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新婚旅行編
シュバイン家兄弟の悩み
しおりを挟む「兄上、今日はどうしたんですか?珍しいですね、イアンの所ではなくこっちに呼び出すなんて。」
「アラン、大変だ。父上が母上からのお願いだから手紙を書けと言ってきた。」
「誰に?父上?」
「違う!母上にだ!」
「どうして急に?母上、そんなに体調悪いんですか?大丈夫なんですか?」
「母上は風邪が長引いてるだけだから大丈夫だ。」
「だったらどうして手紙?」
「イアンが母上に手紙を書いたんだ。多分それで俺達からは貰った事がないと思ったんだろう。」
「なんでイアンも急に母上に手紙なんて書いたの?」
「母上の体調が悪いと言ったら、心配していたからイアンが手紙でも書いたら元気になるって言ったんだ。」
「それでイアンは母上に書いたんだね。イアンは母上の事、大好きだからね。」
「そうだな、イアンは母上をもう一人の母だと言っていた。アランとは双子の兄弟だとさ。」
「イアンと俺が?アハハ、兄とも弟とも言えないから双子ときたか、イアンらしいね。」
「退位したらここで世話してくれって言ってたぞ。」
「アイリスどうすんだよって話だよな、それはそれで楽しそうだけど。」
「そんな事より手紙だ。お前、母上に手紙の一つも出した事ないのか?」
「ないよ~感謝はちゃんと言葉で伝えてるよ!」
「形に残しておきたいんだろう。明日、父上が取りにくる。」
「嘘⁉︎今日中に書かなきゃダメじゃないか!兄上は書いたの?」
「書いてないからアランを呼んだんだ。」
「じゃあ、書こうよ。」
「そんなすぐ書けるのか?」
「だって母上の体調が良くなりますようにとか、いつもありがとうとか書けば良いんでしょ?書くよ。」
「お前は・・・まあいい。俺も書く。」
カリカリカリカリ・・・・
「出来た!」
「早!もう書けたのか?」
「書けたよ。ちょっと読むからこれで良いか兄上、確認して。」
「ああ、読んでみろ。」
「では…
『親愛なる母上へ
体調が優れないと聞きましたが、お見舞いにも行かず申し訳ございません。
その後体調はいかがですか?
今度マリアを連れて母上に会いに行こうと思います。
早く体調を治して、イアンに会いに王宮へ行きましょう。
昔のように、兄上の忘れ物を届けに来たと大量のお菓子を土産に、イアンの所に行って驚かしてやりましょう!
驚いてイアンは泣くかもしれませんよ。
母上、いつまでも長生きして下さいね。
アランより』
どうよ!」
「アランらしくて良いと思う。」
「兄上は書けたの?」
「・・・まだだ。」
「何悩んでるの?母上への思いを書けばいいんだよ?」
「お前のように素直な文章を書いた事がないからな…。」
「堅くても兄上が書いてくれた事なら母上は嬉しいと思うよ。試しにちゃちゃっと書いてみて。」
「ちゃちゃっとって…」
「ほらほら、例えば、“風邪をひかれたと聞きました。お見舞いにも行かずすみません”とか。」
「なるほど!次は?」
「“仕事が片付き次第顔を見に行きたいと思います”とか。」
「それから?」
「“陛下も母上をとても心配しておりました”とか。」
「なるほどなるほど。」
「ねえ、兄上・・・俺が言った事書いてるよね?」
「これは例文として書いているだけだ!」
「もう~兄上は義姉上に手紙書いたことないの?」
「昔、書いたことがあるが、婚約者と母上とでは違うだろ。」
「そんな事ないよ、好きな人に書くのは変わらないでしょ?」
「言われてみればそうかも。」
「さあ、頑張って!」
「書いてみる。」
カリカリカリカリ・・・・
「出来た!」
「お!兄上、読んで下さい。」
「嫌だ!」
「どうして?」
「恥ずかしいだろ!」
「さっき俺のは読ませたくせに!」
「あの時はアランが読むから聞いてくれと言ったんだ!」
「俺だって兄上がなんて書いたか気になるよ!」
「絶対、嫌だ!」
「そんなに恥ずかしい事書いたの?」
「書いてない!」
「だったら良いじゃない!」
「それでも嫌だ、第一、手紙を読むなど失礼極まりないぞ!」
「うわあ…俺の手紙は普通に朗読させたくせに…。」
「五月蝿い!ほら、寄越せ、明日父上に渡すから!」
「嫌だ!兄上が読んでくれないなら渡さない!」
「怒られるのはお前だぞ!」
「父上からは逃げる!」
「逃げれる訳ないだろう!あの人は逃げれば逃げるほど喜んで追いかけるぞ!」
「そうだった…だったらリリーのとこに逃げる!」
「それはずるいぞ!リリーがいたらそれまでの怒りがなくなるんだから!」
「だったら自分で母上に渡してくる!」
「だったら俺も行く!お前がある事ない事言わないように俺もついていく!」
「兄上こそ、ない事ない事ばっかり報告するくせに!」
「これから行くぞ!」
「兄上、行きますよ!」
その日の夜の馬車の中・・・・
「兄上…母上は痩せていました…」
「ああ、あんなに痩せていただろうか…」
「どうして会いに行かなかったのかな…あんなに喜ぶならもっと会いに行けば良かった…」
「本当だな…これからは母上にちょくちょく会いに行こう。」
「うん…イアンも連れて行きたいな…」
「イアンはさすがに無理だろう…。母上が元気になったら、イアンに会えるようにするよ。」
「うん…兄上…母上は大丈夫ですよね?」
「大丈夫だ。元気になって食事もちゃんと取れるようになったら、また元気になる。」
「そうだよね…俺、母上の好きな物たくさん送るよ!」
「あまり送り過ぎても困らせるだけだ。程良くな!」
「はい…。」
「また、一緒に手紙を書こう。イアンにも言っておく。」
「うん、三人で書こう。」
母に会っていなかった事を心から反省した夜でした。
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