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王太子執務室の会議
しおりを挟む「俺さ、ここに来る度、思ってたんだよね…俺ってリンカの事、こんなに好きだったっけ?って・・・。でも、ここから出るとそんな疑問も無くなって何に悩んでたのか分からなくなってた。
でも、リンカがやたらとファビオ、ファビオ言うのが気になってて、ここにいる時には“絶対ファビオをリンカの側にいさせてはいけない”って思うんだけど、執務室を出た後は、嫉妬心でファビオをリンカの側に近付けないって気持ちに切り替わるんだ。
近付けないって事は共通してるのに、なんか感情がおかしくて…。
どう説明していいのかも分からなくて誰にも言えなかった…。」
「なるほど・・・私もイヴァン様のチグハグな感じがどうにも気になっていました。
言ってる事もやってる事も同じなのに、何だか思っている事がその時その時違った感じがしてたので。ようやく納得しました。」
「このハンカチを常に身に付けていたから俺達は何の違和感も抱かなかったのか・・気持ち悪!このハンカチどうすんの?」
とロジーニ。
「袋に入れて研究所に渡しましょう。
おそらく今まで沢山の人に渡しているでしょうね。その人達をどう勘付かれずに解除するかが問題です。
ハンカチを回収し、このハンカチを配れば良いですが、大量はありません。
ファビオの奥様でも、さすがに1日でこの刺繍は出来ないでしょうから…。」
とアルベルト。
「さっきフェデリカ様の所に行ってきた。
フェデリカ様はこのハンカチをとにかくイヴァン様に急いで渡せと言っていた。
イヴァン様の魅了が解けたら、隣国のローズ様に連絡を取ってもらって、ハンカチの代わりになるものはないか、聞いて欲しいと言っていた。」
「フェデリカがそんな事を…。俺は魅了にかかっていたとはいえ、実の妹を疑っていた。
あんなハンカチ一枚で・・・情けない・・」
「かなり強力な魅了だそうです、防具も付けていてなお、弾く事が出来ない程の力です。
妃殿下自身から出す魅了の力とハンカチの重ねがけですから、逆らう事は難しかったでしょう。結婚して閨も一緒です。
多分ギリギリの所でしたよ、イヴァン様は。」
「そういえばそうだよな、一緒に寝てたんだ。今は恐ろしくて一緒になんて無理だ。」
「イヴァン、急に態度を変えるのはかえって危険だ。
一緒に寝るのは体調が悪いと言って断れるが、会うのを拒絶はするな。」とアルベルト。
「分かってる。このファビオの奥方のハンカチがあれば耐えられる。なんとか頑張ってみる。」
「となると、あの毒物混入は自作自演?」
とロジーニ。
「だろうな。多分、ファビオを側に置いて魅了するつもりだったんだ、そしてパウロも。
何がしたいんだよ、あの女。」
あの溺愛は何処にいった⁉︎と思うほど、今では嫌悪感が半端ないイヴァン様の態度に笑いそうになる。
「しかし、自分に魅了されない奴がいるだけで毒飲むか?結構危なかったんだろ、妃殿下は。」
アルベルトまでも呼び方が変わった。
「ああ、危険な状態だったのは間違いない。
でもそうじゃなかったら、フェデリカを疑いはしなかっただろう。
あの二人の仲が悪いのは周知の事実だからな。やるならフェデリカしかいないって思わせたかったんじゃないか。」
「昔からそういうとこあったよな、リンカって。」
とうとう呼び捨てしだしたロジーニ。
「俺は会った時から苦手だった。なんか気持ち悪いし、不快としか思わなかった。
その時にはローラがいたし、ハンカチを持ってたからかもしれないが、近くに来たり触られたりすると鳥肌が立った。
ちなみに今もだ。」
「マジか⁉︎お前、顔色変えないし、表情に出さないから気付かなかった…」
と三人が同じような事を言った。
「俺だけが苦手なのかと思ってた。
人の好みはそれぞれだし、適当に躱してたし。」
「だから余計に意地になってるんじゃないか、あの人。一切靡くことなく他の女性と結婚したお前が気に入らないんじゃないか?」
ロジーニの言う事は納得出来る。
わざわざ結婚式の翌日に事を起こしたあの女が考えそうな事だ。
「俺の結婚式の翌日に毒を飲んだのは俺を呼び戻す為なんだろう。
自分に靡かないから毒を飲んだなんて下らない理由だったなら、ただの我儘で幼稚な幼子と同等。国母になどなれる存在ではない。」
「全くその通りだ、ファビオ。
だが、こちらに対抗する術がこのハンカチしかないのは心許ない。
早速聖女様に連絡をしよう。
後、父上と母上の分のハンカチを貸してもらえるだろうか、後で渡してくる。」
そこまでイヴァン様が話した時、執務室のドアが開いた。
陛下と近衛騎士数名と警備隊数名がなだれ込んできた。
「イヴァン!リンカから聞いたぞ!其方、リンカが毒を飲んで苦しんでいるにも関わらず、リンカの希望する騎士すら側に置くことを許さないとは、どういう了見なのだ!
命を狙われている王太子妃に妃が信頼する者を付かせずに誰をつけると言うのか!
この馬鹿者が!」
四人全員がハア⁉︎と思ったが、妃殿下に先を越されてたのが分かり、全員唇を噛んだ。
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