、この人が気遣ってくれているからなのか。
 恐らくは後者だろうと考えて、急に違和感が快感へと変わる。

「ぁ……っ……」

 漏れ出た声に神宮寺さんも気付いてしまった。

「早いな。もう少し時間がかかるんだと思っていた」

 初めてならもっとゆっくり慣れるべきだったのかもしれない。
 どうして私の身体はこんなにも心を裏切るのだろう。
 自分がここまで淫らだなんて、想像できるはずがない。

「あっ……や、指……」
「もう一本増やすぞ」
「あ……っ」

 宣言通りに指を増やされる。
 きつくて、痛い。
 けれど、それも中でバラバラに動かされるまでの話。

「んっ……あ……あっ……あ、んっ……」

 鈍かった身体はあっさりその刺激を受け入れた。
 ずん、と沈むような快感がじりじりお腹の奥に広がっていく。
 そうと気付いた後は早かった。
 熱が頭の上から足の先まで走り抜け、そこに異物を挿入されると気持ちいいのだと触れまわる。
 すっかり快楽に溺れて溶かされてしまう。
 しかし、本能は物足りなさを訴えていた。

「……っ」
「……どうかしたのか?」

 ずるいと言いたくなるほど、私の反応に注力していた神宮寺さんが尋ねてくる。
 また私が怯えているとでも思ったのか、甘い刺激を繰り返していた指が引き抜かれた。
 その、抜ける一瞬の動きにも電流が走る。

「もっと……奥……してほしく、て……」

 指では届かない場所が苦しいと訴えている。
 そのまま口に出すと、なんとも言えない顔をされた。

「……一応聞いておくが、本当に処女なんだよな」
「やっぱりおかしいでしょうか、こんなの……」
「おかしいとまでは言わないが……」
「私にもわからないんです」

 羞恥なのか情けなさなのか、顔を覆って見られないようにする。

「初めてだし、神宮寺さんともほとんど話したことがないのに。キスも、触られるのも、全部気持ちよくて……。もっとしてほしいって思うんです。きっと変なんです……」
「……あー。……悪かった」

 衣擦れが聞こえて、少しだけ手をどかしてみる。
 神宮寺さんがシャツを脱ぎ捨てていた。

「君が感じすぎているのを疑うんじゃなく、喜ぶべきだったな」
「……あっ」

 背中に腕を回され、抱き締められる。
 そのまま力強く抱き上げられた。

「あ、あの」
「そもそも、ソファでするのが間違いだ」
「危ないです、下ろして――」
「ベッドに着いたら下ろしてやる」

 その言葉通り、神宮寺さんは私をソファからベッドへと運んだ。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

粗暴で優しい幼馴染彼氏はおっとり系彼女を好きすぎる

春音優月
恋愛
おっとりふわふわ大学生の一色のどかは、中学生の時から付き合っている幼馴染彼氏の黒瀬逸希と同棲中。態度や口は荒っぽい逸希だけど、のどかへの愛は大きすぎるほど。 幸せいっぱいなはずなのに、逸希から一度も「好き」と言われてないことに気がついてしまって……? 幼馴染大学生の糖度高めなショートストーリー。 2024.03.06 イラスト:雪緒さま

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~

ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。 2021/3/10 しおりを挟んでくださっている皆様へ。 こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。 しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗) 楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。 申しわけありません。 新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。 修正していないのと、若かりし頃の作品のため、 甘めに見てくださいm(__)m

ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~

菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。 だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。 車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。 あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。

処理中です...