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第3章 夏休みは秘密の特訓! 〈マカロン〉の意味はなに?
第17話 マカロンアイス
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いつかぶりの〈シャンティ・ポム〉。ここはいつ来ても変わらない空間のような気がする。
「あれ、杏子ちゃん!」
お母さんにはいつの間にかすっかり気に入ってもらったみたいで挨拶する前に歓迎された。
「なに、なんで二人ともこんなに汗だくなの? 図書館行ってたんじゃなかったの?」
ほんと、そのつもりだったんですけどね。
「ちょっと公園寄ってた」
あれ、自転車練習って言わないの? ちらりと見たけど目は合わなかった。もしかして、気づかってくれてる……?
「ええー! 公園!? なんでまた!」と驚くお母さんに「あれ食っていい?」と自宅らしく息子くんは言う。続いてこちらにはこんな質問が。
「バニラ、いちご、チョコ、抹茶、どれがいい?」
なんのことかまず教えてほしいのですが。だけどどうやら言うつもりはないらしい。まったく……。仕方ないからここは好きな味を答えてみた。「いちご」
すると「はーい」と準備にかかりかけたお母さんに「おれがやる」と翔斗くんが申し出た。「えー、盛りすぎないでよ?」とたしなめられつつ、なにか作っているみたい。すごいな、やっぱり。こんな自然にお菓子作りに関われるんだもん。わたしだったら「よし。では、今から作ります!」って、なぞに気合い入れちゃうから。
やがて翔斗くんは小さなお皿を持ってわたしのいるテーブル席に現れた。
お皿の上では、まあるくすくい取られた苺マーブルのアイスクリームが綺麗なピンク色のマカロンの上にこんもりと乗っていた。そしてまるでオシャレな帽子みたいにもう一枚のマカロンが斜めかげんに立て掛けられている。か、かわいい……!
「これって」
「マカロンアイス。まだ試作だけど」
マカロンアイス!
コンビニで買って食べたことはあったけどまさかケーキ屋さんで出てくるとは。
「食ってみて。ウマイから」
頷きながらごくりとヨダレを飲んでいた。翔斗くんも自分用のチョコ味を手元のテーブルに置く。って。
「チョコアイス多くない!?」
「そ? 目の錯覚じゃん?」
にやりと笑ってあっという間に食べ終えてしまった。
「もっと味わえばいいのに」
「あー、回復した」
するとお皿の上にまだあるわたしのピンク色のマカロンを見ながら「キレイだよな」と言う。
「え、うん」
ケーキ屋さんのマカロンなんだから当たり前でしょ? と思っていたら「なんでなんだろ」とまじまじ観察し始めちゃって食べられない。
「あの……食べていい?」
「店のレシピは知らないけどさ、本のレシピ通りにやってんだよ。やってんのに、上手くいかないんだ。こんなキレイには絶対焼けない」
え。それって、翔斗くん。
「まさか、マカロン作ってるの?」
すごい。そんなの家でできるんだ!?
「でも全然だめ。まだまだ。見せれるレベルじゃない」
「食べたい!」
「いやだね」
「失敗作でもいいから」
「こんな完璧なの食ったあとでなんて、絶対に嫌だ」
「むう……」
それはたしかにそうか。
「お父さんには教わらないの?」
まあ……わたしもわかってて訊いたんだけどさ。それでもこんなに近くにいるんだもん。直接じゃなくても、盗み見るっていうか、〈技を盗む〉って言葉もあるじゃない?
「ズルはしたくない」
「……ズル?」
「ケーキ屋の息子だからって、なんでも楽に手に入れたくない。それにそんなことできちゃったら、おれはたぶん洋菓子に興味なくなるよ」
自分でたどり着く。試して、悩んで、苦労して、やっと答えにたどり着く。それがおもしろい。それがやり甲斐。
「勉強もそう。自転車もそう。なにがわるいのか間違ってたのか、どこを直せばいいのか、それを考えて、予想して、試す。だめならまた考える。そういうのが好きなんだよ、おれ」
自分でも変わってるって思う。って笑うから、慌てて首を横に振った。
「わたし、自転車頑張るよ。だから乗れるようになったら……」
言いつつそろりと相手のからになったお皿を見た。
「翔斗くんのマカロン、食べたいな」
「……言ったね」
「え」
「だったらこの夏集中特訓だ!」
えええええええっ!?
「あれ、杏子ちゃん!」
お母さんにはいつの間にかすっかり気に入ってもらったみたいで挨拶する前に歓迎された。
「なに、なんで二人ともこんなに汗だくなの? 図書館行ってたんじゃなかったの?」
ほんと、そのつもりだったんですけどね。
「ちょっと公園寄ってた」
あれ、自転車練習って言わないの? ちらりと見たけど目は合わなかった。もしかして、気づかってくれてる……?
「ええー! 公園!? なんでまた!」と驚くお母さんに「あれ食っていい?」と自宅らしく息子くんは言う。続いてこちらにはこんな質問が。
「バニラ、いちご、チョコ、抹茶、どれがいい?」
なんのことかまず教えてほしいのですが。だけどどうやら言うつもりはないらしい。まったく……。仕方ないからここは好きな味を答えてみた。「いちご」
すると「はーい」と準備にかかりかけたお母さんに「おれがやる」と翔斗くんが申し出た。「えー、盛りすぎないでよ?」とたしなめられつつ、なにか作っているみたい。すごいな、やっぱり。こんな自然にお菓子作りに関われるんだもん。わたしだったら「よし。では、今から作ります!」って、なぞに気合い入れちゃうから。
やがて翔斗くんは小さなお皿を持ってわたしのいるテーブル席に現れた。
お皿の上では、まあるくすくい取られた苺マーブルのアイスクリームが綺麗なピンク色のマカロンの上にこんもりと乗っていた。そしてまるでオシャレな帽子みたいにもう一枚のマカロンが斜めかげんに立て掛けられている。か、かわいい……!
「これって」
「マカロンアイス。まだ試作だけど」
マカロンアイス!
コンビニで買って食べたことはあったけどまさかケーキ屋さんで出てくるとは。
「食ってみて。ウマイから」
頷きながらごくりとヨダレを飲んでいた。翔斗くんも自分用のチョコ味を手元のテーブルに置く。って。
「チョコアイス多くない!?」
「そ? 目の錯覚じゃん?」
にやりと笑ってあっという間に食べ終えてしまった。
「もっと味わえばいいのに」
「あー、回復した」
するとお皿の上にまだあるわたしのピンク色のマカロンを見ながら「キレイだよな」と言う。
「え、うん」
ケーキ屋さんのマカロンなんだから当たり前でしょ? と思っていたら「なんでなんだろ」とまじまじ観察し始めちゃって食べられない。
「あの……食べていい?」
「店のレシピは知らないけどさ、本のレシピ通りにやってんだよ。やってんのに、上手くいかないんだ。こんなキレイには絶対焼けない」
え。それって、翔斗くん。
「まさか、マカロン作ってるの?」
すごい。そんなの家でできるんだ!?
「でも全然だめ。まだまだ。見せれるレベルじゃない」
「食べたい!」
「いやだね」
「失敗作でもいいから」
「こんな完璧なの食ったあとでなんて、絶対に嫌だ」
「むう……」
それはたしかにそうか。
「お父さんには教わらないの?」
まあ……わたしもわかってて訊いたんだけどさ。それでもこんなに近くにいるんだもん。直接じゃなくても、盗み見るっていうか、〈技を盗む〉って言葉もあるじゃない?
「ズルはしたくない」
「……ズル?」
「ケーキ屋の息子だからって、なんでも楽に手に入れたくない。それにそんなことできちゃったら、おれはたぶん洋菓子に興味なくなるよ」
自分でたどり着く。試して、悩んで、苦労して、やっと答えにたどり着く。それがおもしろい。それがやり甲斐。
「勉強もそう。自転車もそう。なにがわるいのか間違ってたのか、どこを直せばいいのか、それを考えて、予想して、試す。だめならまた考える。そういうのが好きなんだよ、おれ」
自分でも変わってるって思う。って笑うから、慌てて首を横に振った。
「わたし、自転車頑張るよ。だから乗れるようになったら……」
言いつつそろりと相手のからになったお皿を見た。
「翔斗くんのマカロン、食べたいな」
「……言ったね」
「え」
「だったらこの夏集中特訓だ!」
えええええええっ!?
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