【R18】きみを抱く理由

さくら蒼

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契約は少し強引に

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***

 パシャ、と聞こえたのはシャッターを切る音。
 それにあわせてくぐもった喘ぎ声と、ぎしぎしという軋むベッドの音が混ざり合う。

「っ……あ……っ、んんっ……」
「顔、隠すな」
「やっ……」

 無意識に顔の前へ伸ばそうとしていた手を、強引に掴まれてシーツに縫い留められてしまう。
 そして彼はまた、シャッターを切った。

「ぅ、あ」

 押し殺し損ねた声が唇から漏れ出る。
 繰り返される抽挿。私の中を広げては、抜けていく。
 水音を響かせながら中を擦られると、こんなにも全身が痺れた。
 奥をかすめて、そうして名残惜しげに引き下がる。ただそれを繰り返しているだけなのに、どうして甘い声が止められないのか。
 また、パシャリと音がした。
 私のあられもない姿を、乱れた顔を。隠し切れないすべてを彼のカメラが収めていく。

「……も、撮らない、で……っ……」

 必死にそう訴えたけれど、返事の代わりにより深く侵入される。

「い……あっ……あっ……」

 一度溢れてしまえばもう止まらなかった。
 シーツを掴んで、断続的に与えられる快感を受け止める。

(これは、契約、だから)

 ひと突きされるたび、溺れないように自分へと言い聞かせる。
 散々、身体を甘く溶かされたせいか目がうるむ。
 その視界の先にはひたすらに私を求める彼の姿があった。
 ――この関係に愛があるわけじゃない。
 わかっているのに流されてしまいそうで。

(あと、三ヶ月……)

「また余計なことを考えてるだろ」
「――っ」

 低い囁きの方にこそ、疼きが走る。

「……余裕あるんだな」

 ない。そんなものはどこにもない。
 答えようと開いた唇はあっけなく塞がれた。

「こんなにしてるのに」

 膝裏を持ち上げられて、もっともっと深くへ。
 シーツにすがるだけでは足りず、その背中に爪を立てた。
 声にならない声が漏れて、私と、彼の限界への引き金となる。

(あと、三ヶ月)

 そう思っていないとやっていられない。
 ――長くて短い三ヶ月間の恋人契約。
 どうして天才フォトグラファーの彼が私なんかとこんな契約を結んだのか。
 さかのぼること、一週間前。
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