一番悪いのは誰

jun

文字の大きさ
上 下
34 / 36

親友の叶わぬ想い

しおりを挟む


アルベルト視点


今日はファビオの奥方、ローラ夫人とのお茶会だ。
そして何故かその場にロジーニもいる。
ロジーニは先月のお茶会だったはずだ。
何故?
それもやけにロジーニは嬉しそうだ。

「アルベルト様、今日はお茶会に来て頂きありがとうございます。」

いかん。私からお礼を言わねばならなかったのに、ロジーニに気を取られてしまった。

「申し訳ございません、ローラ殿。
こちらがお礼を言わねばならなかったのに、気を使わせてしまいました。
体調にお変わりございませんか?」
と俺としては珍しく動揺してしまった。

「はい、元気が溢れておりますよ。ありがとうございます。
アルベルト様もお変わりございませんか?」

「はい。イヴァン様の執務も急ぎもなく最近は定時で帰る事が出来ております。」

隣りのロジーニがソワソワしているのは何故だ?

「そうでございますか・・・フフ…ロジーニ様、そんなにお勧めのジャムを渡したいのですか?」

ジャム?

「そうなんだ!このジャムは桃のジャムなんだけど桃の花びらも入ってるんだ!
紅茶に入れてもパンやマフィンに付けても美味しいと思うよ!」

ロジーニ⁉︎どうした⁉︎何故そんなにテンションが高い!

「まあ!桃の花びらが⁉︎桃は水分も多いですし、糖分も多いですからジャムを作るのは難しいんですよね~買った方が美味しいので我が家では作ってないのですが、花びらまで入れるなんて、バーサ侯爵家の料理長は優秀なんですね!」
と夫人も凄く喜んでいる。

「ジャム・・・ですか?」といえば、

「すみません、アルベルト様。一人で騒いでしまいました…。」
いやいや、もう一人騒いでいた人もいますよ。

「学生の頃、ロジーニ様に頂いたジャムがあまりにも美味しかったので、今回の騒動はそのジャムの大瓶で手を打ちましたの。
今月のアルベルト様のお茶会に特別参加して下さいとお願いしてしまって・・・アルベルト様の許可もなく申し訳ございません。
でも、ロジーニ様のお宅のジャムは絶品なんですよ!」
それは知っているのだが、学生時代とは?

「そうなんですね、私はロジーニがいても構いません。
ですが、学生時代に二人に交流があったなんて知りませんでした。」

そして明かされるロジーニの秘密。
ロジーニは女性に贈り物などした事などない。
変に気を持たせるからと、贈り物を受け取らないから。
なのにローラ夫人には贈った⁉︎
ハンカチも⁉︎
ファビオに頼まず、名乗らず机に置いた⁉︎
ロジーニが⁉︎
軽そうに見えて奥手なロジーニが⁉︎

待て待て、ひょっとしてロジーニ・・・お前…。

隣りを盗み見ると、若干頬を染め、夫人と話す様は恋する乙女ではないか⁉︎
いつからだ⁉︎魅了される前?
いや、そんな前には会っていないはずだ。
なら学園の時か?
でも俺達はリンカに魅了されていたはず。
でもロジーニはイヴァンや俺とは少し遅れてリンカに侍りだしたような気がする。

「アルベルト様?どうされました?体調でも悪いのですか?」
とローラ夫人が気遣う。
「申し訳ございません、少しボォーっとしてしまいました。昨日、今日のお茶会の事を考えていたら眠れなかったものですから。」

「まあ、それはいけません。また体調が良い時にでもお誘い致します。
今日は無理をさせてしまい、こちらこそ申し訳ございません。
でもアルベルト様とまたお話し出来て嬉しかったです。」

また?あれ?俺、ローラ夫人と話した事あったっけ?

「いえ、また誘って頂けたら嬉しいです。
次は体調を整え、ローラ殿とのお茶会を首を長くしてお待ちしております。」

「はい。ロジーニ様も今日はありがとうございました。ジャム美味しく頂きますね。」

こうしてお茶会は終わったのだが、夫人の姿が完全に見えなくなってからロジーニを問い詰めた。

「ロジーニ、話してもらおうか。お前、ローラ殿の事、「待て!言うな!言葉にしたら止まらなくなる!」」

「マジかよ…いつから?」
気付かなかった…。
魅了されてロジーニ自身もそんな淡い恋心、忘れていたんだろう。
でも夫人の健気で、ひたむきな姿を、この一年半見続けていたら、想いは溢れるよな…。

「ファビオに紹介される大分前からだったんだと思う…。
彼女の周りだけ、空気が澄んで見えた。
彼女の周りの景色だけ色が…違って見えた。」

「そんなに前から⁉︎」

「その時は自分の気持ちに気付かなかった。
ただお礼を渡す時、ファビオに頼むのは嫌だと思った・・・」
そんなの嫉妬だよ!

「まあ、ファビオが絶対離さなかったからお前に勝ち目はなかったんだろうけど、不毛な恋ってやつだな…。」

「彼女が杖無しで歩けるようになるまでは、見ていたい…と思ってる。
その後は親父の薦める相手と結婚するよ。」

「ハア~どうして依によって彼女を好きになるかなぁ~」

でもロジーニの気持ちは分かる。
もし彼女が独り身なら、俺だって立候補したい。
それほど彼女は人間的に素晴らしいと思うから。

「初めて、彼女とお昼を食べた時、ファビオがイヴァンに呼ばれていなかったんだ。
大量のサンドイッチを抱えて困ってた彼女が俺を見つけて、分けてくれたんだよ。
その時、後で食べてって俺とファビオの分をくれたんだ。で、彼女、俺のだけ焼き菓子を多めにくれて、なんて言ったと思う?」

「知らん!」

「彼女、“初回特典”だからって言ったんだ…可笑しくて…多分その時自覚したんだと思う…。その後リンカに会って、その想いも忘れてた・・・」

寂しそうに笑う親友は、少し泣きそうに見えた。

「ファビオが知ったら怒りそうだな。」

「それ、俺も言った!」

親友の切ない想いを応援する事は出来ないが、話しを聞いてやれるのは俺だけだ。


久しぶりにロジーニと酒でも飲もうかなと思う。















しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

うーん、別に……

柑橘 橙
恋愛
「婚約者はお忙しいのですね、今日もお一人ですか?」  と、言われても。  「忙しい」「後にしてくれ」って言うのは、むこうなんだけど……  あれ?婚約者、要る?  とりあえず、長編にしてみました。  結末にもやっとされたら、申し訳ありません。  お読みくださっている皆様、ありがとうございます。 誤字を訂正しました。 現在、番外編を掲載しています。 仲良くとのメッセージが多かったので、まずはこのようにしてみました。 後々第二王子が苦労する話も書いてみたいと思います。 ☆☆辺境合宿編をはじめました。  ゆっくりゆっくり更新になると思いますが、お読みくださると、嬉しいです。  辺境合宿編は、王子視点が増える予定です。イラっとされたら、申し訳ありません。 ☆☆☆誤字脱字をおしえてくださる方、ありがとうございます! ☆☆☆☆感想をくださってありがとうございます。公開したくない感想は、承認不要とお書きください。  よろしくお願いいたします。

2番目の1番【完】

綾崎オトイ
恋愛
結婚して3年目。 騎士である彼は王女様の護衛騎士で、王女様のことを何よりも誰よりも大事にしていて支えていてお護りしている。 それこそが彼の誇りで彼の幸せで、だから、私は彼の1番にはなれない。 王女様には私は勝てない。 結婚3年目の夫に祝われない誕生日に起こった事件で限界がきてしまった彼女と、彼女の存在と献身が当たり前になってしまっていたバカ真面目で忠誠心の厚い騎士の不器用な想いの話。 ※ざまぁ要素は皆無です。旦那様最低、と思われる方いるかもですがそのまま結ばれますので苦手な方はお戻りいただけると嬉しいです 自己満全開の作品で個人の趣味を詰め込んで殴り書きしているため、地雷多めです。苦手な方はそっとお戻りください。 批判・中傷等、作者の執筆意欲削られそうなものは遠慮なく削除させていただきます…

寡黙な貴方は今も彼女を想う

MOMO-tank
恋愛
婚約者以外の女性に夢中になり、婚約者を蔑ろにしたうえ婚約破棄した。 ーーそんな過去を持つ私の旦那様は、今もなお後悔し続け、元婚約者を想っている。 シドニーは王宮で側妃付きの侍女として働く18歳の子爵令嬢。見た目が色っぽいシドニーは文官にしつこくされているところを眼光鋭い年上の騎士に助けられる。その男性とは辺境で騎士として12年、数々の武勲をあげ一代限りの男爵位を授かったクライブ・ノックスだった。二人はこの時を境に会えば挨拶を交わすようになり、いつしか婚約話が持ち上がり結婚する。 言葉少ないながらも彼の優しさに幸せを感じていたある日、クライブの元婚約者で現在は未亡人となった美しく儚げなステラ・コンウォール前伯爵夫人と夜会で再会する。 ※設定はゆるいです。 ※溺愛タグ追加しました。

裏切られた令嬢は死を選んだ。そして……

希猫 ゆうみ
恋愛
スチュアート伯爵家の令嬢レーラは裏切られた。 幼馴染に婚約者を奪われたのだ。 レーラの17才の誕生日に、二人はキスをして、そして言った。 「一度きりの人生だから、本当に愛せる人と結婚するよ」 「ごめんねレーラ。ロバートを愛してるの」 誕生日に婚約破棄されたレーラは絶望し、生きる事を諦めてしまう。 けれど死にきれず、再び目覚めた時、新しい人生が幕を開けた。 レーラに許しを請い、縋る裏切り者たち。 心を鎖し生きて行かざるを得ないレーラの前に、一人の求婚者が現れる。 強く気高く冷酷に。 裏切り者たちが落ちぶれていく様を眺めながら、レーラは愛と幸せを手に入れていく。 ☆完結しました。ありがとうございました!☆ (ホットランキング8位ありがとうございます!(9/10、19:30現在)) (ホットランキング1位~9位~2位ありがとうございます!(9/6~9)) (ホットランキング1位!?ありがとうございます!!(9/5、13:20現在)) (ホットランキング9位ありがとうございます!(9/4、18:30現在))

その眼差しは凍てつく刃*冷たい婚約者にウンザリしてます*

音爽(ネソウ)
恋愛
義妹に優しく、婚約者の令嬢には極寒対応。 塩対応より下があるなんて……。 この婚約は間違っている? *2021年7月完結

結婚なんてしなければよかった。

haruno
恋愛
夫が選んだのは私ではない女性。 蔑ろにされたことを抗議するも、夫から返ってきたのは冷たい言葉。 結婚なんてしなければよかった。

【完結】聖女の手を取り婚約者が消えて二年。私は別の人の妻になっていた。

文月ゆうり
恋愛
レティシアナは姫だ。 父王に一番愛される姫。 ゆえに妬まれることが多く、それを憂いた父王により早くに婚約を結ぶことになった。 優しく、頼れる婚約者はレティシアナの英雄だ。 しかし、彼は居なくなった。 聖女と呼ばれる少女と一緒に、行方を眩ませたのだ。 そして、二年後。 レティシアナは、大国の王の妻となっていた。 ※主人公は、戦えるような存在ではありません。戦えて、強い主人公が好きな方には合わない可能性があります。 小説家になろうにも投稿しています。 エールありがとうございます!

完結 この手からこぼれ落ちるもの   

ポチ
恋愛
やっと、本当のことが言えるよ。。。 長かった。。 君は、この家の第一夫人として 最高の女性だよ 全て君に任せるよ 僕は、ベリンダの事で忙しいからね? 全て君の思う通りやってくれれば良いからね?頼んだよ 僕が君に触れる事は無いけれど この家の跡継ぎは、心配要らないよ? 君の父上の姪であるベリンダが 産んでくれるから 心配しないでね そう、優しく微笑んだオリバー様 今まで優しかったのは?

処理中です...