私の婚約者の苦手なもの 番外編

jun

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新婚旅行編

イアン視点

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カイルとハロルドが部屋を出てから、ずっと考えていた。
遠くの声が聞こえるなら、ここからでも話しが出来るのではないのかと。

アランの姿絵を見ながら、
「アラン、俺はお前と話したい…。どうしたらアランの所に行ける?俺が迎えに行ってやる、待ってろ。」


クロとトーマスが話していた時、最初は何か音しか聞こえなかった。

次、聞こえた時は離れていたのにハッキリ聞こえた。
耳ではなく頭の中に聞こえた。

近くに行った時は耳で聞いて話した。

なら、ここからでも話しが出来るのではないか…。

口には出さず、クロを呼んだ。

“クロ、クロ、イアンだ、聞こえるか?”

すると、

“イアン?”と返事がきた。

“俺はアランの屋敷にいる。ここからでも話しが出来るか、試してみた。”

“聞こえるよ、でも、トーマスとハンスが話してるから夜話そう”

とハッキリした話し方で返事をした。

“分かった、夜話そう。”

“分かった”

よし、出来た。
後はどのくらい離れて話せるかだ。
城からでも話せるならここまで来る事もない。
クロがどのくらいの時間話せるのか…
制限はないのか…
クロを通してアランと話せないのか…
クロに負担はかからないのか…

そうだ、最初クロに呼ばれた時、同時に皆が驚いた。
という事は、全員に言葉を送る事が出来るという事だ。
俺の言葉をクロが認識した者全員に一度に送れるのだ。

これはかなり有効に使える。

時間の短縮も出来る。

クロはかなり知能が高そうだ。
なら、俺の話しにも付いて来れそうな気がする。
成長が早いのだろう。
身体もこれから大きくなる。
今も大きいが、恐怖を感じる程ではない、
まあ、話しをしたからだろうが。
大きくなった時、人は恐怖を感じる。
今ならクロをお披露目しても拒否感はないかもしれない。
最初は見た事もないものだ、恐れ、驚くが存在を知ってしまえば、慣れるものだ。
慣れてしまえば空を飛んでいても気にはすまい。
クロの生態も知らなければならない。
だが、研究対象として扱ってはダメだ。
クロを俺達と同じ生き物として扱わなくてはならない。
何を食べている?
今は俺達と同じ物でもそれまでは山や森にある物だっただろう。
毒のある物も食べていたなら毒には免疫があるのだろう。
視力も聴力も良い。
あ!玉!玉あったか?
急所があるのかトーマスに聞こう。
あるなら、それは知られてはいけない。

さっきいた所が拠点になるのなら、あの周りを囲まなければならない。

どうやる?
木の伐採はクロが歩けば出来るようだし、運搬も手伝ってもらえるなら大幅に時間を短縮出来る。
堀かぁ…さすがに穴は掘れんだろう…
出来そう…な気もする…
でも、細かい作業は人の手でやる事になる。
うーーーん、ドラゴンがいる山で作業してくれる者がいるだろうか…

先にお披露目するか…

だが、今の自由なままのクロに反対する者はいるだろう…
賢い、怖くはないと言っても、俺達のように話せる訳ではない、話せない者にとってはドラゴンはドラゴンだ。
なら、クロが皆に語りかければ…
うーーーん、怖がらせるだけか?
そもそもクロは何故人を選ぶ?
自分に害を与えるおそれのある者。
恐ろしいと感じた者。

クロはキースを嫌った。
本能でコイツはヤバいって思ったんだろうな…分かる!

そういう者を避けたんだろう。

クロの親はどうしたんだろう…
もういないのか…
卵は時間が経ったから石化したのか?
それとも元からそうなのか?
竜使い…話しが聞きたいな。
生きてはいないか…でもいないとも言いきれない。
一度、バルトに聞いてみよう。

ハアーーアラン…どうすればいい…
アランならどうする?

“クロを見ると怖いなら見せないまま、話しさせたら?でも、クロが舐められないようにはしないとね。どうにか出来るなんて思わせたら、俺の領地に悪い人たくさん来ちゃうでしょ!怖がらせてもダメ、舐められてもダメ、だからイアンと同じ位の立場にしないとね!”


⁉︎


アラン?

おいおい、幻聴聞こえる位アランに会いたいのか、俺?ヤバいだろ、どんだけアランのこと好きなんだよ!



しかし、そうだ…国王と同じなら…

でも、どうやる…

ダメだ、一人じゃ考えが纏まらん。

後でカイルとハロルドに相談しよう。


さて、少し夕食まで休もう…
アランの近くにいるなら、アランの夢でも見ねえかな…










あれ?真っ白…何これ?


あ…これハロルドが言ってたやつだ…


アラン!


「アラーーーーン、俺だ、イアンだーーー、何処にいるーーーーーー!」


「アラーーーーーーン!」


「アラーーーーーーーーン、何処だーーーーー、イアンだーー、返事しろーーーーーー」



ここは俺の夢だ、いないか…







「あれ?イアン?」













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