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『どこまで』するの?
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私の答えをどんな気持ちで待っているのか、その瞳からは読み取れない。
そうだと言えば失望されるのだろうか。これまでの話から考えるに、きっとそうなのだろうとは思うが。
「……するかもしれません。こういうことには慣れていないので」
「なるほど、耐性がないから期待しかねないと」
「……そういうことになります」
「あの男が相手だとしても?」
「あの男?」
「高橋」
「それはありえません」
即答すると、くくくと喉奥で笑うのが聞こえた。
「少なくとも、あいつよりは好感度が高いわけだ」
(……喜んでる? それとも、ただ面白かっただけ?)
「よかった」
神宮寺さんの指が髪を離して更に下へ流れていく。
そうして、置き場に困っていた私の手をそっと握った。
「嫌われているよりはずっといい」
待って、と止める前に指を絡められる。
それこそ、本当の恋人同士がするように。
「俺も期待しそうになるな、これは」
さりげなく、本当に驚くほど自然な仕草で手を引き寄せられる。
先ほどは髪に落ちたキスが、今度は指の先に落ちた。
「っ……」
ぴり、と走ったその電流に衝撃を受ける。
今すぐ逃げ出したくてたまらない。そうしなければ、なにかとてもいけないことが起きる予感がする。
「さ、三ヶ月だけの契約関係です、よね。私は高橋さんから逃げるための、神宮寺さんはコンクールのための」
「それがなにか?」
「だったら、あの――」
「たった三ヶ月だけでも、君が俺の恋人であることに違いはない」
その言葉を刻むように、もう一度指先へキスされる。
それどころか甘噛みまでされた。
「じゃあ……」
言いかけたものを飲み込む。
(じゃあ、恋人らしく『この先』もするの?)
今日は神宮寺さんと二人でこのホテルに泊まる。
眠るなら、今座っているソファかダブルベッドのどちらか。
――いい歳の男女がただ仲良く眠るだけ、なんてありえると思えない。
(……神宮寺さんと? 私が?)
そう考えた瞬間、ぶわっと顔が熱くなった。
たぶん、見てわかるほど赤くなってしまったのだろう。
神宮寺さんが私の顔を覗き込んで、目を瞬かせる。
「……なにを想像したんだ」
「な、にも」
「…………嘘だ」
「……っ、あ」
驚きに声を上げたときにはもう、視界がぐるんと動いていた。
目の前に広がるのは天井。
そして、私を押し倒し、見下ろした神宮寺さんの真剣な顔。
どんな写真を撮るときよりも熱っぽい視線が私の心を捉えた。
「待っ……」
なにを待ってほしいと言いかけたのか自分でもわからなかったけれど、最後まで言わせてもらえなかった。
「ん……っ、う」
唇を塞がれ、舌で割り開かれる。
ぬるりとした感触に全身が強張った。
なのに、突き飛ばそう、拒もう、という考えは頭の中のどこにもない。
(なに、これ)
恥ずかしながら、こんなキスに経験はなかった。
優しくて、なのに激しくて、全部奪っていこうとするような、どうしようもなく心が震える大人のキス。
唇の表面を触れ合わせるのだけでは足りないのだと強く訴えて、もっと深く、もっと近くまで舌を擦り付けてくる。
最初は舌と舌を触れ合わせるだけ。
私が呼吸のために口を開いたら、今度は絡めてきて。
頬の内側、歯列、口蓋。
余すところなく味わうように舐められる。
「……ふ、ぅあ」
息が苦しかった。
どうやって今まで鼻で呼吸していたのか、すっかり忘れてしまっている。
「じん、ぐ……じさん……待って……」
「なにを」
「……っ!」
太ももの辺りに違和感を覚える。
なにか押し付けられている気がした。
硬くて、熱くて、落ち着かない気持ちになるものを。
「う、そ……」
「嘘じゃない」
は、と神宮寺さんが荒い息を吐く。
この人に表情がないなんて、気難しくて怖い人だなんて、全部嘘に違いない。
真剣な眼差しは何度も見たことがある。
だけど、こんな――余裕のない顔は見たことがなかった。
「君のせいだ」
「私、なにもしてな――」
「君の、せいだ」
責めるような声にもやはり余裕がない。
私もまた荒く息をこぼしながら、神宮寺さんを見上げる。
目が合った瞬間。
――囚われた、と思った。
「優しく……してください……。初めてなんです……」
「……わかった」
だらんと伸ばしていた手は、広い背中へ。
再び落ちてきた口付けに応えようと、目を閉じて唇を開く。
さっきの奪うようなキスは、ただ甘さと優しさを与えるだけのくすぐったいものに変わっていた。
それでいて、足に触れている硬さはより自身を主張している。
(私にそこまで……興奮しているの)
ぐ、とそれが擦り付けられるたびにぞくぞくする。
腰の辺り、いや腹部の辺りだろうか。
今までに感じたことのない疼きが広がっていく。
「……ん、ぁ」
こぼれた声のなまめかしさに息を呑んだ。
まるで自分の声ではないみたいだ。
「い……い、や……」
「嘘をつくな」
「っ、ん」
無意識にこぼれた拒絶をすぐ弾かれる。
唇を重ねながら、先ほどは手に絡んだ指を服の中に入れられた。
そうだと言えば失望されるのだろうか。これまでの話から考えるに、きっとそうなのだろうとは思うが。
「……するかもしれません。こういうことには慣れていないので」
「なるほど、耐性がないから期待しかねないと」
「……そういうことになります」
「あの男が相手だとしても?」
「あの男?」
「高橋」
「それはありえません」
即答すると、くくくと喉奥で笑うのが聞こえた。
「少なくとも、あいつよりは好感度が高いわけだ」
(……喜んでる? それとも、ただ面白かっただけ?)
「よかった」
神宮寺さんの指が髪を離して更に下へ流れていく。
そうして、置き場に困っていた私の手をそっと握った。
「嫌われているよりはずっといい」
待って、と止める前に指を絡められる。
それこそ、本当の恋人同士がするように。
「俺も期待しそうになるな、これは」
さりげなく、本当に驚くほど自然な仕草で手を引き寄せられる。
先ほどは髪に落ちたキスが、今度は指の先に落ちた。
「っ……」
ぴり、と走ったその電流に衝撃を受ける。
今すぐ逃げ出したくてたまらない。そうしなければ、なにかとてもいけないことが起きる予感がする。
「さ、三ヶ月だけの契約関係です、よね。私は高橋さんから逃げるための、神宮寺さんはコンクールのための」
「それがなにか?」
「だったら、あの――」
「たった三ヶ月だけでも、君が俺の恋人であることに違いはない」
その言葉を刻むように、もう一度指先へキスされる。
それどころか甘噛みまでされた。
「じゃあ……」
言いかけたものを飲み込む。
(じゃあ、恋人らしく『この先』もするの?)
今日は神宮寺さんと二人でこのホテルに泊まる。
眠るなら、今座っているソファかダブルベッドのどちらか。
――いい歳の男女がただ仲良く眠るだけ、なんてありえると思えない。
(……神宮寺さんと? 私が?)
そう考えた瞬間、ぶわっと顔が熱くなった。
たぶん、見てわかるほど赤くなってしまったのだろう。
神宮寺さんが私の顔を覗き込んで、目を瞬かせる。
「……なにを想像したんだ」
「な、にも」
「…………嘘だ」
「……っ、あ」
驚きに声を上げたときにはもう、視界がぐるんと動いていた。
目の前に広がるのは天井。
そして、私を押し倒し、見下ろした神宮寺さんの真剣な顔。
どんな写真を撮るときよりも熱っぽい視線が私の心を捉えた。
「待っ……」
なにを待ってほしいと言いかけたのか自分でもわからなかったけれど、最後まで言わせてもらえなかった。
「ん……っ、う」
唇を塞がれ、舌で割り開かれる。
ぬるりとした感触に全身が強張った。
なのに、突き飛ばそう、拒もう、という考えは頭の中のどこにもない。
(なに、これ)
恥ずかしながら、こんなキスに経験はなかった。
優しくて、なのに激しくて、全部奪っていこうとするような、どうしようもなく心が震える大人のキス。
唇の表面を触れ合わせるのだけでは足りないのだと強く訴えて、もっと深く、もっと近くまで舌を擦り付けてくる。
最初は舌と舌を触れ合わせるだけ。
私が呼吸のために口を開いたら、今度は絡めてきて。
頬の内側、歯列、口蓋。
余すところなく味わうように舐められる。
「……ふ、ぅあ」
息が苦しかった。
どうやって今まで鼻で呼吸していたのか、すっかり忘れてしまっている。
「じん、ぐ……じさん……待って……」
「なにを」
「……っ!」
太ももの辺りに違和感を覚える。
なにか押し付けられている気がした。
硬くて、熱くて、落ち着かない気持ちになるものを。
「う、そ……」
「嘘じゃない」
は、と神宮寺さんが荒い息を吐く。
この人に表情がないなんて、気難しくて怖い人だなんて、全部嘘に違いない。
真剣な眼差しは何度も見たことがある。
だけど、こんな――余裕のない顔は見たことがなかった。
「君のせいだ」
「私、なにもしてな――」
「君の、せいだ」
責めるような声にもやはり余裕がない。
私もまた荒く息をこぼしながら、神宮寺さんを見上げる。
目が合った瞬間。
――囚われた、と思った。
「優しく……してください……。初めてなんです……」
「……わかった」
だらんと伸ばしていた手は、広い背中へ。
再び落ちてきた口付けに応えようと、目を閉じて唇を開く。
さっきの奪うようなキスは、ただ甘さと優しさを与えるだけのくすぐったいものに変わっていた。
それでいて、足に触れている硬さはより自身を主張している。
(私にそこまで……興奮しているの)
ぐ、とそれが擦り付けられるたびにぞくぞくする。
腰の辺り、いや腹部の辺りだろうか。
今までに感じたことのない疼きが広がっていく。
「……ん、ぁ」
こぼれた声のなまめかしさに息を呑んだ。
まるで自分の声ではないみたいだ。
「い……い、や……」
「嘘をつくな」
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