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新婚旅行編
ヘンリー視点
しおりを挟む父上達がまた姿絵を頼んだと聞いて、俺も欲しいなと思った。
誰が一緒に描いても良いといってくれるだろうか…。
サイモンも欲しいと言っていたので大丈夫だろう。
トーマスも喜んで仲間に入るだろう。
ハンスも入りそうだ。
ルイは入れるから良いとして、ロナルドは入ってくれるだろうか…。
嫌がりそうだなぁ…。
ルイが帰ってきてから頼もうか…。
でも、サイモンに“姿絵をシンシア嬢に頼んでもらえないか”と頼むのは癪だ。
かと言って、シンシア嬢に俺が頼むのもどうだろう…。
先ず、俺に言えるだろうか…一緒に姿絵に描いてもらわないかと。
言えない。
言えない…今まで孤高こそが俺の理想だったのだ、そうして来たんだ、今まで。
それを今更何を言ってると思われるよな…。
でも、最近は一人では駄目なのだと漸く分かった。
リリーナやロナルドの奇想天外な発想があったからこそ、ルイはあの危機を乗り切ったのだから。
サイモンがルイを手助けしていたから最悪の事態にはならなかったのだ。
皆が自分の為に行動してくれたから、ルイは嬉しくて泣いたのだ。
一人で判断し決定しなければならない事も王となったら多々あるだろう。
その時々で、間違えそうになったり、落ち込み倒れそうになった時、誰かがいてくれたら倒れる事はないのだと気がついた。
だから、父上の側近達のような信頼出来る者達が必要だと理解した。
いつもワチャワチャしているだけではなく、いざという時に頼りになる父上の友人達。
そういった者達が今、俺の周りにいる。
ならば、俺も姿絵欲しがっても良いのでは?
サイモンも欲しいと言っていた。
ひょっとしたらすでに頼んでいるかもしれない。
だったら、態々言わなくてもいいか!
でもな~言ってなかったら…
この思考を繰り返した数日後。
「ヘンリー、良いものあげよう。」
とサイモンが何かを渡してきた。
これは!
ひょっとしてアレか!
ガサガサと開けてみると、
「何コレ?クッキー?」
「疲れたかと思って、甘い物でもと。」
「・・・あーーー、ありがとう…」
「プッ」
「なんだ!何が可笑しい!」
「本物はこっち。」
「⁉︎」
今度は慎重に開けると、
「あ!」
「ヘンリー、欲しかったんでしょ?」
「ああ、でも、なかなか描いてくれと頼めなかった…誰も欲しがりもせず、一緒に描かれるのも嫌だと言われたらと思って言えなかった…。あ!クロも描いてあるじゃないか!」
「そんな弱気でどうすんの?そんな事思ってたから最近元気なかったのか?バッカだな~一言欲しいって言えばいいのに。」
「バカはまだしも、バッカはやめろ!」
「ヘンリー、お前、身内以外、自分は誰からも好かれていないと思ってるだろ?」
「・・・思っている。父上のようにユーモアもないし、ルイのように愛嬌もない。
笑う事も少ない俺に付いてくる者はいないのではないかと思っていた。」
「だから、バッカなの。前にも言ったけど、お前が壁を作って近付かせなかっただけで、皆、お前を構いたくて仕方ないの。
そのお前が壁を無くしたのなら、一斉に寄ってくるぞ、覚悟しておけ。」
「そう…なのか?」
「そうなの!」
「そうか…。ん?ちょっと待て!構うって何だ?」
「一度、ここにみんな来た事あっただろ、それで気がついたらしいぞ、ヘンリーは可愛いと。」
「可愛い⁉︎可愛い⁉︎どう言う事だ!」
「お前が言う事やる事全て、挙動が可笑しかったから、あの場にいた全員、目を付けた。シンシアは“生まれて初めて王子様を見た。今まで見ていた王子は王子ではなかった”と感動していたぞ。」
「プッ…何だそれ?ルイは王子ではなかったか…アハハハ、そうか、一言位しか話さなかったのにな。」
「愛されキャラって事だ。
だからお前は一人ではないし、一人にはしない。」
「・・・嬉しいな、何だか。」
「喜べ喜べ!おそらく殿下も向こうで喜んでる。」
「ルイも知らなかったのか…喜んでるだろうな。」
「多分な。お前は照れ屋だから、俺がいたら素直に喜ばないから行くわ。じっくり喜びを噛み締めろ。」
と言って、サイモンはいなくなった。
クソッ、読まれてるのが悔しいが、
「オオオオオーーーーーーー!」
そうか…俺は一人ではないんだな…
友とは有り難いものなのだな…
ルイが泣いた気持ちも分かったよ…
俺も泣きそうだ…
ありがとう…サイモン…。
みんな…ありがとう。
俺は、父上のように、皆を愛し、守れる国王になれるよう努力していくから付いてきてくれ。
後でルイの所に行こう、そしてこの喜びを皆に教えよう。
凄く嬉しい、ありがとう、と。
応援ありがとうございます!
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