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目覚めたローラ
しおりを挟む痛い・・・身体中が痛い・・・
目を開けると、見慣れた部屋の天井だった。
結婚するまで暮らしていた実家の自室の天井だ。
身体は動かせず、首だけを動かし部屋を見るが、誰もいないようだ。
呼び鈴を鳴らそうと手を伸ばすが、身体を動かせず、届かない。
この身体はどうしてしまったんだろう…。
ファビオはどこにいるんだろう…。
ファビオ・・・⁉︎
そうだわ、思い出した。
結婚式の翌日からファビオは帰って来なかった。
何度連絡をしても、マルコが城に行ってもファビオに会わせてはもらえなかった。
一週間、十日、二週間と経ち、何かあったのではと、屋敷のみんなで心配していた。
そのうちファビオと王女様との噂が聞こえてきた。
屋敷の中でも若いメイド達がコソコソ話している。
昔から私を知っている人達は、ファビオが私を裏切る事などあり得ないと言ってくれた。
私もそう思っている。
あのファビオが裏切るなどあり得ない。
それに、不安な私達を煽る様なタイミングも不自然だった。
そんな時だった。
階段を降りようとした時、誰かに後ろから背中を押された。
咄嗟に手すりを掴もうとして身体を捻った時に、階段の上にメイドが一人立っているのが見えた。
顔までは見えなかったが。
その後は何も分からない。
きっとファビオと連絡が取れず、お父様にマルコが知らせたのだろう。
しかし、あのメイドは誰だったのだろう…。
私を殺そうとしたのは確かだ。
でも一体誰が…。
ある時から、ファビオに会うと何か嫌なモノが身体中にまとわりついている感じがし始めた。
帰ってくればそのうち消えるが、それでも会う度なのが気になった。
私のお祖母様は聖女様だ。
隣国ディオリジ国にいて、なかなか会えないが、手紙のやり取りをしている。
一度相談してみようか…。
私はお祖母様ほどではないが、私にも微々たるものだが聖力がある。
だから祈りを込めて、お守り代わりのハンカチに刺繍をして、数枚ファビオに渡した。
ハンカチを渡してからは嫌な感じはなくなった。
だが、ファビオに差し入れを持って行った時、騎士のみんながあの嫌なモノに纏わりつかれている事に気付いた時はゾッとした。
アレはなんなのだろう…。
何故全員に纏わりついているのだろう。
でも気のせいなのかもしれない。
私の変な一言で大事になってしまったらと思い、誰にも言わなかった。
でも放っても置けなかったから、必死にハンカチに刺繍をし、差し入れとして皆さんに配った。
次に行った時は持っている人には嫌なモノはなくなっていた。
どうやら効果はあったらしい。
でもアレはなんなんだろう。
何がおかしいのかも分からず、説明する事も出来ない。
とりあえず祈りを込めた差し入れを何度か持って行くようにした。
城ですれ違う人にも段々嫌なモノが増えていくのが怖かった。
でもそれが何かが分からず、もどかしい。
ファビオは何も感じてはいないようだ。
そのうち結婚式の準備でお祖母様に相談するという事も忘れてしまっていた。
そして今こんな状況になっている。
やっぱりあの嫌なモノが関係しているのだろうか。
ファビオに話しを聞きたい。
お祖母様に相談したい。
どうしてもっと早くお祖母様に相談しなかったんだろう。
でも私を狙った理由は何?
私が邪魔だということはファビオが関係してる?
ファビオのファン?
でも、警備隊ではなく近衛隊員全員があの嫌なモノを纏っていたなら、犯人は王族?
あー分からない。
何も情報がないから推理も出来ない。
そんな時、ドアがノックされた。
その後入ってきたのはお父様だった。
ドアを開けたお父様と目が合うと、
「ローラ⁉︎目が覚めたのか⁉︎」
と走り寄った。
「お…と、さま…」
お父様はすぐに水差しからグラスに水をいれ、私の身体を起こし水を飲ませてくれた。
「ハァ…ありがとう、お父様。」
「良かった、ローラ…」
お父様は泣きそうな顔をした後、私を優しく抱きしめてくれた。
「お父様、私、メイドに背中を押されたのです!」
「ああ、分かっている。マルコがそのメイドを見ていた。だが、すぐに姿をくらました。」
「そうですか…誰だったのですか?」
「見覚えのないメイドだったらしい。」
「知らない人間が潜り込んでいたという事ですか⁉︎」
「そのようだ。さっきマルコから連絡が来て、ファビオ殿が一度帰ってきたらしい。
お前に会いたかったらしいが、こちらにいる事がバレてしまうからと我慢して、また城に戻ったそうだ。
そして、今何が起こっているのかが分かった。」
お父様から聞いた話しは、ゾッとする話しだった。
「ローラ、もう一つ話しておかなければならない事があるんだ・・・・。」
そして、言い辛そうにお父様が告げた話しは、私を絶望させる事だった。
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