【R18】きみを抱く理由

さくら蒼

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『どこまで』するの?

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「くっ……すぐった……い……です……」
「今は、だろ」
「……っひ、う」

 この人の手はこんなに熱かっただろうか?
 潜り込んだ手は私の背中へ回ると、ぱちりと聞き慣れた音を発した。
 ややあってから、下着のホックをはずされたのだと気付く。
 道理で胸元の締め付けが緩くなったわけだ。
 だからといって、別に息がしやすくなったわけではないのだけれど。
 それどころか、より一層苦しくなったような気がする。

(どうしてそんな目で見つめるの?)

 これは三ヶ月だけの契約。恋人の振りをして、お互いに目的を果たすための。

「……ぃ、あっ……」

 かり、と爪の先が胸の先端をかすめた瞬間、喉の奥から細い声が漏れる。
 私はいつからこんな甘えた声を出すようになったのだろう?
 わからないけれど、腹部が熱く疼く。

「硬くなってる」

 笑いを含んだ低い声が耳朶に触れる。
 すがるように抱き着いているせいで、顔が見えなくなった。
 安心するような、逆に怖いような、そんな気持ちで混乱する。

「や……だ、だめ……」
「だめじゃない。……認めろ」
「……っあ、ん」

 認めろ――と言った通り、思い知らせるようにそこばかり指で弄られる。
 硬くなった芯を更に育てようとでもいうのか、指の腹でぐりぐり押し潰された。
 その刺激に反応して腰が揺れる。
 もう自分がどんな声を出しているのかなんて考えていられない。

「あっ……あっ……ぅ、あっ……あ」

 繰り返し、触れられる度に声が濡れる。

「あん、まり……そこばっかり……」
「初めてなら、身体に覚えさせる方がいいだろう?」
「なに……を……?」
「感じ方を」

 ずくん、とお腹の奥に少し意地悪な声が響く。
 ――今、私はこの人の手で快感を教え込まされている。
 それを強く意識して。

「や……んっ……あぅ……」
「いい顔。……残しておきたくなる」

 神宮寺さんが私の服をまくりあげる。
 ふるり、と外気にすべてが晒された。
 その恥ずかしさに、ますます激しい熱が私を襲った。

「……撮っても?」
「え……?」
「恋人。テーマだから」

 端的な言葉の意味を理解するのに数秒。
 この人はどうやら人に説明するという能力に欠けているらしい。
 ……それとも、今だけそうなのか。

「写真のこと……言ってるんじゃないですよね……?」
「俺が撮ると言ったら他にないだろ」
「ぜ、絶対だめです。こんなところ……!」
「……だったら、いいって言わせてやる」
「ん、ぁっ!」

 膝裏に手を添えられ、持ち上げられた。
 両足を広げられた状態で見下ろされるという、想像するだけでも恥ずかしい格好に眩暈さえ感じる。

「や、やめ――」

 啼いても無駄だった。
 そんな恥ずかしい格好をさせられたまま、神宮寺さんは私の胸へと顔を寄せる。

(そっ……ち……)

 硬くなった場所を舐められてびくりと震える。
 それに反応しながらも、私の身体は戸惑いを覚えていた。

(てっきり……私……)

 お腹の奥がじんじんする。
 きっとその熱を冷ましてくれるのだと思ったのに、触れてほしかった場所への刺激が来ない。
 そんな風に思ってしまう自分が恐ろしかった。
 この歳になっても仕事ばかりで経験がなかった自分。
 なのに、身体はなにをされたいのか理解している。

「じんぐう、じ……さん……そこ、じゃなく、て……」
「……ん?」
「こっち……」

 なにを言っているんだろう――なんて振り返るだけの余裕があれば、きっともっと違う言葉で求められた。
 だけど、できない。

「こっちがいいです……」

 すがりながら、神宮寺さんの手を緩く掴んで下腹部に導く。
 触れてほしいのはその奥。
 自分から求めるなんて恥ずかしい。淫らで、軽蔑されるかもしれない。
 そう思いながら、この人の体温を望んでしまう。

「触られる、と、きもち、よく、て」

 途切れ途切れに訴える。
 いつもはこんな風にならないのだ、と。
 ――なぜか今だけおかしくなってしまっているのだ、と伝えるように。
 必死な私をどう思ったのか、神宮寺さんが苦笑いする。

「……いやらしい」
「っ……」
「……やっと『君』の顔を見られた気がする」

 え、と言う前に背中がのけ反った。

「っ……あ、ああっ……!」

 悲鳴に似た声がこぼれたのは、神宮寺さんのせい。
 私が望んだ通りの場所に指が擦れて、張り詰めた芯に溢れた蜜を塗り付けてくる。

「や、やっ……あっ……あんっ……んっ……」

 ぎゅうう、ときつく抱き締めて耐えようとした。
 でも、すぐ高みへと追いやられる。

「まだキスしかしてないのにな」

 再び苦笑されて、胸元へのキスがひとつ。
 下を触られながら胸の先端を唇で挟まれると、さっきまでとは比べ物にならない波に襲われる。

(キスしかしてないなんて、嘘)

 それ以上のとびきり恥ずかしくて気持ちのいいことをされている。
 だってさっき、この人ははっきり言ったのだ。
 私の身体に感じ方を覚えさせる、と。
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