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隣国ディオリジへ
しおりを挟む「イヴァン、本当に、本当に済まなかった!
父として謝罪したい。
魅了されていたとはいえ、息子の嫁に手を出すなど許されない事をした。
そして、抗えぬ怒りで殴ってしまった事、
済まなかった。
自分で自分を殺してしまいたいほど、後悔している。
あんな小娘に良いようにされていたなど末代までの恥だ。
バーバラの事も裏切ってしまった。
夫として許されない事をした。
バーバラ、本当に済まなかった。
フェデリカにもジーノにも合わす顔がない父に成り下がった。
今まで生きてきて、こんな失態を犯す己を考えた事もなかった故、どうしていいのかすら分からない。
始めて死んでしまいたいと思った・・・。
だが、死んでも罪は許されない。
今からはこの国を滅ぼしかねないこの状況を打開すべく、国王として、夫として、父親として、裏切った信頼を取り戻すべく馬車馬のごとく働こう。
全てが終わった後、私の処遇を二人で決めてくれ。
済まなかった。」
とドナルド陛下は左の頬を赤くしてバーバラ様とイヴァン様に頭を下げた。
「父上・・・父上だけが悪いのではありません。
私もリンカの魅了に惑わされていたのです。
私だけでなく母上も臣下の皆、あの邪悪な力に今まで操られていたのです。
私も頭を掻きむしりたいほど、悔しく、怒りが湧きますが、後悔よりも先にこの好機を利用しない手はありません。
聖女様にすぐに連絡をとり、対策を練りましょう。
父上、私は謝りを認め、恥も外聞もなく頭を下げられる父上を尊敬しています。
母上は思う所もあるでしょうが、私は父上のような国王になりたいと思います。」
「イヴァン・・・ありがとう。」
「そうね…いつまでも怒っていてはダメね。
今はあの女をなんとかしないと。
ドナルド、今すぐ聖女様に連絡を。
イヴァンとファビオは隣国へ行って聖女様にお会いしなさい。
時間がないわ、今すぐ支度しなさい。
あの女が騒ぐ前に国を出なさい。後は私とフェデリカがどうにでもするわ。
あら?ジーノはどうしたのかしら?」
「ジーノは私の所におります。ハンカチを渡しましたので魅了は解けております。」
「ジーノも魅了されていたのね。あの女、王族に盾ついた事、死ぬほど後悔させてやるわ。」
国王、王妃、王太子が味方に付いた途端、一気に話しが進んだ。
この後、ジーノ様も呼び、王家勢揃いの中にポツンといた俺に、
「そういやファビオって奥様放っておいて良いの?連絡しないと離婚されるわよ!
聖女様に怒られたら協力してくれないんじゃないかしら。」
「いや待て。あの女の手駒がどこまで広がっているのか分からない。
下手に連絡すれば逆にローラ殿に危険が及ぶのでは?」
「危険があるなら知らせた方がいい。だがイヴァンの言う通りでもある。
この城からの手紙は危険だ。誰に手紙を託せば良いのかすら分からない状況だ。
ならば隣国から出せば良い。聖女様からも一筆添えてもらえば分かってくれるだろう。」
「そうね、今は早く聖女様にお会いするのを優先しましょう。」
「では、私とファビオは支度が出来次第出発します。父上は聖女様に急ぎ連絡を送って下さい。鷹を使えば私達より早いでしょう。」
「いや、鷹よりも通信石で隣国ディオリジ国の神殿に連絡して聖女ローズに伝えてもらおう。その方が早い。」
そして俺とイヴァン様はバーバラ様に必要な物を準備してもらっている間に、パウロに今の状況を説明する為ここにパウロを呼んでもらうよう手配してもらった。
国王の執務室に呼ばれたパウロは、王族勢揃いにギョッとしていたが、イヴァン様が説明するとホッとしていた。
「ファビオもフェデリカ様もとうとう堕とされたと思った・・・良かった~。」
「済まない、一気に話しが進んで、気が付けば王族の方々に囲まれていた。」
「とにかくあの妃殿下をどうにか出来そうなら一安心だ。
今、あの人は何かおかしいと思っている。
早い方がいい、多分人を使って探りを入れてる。さすがにここまでは誰も来れないだろうが、この国を出てしまえば大丈夫だ。
後は任せて行ってこい。」
そして、俺とイヴァン様、後宮警備のレオとアルベルトも加わり、馬でディオリジ国へと出発した。
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