私の婚約者の苦手なもの 番外編

jun

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新婚旅行編

ロナルド視点

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リリーの妊娠が分かってからは、とにかくリリー優先にしていたら、ルイにもサイモンにもリリー本人にも怒られた。

ルイは、
「お前な~過保護にするのも限度があるぞ。妊娠初期は分かるが、もう安定期に入っただろ?いい加減リリーちゃんを外に出してやれ!」

サイモンには、
「いくらなんでも外出させないのはリリーナちゃんが可哀想だ。逆に体調崩すぞ。」

そしてリリーは、
「ロイ、心配してくれるのは嬉しいけど、もうある程度動かないとダメだってお医者さんも言ってたから外に出ても大丈夫だよ。
ロイも心配し過ぎてハゲてきちゃうよ。ハゲは嫌いじゃないけど、ロイがハゲるのは嫌!」

と言われ、泣く泣く外出を許可した。


だって、リリーは目を離すとすぐ高い所の物も取ろうとするし、走ろうとするし、重い物も持とうとするし、甘い物をバクバク食べるし、ご飯もバクバク食べるし…
だから、心配で心配で…。

母上に、
「ロナルド、あなた、ちゃんと私があげた本読んだの?あれにちゃんと父親の心得が書いてあったでしょ!
過保護にし過ぎても、放っておいてもダメなの!
でも、母親っていうのは強いし、お腹の赤ちゃんも強いのよ!
それに比べてあんたはどうなの?
オロオロしてるだけ!
もっとちゃんと勉強しなさい!
出産になった時そんなだったら外に放り出すからね!」
と怒鳴られた。

父上には、
「ロナルド、俺もお前の気持ちは分かる。
分かるけれども、お前のはやり過ぎ。
心配なのも分かるが、もっとリリーを信頼してあげなさい。
お前がそんなじゃ、相談したい事があっても話してくれなくなるぞ。
これは経験談だ。
リリーを安心させるのがお前の役目なんだから、逆に不安にさせてどうする!
みんな付いてる、だからロナルドも安心しなさい。」
と言ってくれた。

さすが父上だ。

それからの僕は本を読み漁り、父親教室なるものにも参加した。
そのおかげでパパ友なるものも出来た。
リリーのお腹が張れば撫で、腰が痛いと言えば摩り、お腹を撫でては、赤ちゃんに話しかけた。
リリーといる時は必ず手を繋ぎ、お風呂は絶対一緒に入った。
僕がいない時は誰かがついてくれるように頼んだ。

段々大きくなっていくお腹。
ここに僕達の赤ちゃんがいるのかと思うと、泣きたくなるほど嬉しい。

たまにポコンと蹴ったりパンチしたりしていて、とても元気だ!

リリーは、
「おふッ」とか、「ぐえッ」とか蹴られる度に声をあげているが、楽しそうだ。


二人で、名前を考えるのが最近は楽しくて仕方ない。

男の子の名前、女の子の名前、たくさん考えて、あーだこーだとリリーと布団に入って話すのが今、一番の幸せだ。

妊娠も後期に入った頃、リリーは怒りっぽくなった。
大きくなったお腹が動きに制限をかける。
物を落とすと取るのも一苦労だし、歩くのも寝るのも大変そうだ。

だからずっとお腹を撫でてあげて話しかけた。
「僕が産んであげれたら良かったんだけど、出来なくてごめんね」
と言ったら、リリーは大笑いしていた。

だって、本当に変わってあげたかった。
これから僕には想像出来ない位の激痛の中、出産するんだ、リリーは。

どんどん近づいてくる出産日…。

嬉しいけど、怖い…。

父上に相談した。

「父上、たくさんの本を読みました…。出産の話しも読みました…。
読めば読むほど怖いです…。
もしリリーと赤ちゃんに何かあったらと…。」


「ロナルド、絶対大丈夫だとは言えない。
だが、そんな事がないように、みんなが準備をしているんだ。それは出産するリリーもそうだ。
ロナルドがそんな顔をしていたらシェリルに追い出されるぞ。
父も母も付いている、安心しなさい。」


リリーが妊娠してから、父上と話す事が増えた。
母上は女性なのでやっぱり父上を頼ってしまう。そして、父上の頼もしさを実感した。
僕ももうすぐ、父親になるのに父上のようになれるのだろうか…。
また、不安になってきた…。

「ロナルド、顔に出ているぞ、不安だって。リリーもロナルドも初めての事で不安になるのは当たり前だ。
でもお前達の周りには父親や母親がたくさんいるだろう?
その時は誰でもいいから頼りなさい。
困った時、悩んだ時、私でもアランでもイアンでもヘンリー様でも誰でもいい、相談しなさい。
だから大丈夫だ、ロナルド。私もお前が産まれる時は、何の役にも立たないほど狼狽えた。
お前が生まれて、泣いていてもどうして泣いているのか分からなくてオロオロした。
だんだん一緒にいれば何をして欲しいのか分かるようになるんだ。
それが嬉しくて何でもやってあげたくなった。
お前はよく笑う可愛い子だった。
大事な大事な俺とシェリルの赤ちゃんが今や父親だ。
子供が大きくなるのはあっという間だぞ。
今、この時から同じ時はないんだ。
だから心配するのも大切だが、楽しみなさい。お前の赤ちゃんがもう近くにいるんだ。
耳も聞こえている。
たくさん話してあげなさい。
待ってるからと言ってあげなさい。
ちゃんと聞いてくれて、すぐ出てきてくれる筈だ。お前がそうだったから。
さあ、リリーの所に戻ってあげなさい。」

「父上・・・ありがとう。父上が僕の父親で良かった!」


父上…ありがとう…。
もう落ち着いた!
そうだ、まだお腹の中だけど、すぐそこにいるんだ、赤ちゃんが。
お腹を撫でれば手を合わせるように押してくる君。
ごめんね、父親の僕が君を不安にさせちゃダメだよね。
父様は君と君の母様を守るからね!
だから、元気に出てきてね。
母様をいじめないでね。



そして、リリーの出産が始まった。












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