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新婚旅行編
ルイジェルド視点
しおりを挟む今日は俺とカトリーヌの結婚式だ。
本来なら去年婚約したのなら後二、三年先になるが、カトリーヌの驚くほどの知識量と並々ならぬ努力で王子妃教育を終了させ、教える事がないとなり、結婚となった。
俺にとっては嬉しい限りだ。
思えば色々あった…。
カトリーヌを初めて見た時は拳から血を流していた。
二度目は、リリーちゃんを襲った女子生徒に殺気を放っていた。
“トリーちゃん”と呼んでいた頃は、よくロイとリリーちゃんに跪いていたっけ…。
そんな事を考えているうちに、俺の準備は終わった。
聞いていた時間よりもだいぶ早くから支度が整えられ、今は大聖堂の控室にいるのだが、
大勢の人がいて、緊張感もへったくれも無いほど五月蝿い…。
王族の控室とイーガー家の控室は別のはずなのに全員が王族側にいる…。
それにグランディ家もワソニック家も…。
ついでに、代理ことシンシアも…。
女の子はカトリーヌの所に行きなさいよと言ったら、泣いてしまうから行ってはダメなんだとか。
なるほど…リリーちゃんも代理も号泣しそうだし、つられてカトリーヌも号泣しそうだ。
卒業式のようになっては大変だ。
そして、大人達…。
なんだろう…この普段となんら変わらない緊張感の無さ…
兄上の時は、もっとピリピリしていたような…。
父上なんてアラン殿の肩をバンバン叩きながら笑っている…。
母上はマリア殿やシェリル夫人、ジュリア殿とアハハオホホと楽しげだ。
兄上は義姉上とユージン、サイモンとシンシアとなんだか揉めながらも楽しそうだ。
あれ?俺なんで一人でポツンとしてるんだろう…。
普通、みんな声かけてくるんじゃないの?
おめでとうとか言ってくれるんじゃないの?
そういえばロイとリリーちゃんは?と思い見渡してみれば、
壁側でなにやらコソコソ話している…。
寂しい…。
カトリーヌにはまだ会えないし…。
ロイ達を見ると、目を逸らされた…。
え?なんで?
クソ、近くに行ってやる!
あ!逃げた!
何だよ、何なんだよ!
ん?
視線を感じ、そちらを見ると兄上達も目を逸らした。
・・・・何か企んでるな。
俺だってお前らとは付き合いが長いんだ、それくらい分かるぞ。
ま、リリーちゃん辺りが率先して計画を練っているんだろう。
一体何をする気だ。今日、結婚式だぞ!
他国からの招待客も沢山いる。
その後の結婚披露パーティーには国内の貴族がほぼ出席している。
ヤダ、怖いんですけど!
何する気なんだ!
あの子、突拍子もない事考えるから怖い!
誰か、誰か助けて!
『ルイ、大丈夫?』
クロ!
“クローーおまえだけだよ、俺を気にかけてくれるのは!”
『ルイ、お嫁さんもらうの?』
“そうだよ、クロはまだカトリーヌには会ってないよな”
『リリーナに、絵を見せてもらった。サイモンにも』
“あーーーなるほど。その子が俺のお嫁さんだ”
『ルイ、おめでとう、またね』
“クロ、ありがとう”
クゥーーー、クロは良い子だなぁ!
良し!クロのお陰で気持ちも落ち着いた。
さあ、式場でカトリーヌを待とうと立ち上がると、
「ルイ、おめでとう、頑張れ!」
「ルイ、俺は止めたんだぞ。」
「ルイ、私は楽しみよ。」
「ルイジェルド様、応援していますね。ユージンも応援してますよ。」
「ア、ア、アウ、ウー」
「殿下、楽しませて下さいよ。」
「殿下、私、出せる力をすべて出しました!」
「殿下、負けないで。立ってるの辛いから早めに終わらせてね。」
「殿下、あの子達は本気よ、頑張れ!」
「殿下、俺も混ざれば良かったよ、俺は信じてるぞ!」
「殿下、時間決められてるんで、気合い入れて下さいよ!」
え?応援されてる?え?今から結婚式じゃないの?
何が始まるの?
そして、
「ルイジェルド殿下、ご案内致します」
と式場に案内されているが、開始時間よりもかなり早い。
とりあえず、ついて行き聖堂の大扉が開くとそこには、
全員が男女問わず真っ白なドレスを着てベールを被った、白装束が大勢いた。
は?
「只今より、本物は誰だ!私がカトリーヌよ、いや俺がカトリーヌだ、いいえ、わたくしが本物のカトリーヌです!
題して、
『本物を探せ!僕、今度こそ一人でできるもん!待ってて、カトリーヌ!』を開催致します!
ルイジェルド殿下、今から花嫁カトリーヌを探して頂きます。一時間の内に見事トリーを見つけ出したならば、無事、結婚式が行われます!それでは検討を祈ります!スタート!」
とリリーちゃんのスタートの合図で白装束達は一斉に逃げ出した。
キョトンとしている場合ではない。
俺は絶対カトリーヌを見つけ出し、結婚式をあげてやる!
どおりで応援されるわけだ!
みーーんな、知ってたわけだ!
さっさと終わらせてやる!
一人目を捕まえてみると、見た事がある。
「残念です、ハズレですよ、殿下。結婚おめでとうございます。」
と言って、会場を出て行った。
あれ?そういえば、あっちにいるのも、そっちにいるのも、今年一緒に卒業した同級生じゃねえか!
『殿下ーー呆けてる時間はありませんよー、さあ、どんどん捕まえてさっさとトリーを見つけて下さい!』
とリリーちゃんの声に気を取り直し、片っ端から捕まえていく。
そして、捕まえた同級生達は、
「結婚おめでとう、殿下。」
「直接、お祝い言えるとは思わなかった。殿下、おめでとう!」
「殿下、また集まれて良かったです。結婚おめでとうございます。」
と皆がお祝いの言葉を残して会場を出て行く…
ああ、そうか…同級生達がお祝いをしてくれているのか…
「皆、これから本気で捕まえる!行くぞ!」
それからはとにかく全員を捕まえた。
皆が、お祝いの言葉を残し、続々帰って行く。この後大急ぎで着替えるのだろう。
しかし、
男も女装させるとは…リリーちゃん恐るべし…。
そして、シェリル夫人、あなたですね、手を貸したのは…。
最後の一人を捕まえた。
「殿下、お疲れ様でした。花嫁はあそこです。結婚おめでとうございます!」
と言い、走って出て行った。
最後にしてしまい、ごめんな。
そして、ウエディングドレスを着たカトリーヌが壇上にいた。
「殿下、お疲れ様でした。みんなもお祝いを言いたいとなり、こんな形になってしまいましたが、学院を思い出せて良かったのではないかと思います。
では、花嫁の所へどうぞ!しかーーし、抱きしめる事は禁止です!
そして、皆さま、行きますよ、せーの、」
結婚、おめでとうーーーーーーー!
と、父上、母上、兄上、義姉上、グランディ侯爵夫妻、ワソニック伯爵夫妻、イーガー侯爵夫妻、サイモン、シンシア、
そして、ロイとリリーちゃんが一斉に祝ってくれた。
これから本番だ、決して泣かないと思っていたが、嬉しくて涙が出た。
カトリーヌが、
「ルイ様、こんなに皆に祝われて幸せですね、私達。」
と言い、涙を拭いてくれた。
カトリーヌは知っていたのだろう、知らなければ号泣し、式どころではない。
「そうだな、こんなに嬉しい事はないな。」
そして、
「父上、母上、兄上、義姉上、ありがとう」
「ハロルド、ジュリア殿、サイモン、シンシア、ありがとう」
「カイル殿、シェリル夫人、ありがとう」
「アラン殿、マリア夫人、ありがとう」
「そして、ロナルド、リリーちゃん、ありがとう。これもどうせリリーちゃんが発案なのだろうが、
これから沢山の人にお祝いの言葉を貰えるだろうが、こんなに嬉しく幸せな気持ちにさせる者も言葉もないだろう。
俺もカトリーヌも、皆に貰った幸せ以上に幸せになります。
本当にありがとうございましたーー!」
拍手をもらい、感動に浸っていると、
「ほらほら、次本番だから少し支度し直すわよ!」
と俺もカトリーヌも連れていかれ、バタバタと本番を迎えた為、緊張のきの字もなく滞りなくなく式を終えた。
そして、
結婚披露パーティーが始まる。
応援ありがとうございます!
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