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一番悪いのは
しおりを挟むローラが怪我をしてから二年が経った。
杖なしでも歩けるようになった。
まだ走れはしないが、時間が経てば走れるようにもなるそうだ。
なので歩けるようになって、避妊薬を飲む事もなかなったので、今は子作りの最中だ。
イヴァン様はローラの従姉妹のライラとの婚約が決まって、浮かれまくっている。
ライラは俺も小さい時からの付き合いなので、ライラが王太子妃になる事には大賛成だ。
アルベルトもロジーニも婚約者が決まり、アルベルトは来月、ロジーニは再来月に結婚式をあげる。
一時、ロジーニが悩んでいる時があり、相談にのるぞ、と言っても大丈夫だしか言わないので心配していたが、立ち直ったようで良かった。
ロジーニの婚約者は再婚になる。
前のご主人は病気で亡くなったんだそうだ。
最初は侯爵が反対していたそうだが、ロジーニが反対を押し切って婚約したのは驚いた。
アルベルトは婚約してからも何ら変わらない生活を送っていたが、あまりにも仕事ばかりで婚約者を放ったらかしにしていて、婚約破棄の直前までいったが、なんとか今は丸く治ったようだ。
ジーノ殿下はこれまでの魅了騒動で理不尽な目に合った人達の為の法整備や、魅了対策の研究を精力的にこなしている。
恋愛や結婚はしばらく考えたくないのか、婚約者も決まってはいない。
相変わらずローラを“先生”と呼び、時折屋敷に来てローラとお茶を飲んでいる。
フェデリカ殿下は、後宮担当近衞騎士のゾルジと婚約した。
ゾルジは侯爵家の嫡男なので釣り合いも取れているし、ずっと殿下を支えてきた男だ、良い夫婦になるだろう。
殿下は積極的に夜会やお茶会に参加し、元妃殿下に荒らされた社交界をまとめていっている。
イヴァン様の後、陛下と王妃のお茶会を最後に、ローラの庭園散歩は終わった。
まだ完全に足は治ってはいない。
だがローラは、もう行かなくても良いと思うと言って、終了した。
後日ローラが、
「ほんの少し、ほんの少しよ、元妃殿下の近くにいた方々にまだ魅了が残っていたの。
お祖母様は自然と無くなるわって言っていたのだけど、やっぱりあんな気持ち悪いもの無い方が良いじゃない?
だから、気持ち悪さが無くなるまでは行こうと思ってたの。
イヴァン様が一番酷かったと思う。
でも、ライラが来るからもう良いかなって。
側近の方々も同じね。
話しはしなかったんだろうけど、妃殿下と一度は身体の関係はあったんだと思う。
イヴァン様もそれは知ってたんじゃないかな。
でも何も言わなかったのは、お二人を切りたくなかったから。
本来なら、私を殺そうとした公爵家の執事見習いの人のように元妃殿下を盲愛していたと思うの。
そうならなかったのは、何か妃殿下よりも大切に思う人がそれぞれいたのかもしれないと思ったの。
魅了に完全に落ちないでいられた、あの方達の心を支えていた存在に、これから頑張ったらまだ間に合うかもと思った。
だからちゃんと綺麗に浄化してあげたいじゃない?
これからどうなるのかは分からないけど、今度こそは本当に好きな人、大切にしたい人と一緒にいて欲しいなって私は思いました、以上!」
そう言われてみたらそうだ。
イヴァン様もアルベルトもロジーニも、妃殿下の頼みを断る事が多々あった。
何か妃殿下に対しては魅了の影響で侍っていたが、心の奥に大事にしまっていたモノがあって、それが三人を守っていたのかもしれない。
陛下は王妃、ジーノ殿下は家族とか。
あの三人の大事にしていたものって何だろう。
好きな人?
俺はローラしか見ていなかったから魅了にかからなかった。
イヴァン様は婚約していたから他の人を好きになっても諦めるしかなかった。
アルベルトもロジーニも心に秘めた人がいたのだろうか?
今度聞いてみよう。
こうして俺の結婚式からの長くてしんどい騒動は一応完結した。
あの頃、皆んな自分が悪いと思っていたが、ローラは言った。
一番悪いのは元妃殿下だと。
この女さえいなければ、こんな事にはならなかった。
公爵家の血がそうさせたのか、偶然そうなったのか、今は解明されていないが、いつか分かる時があるだろう。
ジーノ殿下が対策を練ってくれるだろう。
げに恐ろしきは女の執念とも言うべき事件だった。
ま、俺はローラが居てくれさえすればそれで良いのだがな。
後は子供が出来たら万々歳だ。
〈完結〉
*************************
長く間を空けてしまい、すみませんでした。
これにて完結となります。
イヴァンやロジーニ、アルベルト、影から護衛になったダンの事も書けたら良いなぁと思いますが、とりあえず本編は完結させました。
いつも読んで下さった多くの方に感謝申し上げます。
ありがとうございました。
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