一番悪いのは誰

jun

文字の大きさ
上 下
6 / 36

王太子執務室の会議

しおりを挟む


「俺さ、ここに来る度、思ってたんだよね…俺ってリンカの事、こんなに好きだったっけ?って・・・。でも、ここから出るとそんな疑問も無くなって何に悩んでたのか分からなくなってた。
でも、リンカがやたらとファビオ、ファビオ言うのが気になってて、ここにいる時には“絶対ファビオをリンカの側にいさせてはいけない”って思うんだけど、執務室を出た後は、嫉妬心でファビオをリンカの側に近付けないって気持ちに切り替わるんだ。
近付けないって事は共通してるのに、なんか感情がおかしくて…。
どう説明していいのかも分からなくて誰にも言えなかった…。」

「なるほど・・・私もイヴァン様のチグハグな感じがどうにも気になっていました。
言ってる事もやってる事も同じなのに、何だか思っている事がその時その時違った感じがしてたので。ようやく納得しました。」

「このハンカチを常に身に付けていたから俺達は何の違和感も抱かなかったのか・・気持ち悪!このハンカチどうすんの?」
とロジーニ。

「袋に入れて研究所に渡しましょう。
おそらく今まで沢山の人に渡しているでしょうね。その人達をどう勘付かれずに解除するかが問題です。
ハンカチを回収し、このハンカチを配れば良いですが、大量はありません。
ファビオの奥様でも、さすがに1日でこの刺繍は出来ないでしょうから…。」
とアルベルト。

「さっきフェデリカ様の所に行ってきた。
フェデリカ様はこのハンカチをとにかくイヴァン様に急いで渡せと言っていた。
イヴァン様の魅了が解けたら、隣国のローズ様に連絡を取ってもらって、ハンカチの代わりになるものはないか、聞いて欲しいと言っていた。」

「フェデリカがそんな事を…。俺は魅了にかかっていたとはいえ、実の妹を疑っていた。
あんなハンカチ一枚で・・・情けない・・」

「かなり強力な魅了だそうです、防具も付けていてなお、弾く事が出来ない程の力です。
妃殿下自身から出す魅了の力とハンカチの重ねがけですから、逆らう事は難しかったでしょう。結婚して閨も一緒です。
多分ギリギリの所でしたよ、イヴァン様は。」

「そういえばそうだよな、一緒に寝てたんだ。今は恐ろしくて一緒になんて無理だ。」

「イヴァン、急に態度を変えるのはかえって危険だ。
一緒に寝るのは体調が悪いと言って断れるが、会うのを拒絶はするな。」とアルベルト。

「分かってる。このファビオの奥方のハンカチがあれば耐えられる。なんとか頑張ってみる。」

「となると、あの毒物混入は自作自演?」
とロジーニ。

「だろうな。多分、ファビオを側に置いて魅了するつもりだったんだ、そしてパウロも。
何がしたいんだよ、あの女。」

あの溺愛は何処にいった⁉︎と思うほど、今では嫌悪感が半端ないイヴァン様の態度に笑いそうになる。

「しかし、自分に魅了されない奴がいるだけで毒飲むか?結構危なかったんだろ、妃殿下は。」
アルベルトまでも呼び方が変わった。

「ああ、危険な状態だったのは間違いない。
でもそうじゃなかったら、フェデリカを疑いはしなかっただろう。
あの二人の仲が悪いのは周知の事実だからな。やるならフェデリカしかいないって思わせたかったんじゃないか。」

「昔からそういうとこあったよな、リンカって。」
とうとう呼び捨てしだしたロジーニ。

「俺は会った時から苦手だった。なんか気持ち悪いし、不快としか思わなかった。
その時にはローラがいたし、ハンカチを持ってたからかもしれないが、近くに来たり触られたりすると鳥肌が立った。
ちなみに今もだ。」

「マジか⁉︎お前、顔色変えないし、表情に出さないから気付かなかった…」
と三人が同じような事を言った。

「俺だけが苦手なのかと思ってた。
人の好みはそれぞれだし、適当に躱してたし。」

「だから余計に意地になってるんじゃないか、あの人。一切靡くことなく他の女性と結婚したお前が気に入らないんじゃないか?」

ロジーニの言う事は納得出来る。
わざわざ結婚式の翌日に事を起こしたあの女が考えそうな事だ。

「俺の結婚式の翌日に毒を飲んだのは俺を呼び戻す為なんだろう。
自分に靡かないから毒を飲んだなんて下らない理由だったなら、ただの我儘で幼稚な幼子と同等。国母になどなれる存在ではない。」

「全くその通りだ、ファビオ。
だが、こちらに対抗する術がこのハンカチしかないのは心許ない。
早速聖女様に連絡をしよう。
後、父上と母上の分のハンカチを貸してもらえるだろうか、後で渡してくる。」

そこまでイヴァン様が話した時、執務室のドアが開いた。

陛下と近衛騎士数名と警備隊数名がなだれ込んできた。

「イヴァン!リンカから聞いたぞ!其方、リンカが毒を飲んで苦しんでいるにも関わらず、リンカの希望する騎士すら側に置くことを許さないとは、どういう了見なのだ!
命を狙われている王太子妃に妃が信頼する者を付かせずに誰をつけると言うのか!
この馬鹿者が!」

四人全員がハア⁉︎と思ったが、妃殿下に先を越されてたのが分かり、全員唇を噛んだ。















しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

うーん、別に……

柑橘 橙
恋愛
「婚約者はお忙しいのですね、今日もお一人ですか?」  と、言われても。  「忙しい」「後にしてくれ」って言うのは、むこうなんだけど……  あれ?婚約者、要る?  とりあえず、長編にしてみました。  結末にもやっとされたら、申し訳ありません。  お読みくださっている皆様、ありがとうございます。 誤字を訂正しました。 現在、番外編を掲載しています。 仲良くとのメッセージが多かったので、まずはこのようにしてみました。 後々第二王子が苦労する話も書いてみたいと思います。 ☆☆辺境合宿編をはじめました。  ゆっくりゆっくり更新になると思いますが、お読みくださると、嬉しいです。  辺境合宿編は、王子視点が増える予定です。イラっとされたら、申し訳ありません。 ☆☆☆誤字脱字をおしえてくださる方、ありがとうございます! ☆☆☆☆感想をくださってありがとうございます。公開したくない感想は、承認不要とお書きください。  よろしくお願いいたします。

2番目の1番【完】

綾崎オトイ
恋愛
結婚して3年目。 騎士である彼は王女様の護衛騎士で、王女様のことを何よりも誰よりも大事にしていて支えていてお護りしている。 それこそが彼の誇りで彼の幸せで、だから、私は彼の1番にはなれない。 王女様には私は勝てない。 結婚3年目の夫に祝われない誕生日に起こった事件で限界がきてしまった彼女と、彼女の存在と献身が当たり前になってしまっていたバカ真面目で忠誠心の厚い騎士の不器用な想いの話。 ※ざまぁ要素は皆無です。旦那様最低、と思われる方いるかもですがそのまま結ばれますので苦手な方はお戻りいただけると嬉しいです 自己満全開の作品で個人の趣味を詰め込んで殴り書きしているため、地雷多めです。苦手な方はそっとお戻りください。 批判・中傷等、作者の執筆意欲削られそうなものは遠慮なく削除させていただきます…

寡黙な貴方は今も彼女を想う

MOMO-tank
恋愛
婚約者以外の女性に夢中になり、婚約者を蔑ろにしたうえ婚約破棄した。 ーーそんな過去を持つ私の旦那様は、今もなお後悔し続け、元婚約者を想っている。 シドニーは王宮で側妃付きの侍女として働く18歳の子爵令嬢。見た目が色っぽいシドニーは文官にしつこくされているところを眼光鋭い年上の騎士に助けられる。その男性とは辺境で騎士として12年、数々の武勲をあげ一代限りの男爵位を授かったクライブ・ノックスだった。二人はこの時を境に会えば挨拶を交わすようになり、いつしか婚約話が持ち上がり結婚する。 言葉少ないながらも彼の優しさに幸せを感じていたある日、クライブの元婚約者で現在は未亡人となった美しく儚げなステラ・コンウォール前伯爵夫人と夜会で再会する。 ※設定はゆるいです。 ※溺愛タグ追加しました。

裏切られた令嬢は死を選んだ。そして……

希猫 ゆうみ
恋愛
スチュアート伯爵家の令嬢レーラは裏切られた。 幼馴染に婚約者を奪われたのだ。 レーラの17才の誕生日に、二人はキスをして、そして言った。 「一度きりの人生だから、本当に愛せる人と結婚するよ」 「ごめんねレーラ。ロバートを愛してるの」 誕生日に婚約破棄されたレーラは絶望し、生きる事を諦めてしまう。 けれど死にきれず、再び目覚めた時、新しい人生が幕を開けた。 レーラに許しを請い、縋る裏切り者たち。 心を鎖し生きて行かざるを得ないレーラの前に、一人の求婚者が現れる。 強く気高く冷酷に。 裏切り者たちが落ちぶれていく様を眺めながら、レーラは愛と幸せを手に入れていく。 ☆完結しました。ありがとうございました!☆ (ホットランキング8位ありがとうございます!(9/10、19:30現在)) (ホットランキング1位~9位~2位ありがとうございます!(9/6~9)) (ホットランキング1位!?ありがとうございます!!(9/5、13:20現在)) (ホットランキング9位ありがとうございます!(9/4、18:30現在))

結婚なんてしなければよかった。

haruno
恋愛
夫が選んだのは私ではない女性。 蔑ろにされたことを抗議するも、夫から返ってきたのは冷たい言葉。 結婚なんてしなければよかった。

その眼差しは凍てつく刃*冷たい婚約者にウンザリしてます*

音爽(ネソウ)
恋愛
義妹に優しく、婚約者の令嬢には極寒対応。 塩対応より下があるなんて……。 この婚約は間違っている? *2021年7月完結

【完結】聖女の手を取り婚約者が消えて二年。私は別の人の妻になっていた。

文月ゆうり
恋愛
レティシアナは姫だ。 父王に一番愛される姫。 ゆえに妬まれることが多く、それを憂いた父王により早くに婚約を結ぶことになった。 優しく、頼れる婚約者はレティシアナの英雄だ。 しかし、彼は居なくなった。 聖女と呼ばれる少女と一緒に、行方を眩ませたのだ。 そして、二年後。 レティシアナは、大国の王の妻となっていた。 ※主人公は、戦えるような存在ではありません。戦えて、強い主人公が好きな方には合わない可能性があります。 小説家になろうにも投稿しています。 エールありがとうございます!

完結 この手からこぼれ落ちるもの   

ポチ
恋愛
やっと、本当のことが言えるよ。。。 長かった。。 君は、この家の第一夫人として 最高の女性だよ 全て君に任せるよ 僕は、ベリンダの事で忙しいからね? 全て君の思う通りやってくれれば良いからね?頼んだよ 僕が君に触れる事は無いけれど この家の跡継ぎは、心配要らないよ? 君の父上の姪であるベリンダが 産んでくれるから 心配しないでね そう、優しく微笑んだオリバー様 今まで優しかったのは?

処理中です...