一番悪いのは誰

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聖女のもう一人の孫娘

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イヴァン視点


中庭でアルベルトと何故かロジーニがローラ殿とお茶会をしている姿を見ていた。
ローラ殿はロジーニから貰った物に喜んでいるようだ。


数日前の事を思い出していた。
数日前、聖女ローズ様の孫娘、ローラ殿の従姉妹のライラ・ハックライト侯爵令嬢との顔合わせがあった。
俺の新しい妻となる人とのお見合いをしたわけだが、中々楽しいお見合いだったのだ。

リンカが死んだのは、研究所に送られて半年ほど経ってからだ。
リンカの死を発表したのはその半年後。
魅了の影響が完全に無くなってから発表となったので、今はまだ喪中というわけだが、王太子妃教育の関係で既に選別が始まっていた。
同年代に適任者が残っている訳もなく、難航していた所に、ローズ様から孫娘はどう?と薦められた。

そのライラ嬢、隣国で王太子の婚約者だったらしいが、隣りの国の王太子も何やらやらかしたらしく学園の卒業パーティーで大勢の前で婚約破棄を宣言したのだとか。
王太子は廃嫡、ライラ嬢は傷心の為寝込んでいたが、回復すると修道院に行くと騒いでいるから俺と見合いでもしたら?と軽~い感じで伝えたら、ローラ殿に会いたいからこっちに行くついでに、とお見合いしたって訳だ…ついでに…。

「私イヴァン王太子殿下には何ら恨みはございませんが、という存在には拒否反応が出てしまうのです。
ほら見て下さいませ、鳥肌。
聞いていらっしゃるとは思いますが、我が国のドアホ・・・失礼しました…王太子殿下がほんの少し前まで市井で暮らしていた男爵家の庶子の令嬢に入れ込みましてね、何度も何度も注意しましたの、王太子妃にはなれませんよ、男爵家は王太子妃にはなれませんよ、その方外国語話せますの?って。
でも基本バカップルには話しが出来ませんから、放っておいたら卒業パーティーでやらかしましたの、ビックリですわ。オホホ。」

「ハア…大変…でしたね…」

怒りをぶちまけるかのように、一気に話したライラ嬢は、ローラ殿の穏やかな雰囲気とは違って、ピンヒールを履いて扇子で口元を隠しながら、オーホホホホと高笑いしそうな感じだ。

余程、王太子に対して腹に据えかねていたのだろう、時々言葉が悪くなっていたが、俺は好感が持てた。
ライラ嬢は王太子妃教育も終わらせているので、こちらの教育も左程時間もかからず終わらせる事も出来るし、多分性格はサッパリしているようだ。
そして優しい…多分。
婚約者としての時間を無駄にしたくなかったというのもあるのだろうが、王太子を支えようと彼女なりに沢山努力してきたのだろう。
他の女に現を抜かしても見捨てる事が出来なかったのは、ひとえに殿下が好きだったのだと思う。
でなければ聖女の孫娘が婚約を解消出来ない訳がない。

「ライラ嬢、会ったばかりだが、どうやら私は貴方を好きになってしまったらしい。
前向きに考えてはもらえないだろうか?」

思わずそう口に出してから、自分でも驚いていた。

「プッ…なんで言った貴方が驚いているの?」
と笑うライラ嬢に、俺も笑った。

「分からない、まさか思った事が口から勝手に出るとは思わなかった。」

「イヴァン様も色々あったようですし、私も大変でしたけど、この国にはローラもいるのし、イヴァン様も聞いてた感じとは違ったので、前向きに考えたいと思います。」

とんとん拍子で今話しが進んでいる。

彼女となら良い関係になれると感じる。
おそらく溺愛するだろう。

あそこで楽しげに笑っているローラ殿を切ない気持ちで見る事もなくなる。
ローラ殿に感じていた淡い想いは少しずつ消えていくだろう。


そしてローラ殿とのお茶会。

「イヴァン王太子殿下、今日はお茶会に来て頂きありがとうございます。」

「ローラ殿も変わりないかい?歩くのもしっかりしてきたようだね。」

「はい。お祖母様の治療のお陰でかなり楽になりました。
そういえばライラにお会いしたそうですね!
ライラが面白い事になっていて、笑ってしまいました。」
とクスクス笑っている。
面白い事に?

「ローラ殿、ライラ嬢は私の事で何か気に障ったのだろうか…。
私はライラ嬢と前向きにと思っていたのだが…。」
俺は何かしてしまっただろうか…
結構楽しげだったのだが…。

「いえいえ、逆ですよ、イヴァン様。
ライラは顔を真っ赤にして、“わ、わ、私、イ、イヴァン様に、す、す、好きだと、い、言われたのーーー”と我が家で大騒ぎでしたの。
我が家ではお二人を全員で応援していますよ!」
とモノマネ付きで話してくれた。

「プッ、ライラ嬢は楽しい人だな。先日の顔合わせも、ローラ殿に会いたいからついでに私に会うと返事がきたんだ。
それが面白くてね、会ってみようと思った。
会って話してみたら、明るくて可愛らしい方だった。」

「ライラは王太子殿下の婚約者に選ばれた時に、こっちに家出してきてまで嫌がってたんです。でも責任感が強くて、なんだかんだで世話焼きで優しいから、最後まで殿下を諦めなかったんだと思います…。
あんな感じなので表には出しませんが、まだ傷付いてると思います…。
とても優しくて可愛いくて面白い子なんです、イヴァン様、どうかライラをよろしくお願い致します。」

「頑張ってライラ嬢に選んでもらえるよう頑張るよ。ローラ殿に負けないよう、私も諦めずにライラ嬢にアピールしまくるつもりだよ。

ローラ殿、いつも私に…私達に頑張る力を与えてくれてありがとう。
貴方は…私の…支えだった…。
本当にありがとう、これからは私達がローラ殿も含め、国民の皆の暮らしを豊かに、幸せにする為に精進していくと誓うよ。
今日はありがとう。」


こうしてローラ殿とのお茶会は終わった。

危なく告白しそうになって焦ったが、今日でその想いともお別れだ。

俺の本当の初恋はこの日で終わった。

次は本気で愛する人の為に頑張るだけだ。
















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