私の婚約者の苦手なもの 番外編

jun

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新婚旅行編

ジュリア視点 

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ハロルドが合流し、急いでチャールズ様をワソニック領の屋敷に送り届けた。

「ジュリア殿、アランとトーマスをよろしく頼む。」

「分かりました。すぐ向かいます。」

と言うと、馬を走らせた。ハロルド達が向かった方向に走らせる。

大丈夫だとは思うが、部外者と言える、ハロルドがいる。
何があるか分からない。

途中まで馬を走らせると馬が怯え出して前に進まない。

降りて、近くの気に手綱をくくり付け、歩いて先を急ぐ。

木が薙ぎ倒されている所に出た。

ドラゴンの気配だろう、何かがこちらを警戒しているのが、分かる。


気配が強くなり、こちらも殺気を放つ。


すると、遠くからハロルドがこちらに走ってくるのが見えた。


私も走り、ハロルドに近寄る。

「ジュリア、来たのか。」

「アラン様は?」

「ああ、無事だ。」

「良かった…」

「ジュリア、今、アランとトーマスはクロと一緒にいる。」

「クロ?」

「アランがドラゴンに名前を付けた。」

「アラン様らしいわね。クロね。」

「クロはジュリアに怯えている。なるべく殺気を抑えてくれ。」

「分かったわ。」


二人でドラゴンに近づく。


アラン様がドラゴンの背中に乗っているのが、分かった。

ドラゴンはまだ警戒している。


ハロルドの後ろにいた私をドラゴンが見た。


その時、思わず殺気を放ってしまった。
急にハロルドが走り出した。



クロが突然羽を広げ、上へと飛んだ。

トーマスがクロの下へと走っている。

トーマスは何かを受け止めようと手を伸ばしている。

ハロルドは手を伸ばしても間に合わず、地面を蹴った。

トーマスが受け止めきれず、倒れる所をハロルドが抱き止めるように突っ込んだ。




ハロルドがすぐに起き上がり、
トーマスも動き出したが、


アラン様が…倒れていた…





「父さん、父さん、父さーーーん」

「アラン、しっかりしろ、アラーーン!」


え?


「ジュリア、ジュリア、お前は少し離れていろ!ここから離れろ!」

「父さん、父さん、父さん!」

「アラン、アラン、しっかりしろ!」

その時、クロが鳴いた。


「トーマス、トーマス、お前はクロを落ち着かせるんだ!トーマス、トーーーマス!
アランを助ける為だ!頼む、クロを落ち着かせてくれ!」

「分かった・・・」


「ジュリア!ジュリアはすぐ戻って医者を屋敷に呼んでおいてくれ!アランを運ぶ為の荷馬車でも馬車でも何でもいいから人手と一緒にここに連れてきてくれ!
急げ、ジュリア!」


何?アラン様は背中に乗っていた。
私が来て、ドラゴンは飛び上がって、
アラン様が落ちた…


「ジュリアーーーー!早く行け!」


身体が動かない…


「ジュリア、ジュリア!頼む、急いでくれ!」


「待って、おじさん!クロに運んでもらおう。俺がクロに話して運んでもらった方が早い。運んでもらったら俺はここにクロと戻るから、おじさんはみんなに報告して。
その代わり、俺が父さんを抱いて乗るから、後ろから俺達を支えて欲しいんだ。」

「やれるか、トーマス。」

「やる。」



「クロ、聞いてほしいんだ。
父さんがクロから落ちちゃったんだ。
怪我して血が出てる。分かる?」

『あらん、いたい、におい、こわい、いや』

「ジュリア!もっと、離れろ!ジュリアーー!」


「そう、凄く痛いんだ。俺と父さんとハロルドおじさんを背中に乗せて欲しいんだ。分かる?」

『とーます、あらん、はろるど、せなか、のる?』

「うん、乗らせて。クロは俺のウチ分かる?」

『とーます、おうち?』

「うん、一番大きいうちに言って欲しいんだ。」

『いっぱい、大きい、おうち?』

「そうそう。クロ、父さん、痛いから静かに飛んでくれる?」

『しずかに?』

「うん、父さんがいっぱい痛くなっちゃうから、静かに飛べる?」

『あらん、いたい、いや、しずか、いたいない?』

「うん、そうだよ、出来る?」

クロがハロルド達から少し離れた所に静かに降りてきた。
クロが姿勢を低くし、首を下げた。


ハロルドがアラン様を抱き、トーマスは先に背中に乗った。

ハロルドが、

「クロ、羽に乗ってもいいか?」

『はろるど、のる』

「うん、少し乗るからな。」

と言って、アラン様を抱きながら羽に飛び乗り、トーマスへアラン様を渡し、後ろから抱きしめるように乗り、立髪を握った。


「ジュリアは馬で屋敷に戻れ。先に行く。」

と言い、

「クロ、飛べる?父さん痛いから静かにね。」

『あらん、いたい、しずかに』

「うん、お願いね。」

私にはクロが何て言っているのか分からないが、トーマスとハロルドの言葉で屋敷に行く事が分かった。


クロは一回、強く羽を羽ばたかせ、身体を浮ばせた後、もう一度羽ばたき、更に上に飛んだ。

急激にでもなく、なるべく揺れないように飛んでいるようだ、

そして、優しく羽ばたき、屋敷の方へ飛んでいった。


それをボォーっと見送った後、馬がいる所へ走った。


何も考えられなかった。


ただ、馬を走らせた。








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