一番悪いのは誰

jun

文字の大きさ
上 下
5 / 36

王女の味方

しおりを挟む


突然後宮に押しかけた俺を、部下の近衛騎士が、
「隊長、先触れもなしに押しかけては駄目ですよ!どうしたんですか?」と後宮担当のゾルジが驚いている。

「至急フェデリカ様にお目通り願いたい。
ハンカチの件と言ってくれれば分かる。聞いてきてはくれまいか?」
と頼むと、
「あ!ローラ様のハンカチ!分かりました、聞いてきます!」と言って同じ後宮担当のレオが走って行った。

「何かあったんですね、隊長。」

「お前達は知ってたのか?魅了の事を。」

「はい、ここの担当になってすぐにフェデリカ様に聞きました。
隊長にはまだ言うなと言われていました。」

「そうか・・・隊長として情けないな…。」

「いえ、隊長が魅了にかかってはいないとフェデリカ様も言っていましたが、まだハッキリと断定は出来ないからと言っていました。
あれだけ毎日近くにいては多少の影響はあるのではないかと。」

「そうか・・・おかしいとは思っていたが、深く追求しなかった…済まない。」

「アレ、かなり強烈らしいですから、多少影響が出てたから追求しなかったんだと思います。ここにいる人間は全員大丈夫ですから安心して下さい。」

「そんなに魅了に掛かっているのは多いのか⁉︎」

「王太子宮はほぼ駄目ですね。でも、ローラ様のハンカチを持っている人は数人いるみたいです。
イヴァン様は時間ないですね。辛うじて完全には堕ちてないって感じらしいです。」

そこへさっき走って行ったレオが戻ってきた。

「隊長、フェデリカ様から許可が出ました。
こっちです、ご案内します!」
と俺を呼んだ。

「ゾルジ、ありがとう。これからもフェデリカ様を頼む。」

「了解です!」と良い笑顔で返事をした。

レオに案内され、かなり奥にまで来ると、

「ここです。」と言ってドアをノックした。

「フェデリカ様、ファビオ隊長をお連れしました。」

「入ってもらって」と中から返事がしたので、

「ファビオ・ギルディー、入ります。」
と言ってから入った。

中へ入ると、フェデリカ様の双子のジーノ様もいた。

「ファビオ、ようやく気付いたのね、良かった、貴方だけ微妙だったのよ。
ジーノは貴方から貸してもらったハンカチで元に戻ったの。」

「え⁉︎ジーノ様も魅了に⁉︎」

ジーノ様が、
「ああ、今まであの人の魅了で側に侍らされてた。フェデリカがハンカチを顔に押し付けた時に頭の中の靄が晴れた。
だが、自分の部屋に行くとまだモヤモヤするからここに避難した。」
と話してくれた。

「ジーノは完全には魅了を抜け出せてないの。何が原因なのか分からない。
ジーノはちゃんと防具をつけてるのに防御出来ない。
でもローラのハンカチがあればとりあえずは以前のようにはならないみたいなの。
部屋に何か仕掛けられてるのか、それとも余程強い魅了をかけられてるのかがまだ分からないから、ここで話しを聞いてるのよ。
ファビオはどうして気付いたの?」

俺はウルーシとロレンの話しを聞いて、ようやく気付いたと説明した。

「あそこそんなに酷いのね…。私はあの部屋に入った事はないの。
あの人自身から出ているから持って生まれたって事は確かなんだろうけど、防具がほとんど効かないのが問題よね…。
お兄様はほとんど魅了されてるし…。
お父様もお母様も私の話しを聞かないからあの人の術に掛かってるんでしょうね。」

「イヴァン様は執務室にいる時だけ、以前のイヴァン様に近いのです。
おそらく執務室の引き出しにローラのハンカチが入っているのだと思います。
それさえ身に付ければまだなんとかなるのではないかと。」

「お兄様、ローラ様のハンカチを持っているの⁉︎」

「私が一枚お渡ししました。刺繍が見事だから欲しいと言われて。」

「良くやったわ、ファビオ!まだお兄様は間に合うわ!今すぐお兄様にハンカチを身に付けるように言ってちょうだい!早く!」

「イヴァン様は王妃様の所へ行って侍女を一人妃殿下に回してもらうと言っておりました。」

「お母様の所・・・とりあえずお兄様の執務室に行って。
あ、ファビオは何枚ハンカチを持っているの?」

「二十枚ほどかと。」

「自分の予備に数枚残して、残りをお兄様の側近に一枚ずつ渡してもらえないかしら?
普段使いのハンカチは私で用意するから。
そのハンカチはお守りとして持つようにしてもらって欲しいの。
もしお兄様が正気になったら聖女様に連絡を取ってもらうわ。
何かハンカチの代わりになるものがないか聞いてもらいましょう。
とにかく急いで、ファビオ!」

そう言われ、急いでイヴァン様の執務室へ向かわされた。

しかしジーノ様も国王も王妃までもとは…国を乗っ取るつもりなのか。
とにかく自分の執務室へと走った。
引き出しの箱を持ち、イヴァン様の執務室へ行くと、イヴァン様は居なかったが側近の次期宰相と言われているアルベルト・バルダートと同じく側近のロジーニ・バーサが執務をしていた。

「あれ?ファビオはリンカ様に付いてるんじゃないの?」とロジーニ。

「俺とパウロの交代制になった。イヴァン様はまだ戻られないのか?」

「まだ戻ってない。それよりその箱はなんだ?」
アルベルトは俺の箱が気になったようだ。

「ハンカチだ。とりあえず渡す。これを毎日使わずに身に付けろ。」
と言い、二人に渡すと急に黙ったまま固まった。

「これは何だ⁉︎」
「これ何⁉︎」
と驚いて俺を見た。

「これは俺の妻が刺繍したハンカチだ。
このハンカチを持っていると魅了の術が解除出来るらしいが、完全には抜けないらしい。
俺はちなみに一度も掛かっていない。」

「魅了ってマジか・・・通りで…。
好きでもなかったリンカ様をある日から好ましく思うようになった。」

「俺もだ。あの日・・・俺達三人でハンカチを貰ったんだ、その後から・・・・」

「「「ハンカチ⁉︎」」」

「お前達それ今でも持ってるのか?見せろ!テーブルに置け!」

二人がハンカチをテーブルに置いた。

「このハンカチは加護が付いてるから使わずにお守りとして持っていて欲しいって言われて渡された…」

「このハンカチの刺繍・・・薬を盛った侍女も持ってた。」

「どうしてお前だけ持ってないんだよ!」とロジーニが聞く。

「ローラ以外からは何も受け取らないと決めている。」

「お前は昔からローラ嬢一筋だよな、でもそのおかげで助かったんだな。
しかしどうして今になって発覚したんだ?」

今日まであった事を二人に説明していた時、
イヴァン様が戻ってきた。
三人がいるのに驚いたイヴァン様が立ち尽くしていた。
俺達三人は持っていたハンカチをイヴァン様の顔に押し付けた。

そして、

「アレ?めっちゃ頭がスッキリした…。何コレ?」



それから俺は今までの事をもう一度説明した。

これでフェデリカ様に強い味方がついた・・・と思う。















しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

うーん、別に……

柑橘 橙
恋愛
「婚約者はお忙しいのですね、今日もお一人ですか?」  と、言われても。  「忙しい」「後にしてくれ」って言うのは、むこうなんだけど……  あれ?婚約者、要る?  とりあえず、長編にしてみました。  結末にもやっとされたら、申し訳ありません。  お読みくださっている皆様、ありがとうございます。 誤字を訂正しました。 現在、番外編を掲載しています。 仲良くとのメッセージが多かったので、まずはこのようにしてみました。 後々第二王子が苦労する話も書いてみたいと思います。 ☆☆辺境合宿編をはじめました。  ゆっくりゆっくり更新になると思いますが、お読みくださると、嬉しいです。  辺境合宿編は、王子視点が増える予定です。イラっとされたら、申し訳ありません。 ☆☆☆誤字脱字をおしえてくださる方、ありがとうございます! ☆☆☆☆感想をくださってありがとうございます。公開したくない感想は、承認不要とお書きください。  よろしくお願いいたします。

2番目の1番【完】

綾崎オトイ
恋愛
結婚して3年目。 騎士である彼は王女様の護衛騎士で、王女様のことを何よりも誰よりも大事にしていて支えていてお護りしている。 それこそが彼の誇りで彼の幸せで、だから、私は彼の1番にはなれない。 王女様には私は勝てない。 結婚3年目の夫に祝われない誕生日に起こった事件で限界がきてしまった彼女と、彼女の存在と献身が当たり前になってしまっていたバカ真面目で忠誠心の厚い騎士の不器用な想いの話。 ※ざまぁ要素は皆無です。旦那様最低、と思われる方いるかもですがそのまま結ばれますので苦手な方はお戻りいただけると嬉しいです 自己満全開の作品で個人の趣味を詰め込んで殴り書きしているため、地雷多めです。苦手な方はそっとお戻りください。 批判・中傷等、作者の執筆意欲削られそうなものは遠慮なく削除させていただきます…

寡黙な貴方は今も彼女を想う

MOMO-tank
恋愛
婚約者以外の女性に夢中になり、婚約者を蔑ろにしたうえ婚約破棄した。 ーーそんな過去を持つ私の旦那様は、今もなお後悔し続け、元婚約者を想っている。 シドニーは王宮で側妃付きの侍女として働く18歳の子爵令嬢。見た目が色っぽいシドニーは文官にしつこくされているところを眼光鋭い年上の騎士に助けられる。その男性とは辺境で騎士として12年、数々の武勲をあげ一代限りの男爵位を授かったクライブ・ノックスだった。二人はこの時を境に会えば挨拶を交わすようになり、いつしか婚約話が持ち上がり結婚する。 言葉少ないながらも彼の優しさに幸せを感じていたある日、クライブの元婚約者で現在は未亡人となった美しく儚げなステラ・コンウォール前伯爵夫人と夜会で再会する。 ※設定はゆるいです。 ※溺愛タグ追加しました。

裏切られた令嬢は死を選んだ。そして……

希猫 ゆうみ
恋愛
スチュアート伯爵家の令嬢レーラは裏切られた。 幼馴染に婚約者を奪われたのだ。 レーラの17才の誕生日に、二人はキスをして、そして言った。 「一度きりの人生だから、本当に愛せる人と結婚するよ」 「ごめんねレーラ。ロバートを愛してるの」 誕生日に婚約破棄されたレーラは絶望し、生きる事を諦めてしまう。 けれど死にきれず、再び目覚めた時、新しい人生が幕を開けた。 レーラに許しを請い、縋る裏切り者たち。 心を鎖し生きて行かざるを得ないレーラの前に、一人の求婚者が現れる。 強く気高く冷酷に。 裏切り者たちが落ちぶれていく様を眺めながら、レーラは愛と幸せを手に入れていく。 ☆完結しました。ありがとうございました!☆ (ホットランキング8位ありがとうございます!(9/10、19:30現在)) (ホットランキング1位~9位~2位ありがとうございます!(9/6~9)) (ホットランキング1位!?ありがとうございます!!(9/5、13:20現在)) (ホットランキング9位ありがとうございます!(9/4、18:30現在))

結婚なんてしなければよかった。

haruno
恋愛
夫が選んだのは私ではない女性。 蔑ろにされたことを抗議するも、夫から返ってきたのは冷たい言葉。 結婚なんてしなければよかった。

その眼差しは凍てつく刃*冷たい婚約者にウンザリしてます*

音爽(ネソウ)
恋愛
義妹に優しく、婚約者の令嬢には極寒対応。 塩対応より下があるなんて……。 この婚約は間違っている? *2021年7月完結

政略結婚の約束すら守ってもらえませんでした。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 「すまない、やっぱり君の事は抱けない」初夜のベットの中で、恋焦がれた初恋の人にそう言われてしまいました。私の心は砕け散ってしまいました。初恋の人が妹を愛していると知った時、妹が死んでしまって、政略結婚でいいから結婚して欲しいと言われた時、そして今。三度もの痛手に私の心は耐えられませんでした。

完結 この手からこぼれ落ちるもの   

ポチ
恋愛
やっと、本当のことが言えるよ。。。 長かった。。 君は、この家の第一夫人として 最高の女性だよ 全て君に任せるよ 僕は、ベリンダの事で忙しいからね? 全て君の思う通りやってくれれば良いからね?頼んだよ 僕が君に触れる事は無いけれど この家の跡継ぎは、心配要らないよ? 君の父上の姪であるベリンダが 産んでくれるから 心配しないでね そう、優しく微笑んだオリバー様 今まで優しかったのは?

処理中です...