私の婚約者の苦手なもの 番外編

jun

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新婚旅行編

カイル視点

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朝早くに至急ワソニックにリリーちゃんとロナルドを連れて来いと、ハロルドからの連絡が入った。
急いで別邸に知らせてもらい、二人を待ち、ワソニック邸に向かった。

ハロルドが来たという事はジュリア様からハロルドに連絡があったという事だろう。
でなければ、陛下への連絡が先だ。

アラン…。

案内され、マリア殿とハロルドがいる部屋に三人で飛び込んだ。


ハロルドが説明している。

聞こえている。
内容も把握した。
だが、どこか遠くから話しているようだ。

アランが攫われた?
トーマスの代わりに自分から行った?

産まれたばかりだから…
子供だから…
あのバカ…ドラゴンにまで優しくしやがって…。


お前がトーマスを助けようと必死な姿が思い浮かぶ…。

俺だってロナルドがそうなったらアランと同じ事をする。

いつまでもその場にドラゴンがいる事を良しとしなかったとしても、
それでも…アラン…その場にとどまってドラゴンを説得して欲しかったぞ…
お前が連れて行かれてどうすんだ…アホが!


ふと、ハロルドを見た。


唇を強く噛んだのだろう。
血が出ている。
自分では気付いてないらしい。


ハロルドが、イアンに報告する為行くと言い、俺に後を頼むと部屋を出た。


後を追うとロナルドも来ていた。

ハロルドにアランを助けてくれとこいねがう。

ロナルドもアランを助けてくれとハロルドに頼んでいる。

泣いているリリーを残して、ハロルドに縋る姿に泣きそうになる。


部屋に戻り、ウチに行こうとマリア殿に言う。


家にはシェリルもロナルド達もいる。

でも、マリア殿は行かないと言う。

ここでアランが帰ってくるのを待っていると。


一人にするのが心配なので、リリーを残す。

ロナルドには仕事に行けと言い、仕事に行く前にシェリルにこの事を伝えるよう頼んだ。


皆、アランの事を考えているのだろう、一言も話さない。


俺もだが。


トーマスが帰ってきた日、アランは夫婦で家に来ていた。

その時、軽い口調で、
「もし、俺に何かあった時は、マリア頼むね。」

「は?何かってなんだよ!お前は俺より長生きするよ!」


そんな会話をした。


その時は気付かなかったけど、
何だよ、何でそんな事言ったんだよ…こうなる事分かってたのかよ!お前の勘が良いのは分かってるけど…こえーよ…!
俺はお前がいなくなる事考えるのが、何より
怖いよ…。



そんな事を考えている時、

「カイル父様…私もお父様を探しに行ってもいいかな…お父様、一人で可哀想だから行ってもいいかな?きっとお父様…ビビってドラゴンに変な事言って怒らせちゃうかもしれない…そうだ、そうだよ、お兄ちゃんの事が分かるなら私の事も分かるよ、だから私が返してってドラゴンに言うよ、父様、私行ってくる!お父様、待ってるから、きっとリリー助けてって呼んでるから、行ってくる!お父様が…待ってるから・・・お父様が・・・・お父様…なんで…」

「リリー、落ち着きなさい。
リリーを行かせられないよ。今は何も分からないんだ。行っても邪魔するだけだよ、だからもう少し待ちなさい。
マリア殿の側にいなさい。アランは戻ってくるよ。リリー達を置いて行くわけないだろう。だからここで待とう。分かるね、リリーナ。」

「・・・カイル父様…お父様…帰ってくるよね…ここに・・帰って・・・くるよね…」

「ああ、帰ってくるよ、きっと。だから待とう。」

「ここに・・・居ても・・いいかな…お母様と…待ってて・・・・いいかな…」

「良いよ、ここにいなさい。リリーナとマリア殿が居たら、アラン、急いで帰ってくるよ、大丈夫だからここに居なさい。」




「カイル!」

「シェリル…」

「アラン様は?」

「まだ何も分からない。マリア殿とリリーナを見ていてくれ。俺はイアンの所に行ってくる。」

「分かった…。貴方は大丈夫?酷い顔色よ…」

「大丈夫だ。二人を頼む。」



二人をシェリルに任せ、一度家に戻り、城へと急いだ。


イアンの元へ急いでいる時、サイモンに会った。


丁度イアンの所へ行く途中だったらしく二人で向かった。

「父があちらに向かいました。母もいます。アラン様は必ず帰って来ます。
カイル様、顔色が悪いですよ、大丈夫ですか?」

「そんなに顔色悪いのか…シェリルにも言われた…。大丈夫だ。イアンに話しを聞こうとしたが、今大丈夫だろうか?イアンは大丈夫か?」

「こちらもバタバタしているのでチラッとしか見ていませんが、見た目、気丈にしてますが、かなり堪えているようです。でも、カイル様の顔を見たら安心するでしょう。」

「…そうか。」



そう言った後は二人、無言で歩いた。





「陛下、お待たせ致しました、サイモンです。」

「入れ!」


「そこでカイル様に会いましたので、お連れしました。」


「カイル⁉︎カイル、アランが攫われた!アイツ、何やってんだ!」


「イアン、落ち着け!」

「俺は落ち着いてる!とにかくアランを探さなければ!今、ワソニック領に向かわせる人員をどうするかサイモンと決める。お前も加われ!」

「イアン!」

「・・・・」

「お前がそんなでどうすんだ!見つけられるモノも見つけられないぞ!」

「カイル・・・アランが…」

「アランは死んだんじゃない!だから探すんだ!早くとっとと決めろ!」

「済まん・・・」

「陛下、隣り街の対応の為の人員を騎士隊から送ります。
まだ連絡は来ていませんが、おそらく母と父がワソニック領に向かってると思います。
ハンスが残っていると思うので、ハンスに指揮をさせます。
ワソニック領には大勢で押しかけても何も出来ないでしょうから、父と母、トーマスとチャールズ様に居場所の見当をつけてもらいましょう。
ドラゴンが居そうな場所などそうそうないでしょうから。
それにトーマスとチャールズ様はドラゴンと会話が出来ます。
向こうから来る可能性もありますから、すぐ居場所も分かりますよ。
だから落ち着いて下さい。」


「そう…だな。済まない、サイモン、それで頼む…。」

「オスカー様も大丈夫ですか?」

「・・私は大丈夫だ…。ここで、陛下と連絡を待つ。
だが、サイモン、何か…何でもいい…アランの事が分かったらすぐ連絡をするようにしてくれ…頼む…。」


「了解しました。それでは失礼致します。」


サイモンが出て行き、三人共何も話さず黙ったままだった。


「アランは大丈夫だよな?」
とイアンが小さな声で言った。

「大丈夫だ!そんな不安そうに言うな、イアン!」

「しかし…カイル…ドラゴンだぞ…ほんの少し爪がかすっただけでも大怪我だぞ…。
物凄く高い場所に連れて行かれてたらどう助ける?
自分のエサにしようとしてたらどうする?
ひょっとしたらもうこの国に…いなかったら…どうする…」

「陛下、いやイアン、やめろ!
トップがこんな姿を晒すな!

俺達はお前が真ん前で堂々と立ってくれるから後を付いていけるんだ!
そのお前が下向いてたら、先に進めんだろうが!
弟を大事に思ってくれるのは嬉しい。
だがお前は国王だ!
下なんか向いてる暇ねえんだよ!
そして今、過去にもなかった事が起きている!
頭切り替えてさっさとこれからどうするか考えろ!」


「・・・・オスカー、済まなかった」

「イアン、俺だって何も手に付かんからここに来た。不安で不安で堪らない。
でも、リリーナですら、アランの為に何かしようと涙を堪えて考えていた。
マリア殿は最初こそ取り乱していたが、屋敷でアランを待つと気丈にしている。
だから俺らも考えよう。
ハロルドもジュリア様も向かってくれてる。俺らはここで出来る事を考えよう。」

「カイル…済まない…」

「イアン、カイル、ありがとう…。
弟を、アランを想ってくれてありがとう。
だから知恵を貸してくれ。
アランを取り戻す為に考えてくれ。
俺もまだ切り替えが完全じゃない。
だから、三人でこれから起こりうる事に備えて考えよう。
よろしくお願いします。」


「・・・・よし!もう大丈夫だ!
オスカー、カイル、済まなかった!
これから対策を練る。ヘンリーとルイジェルド、後リチャードも呼んでくれ!」




イアンは王族という立場の為か、時折荒れる時があった。
そんな時はいつもアランが、上手くイアンの苛立ちを払っていた。
俺達もそうだ。
不安な時や困った時、いつもアランがサラッと解決してくれてた。
そのアランが今ここにはいない。
だからイアンの気持ちが分かる。
俺と同じだろうと思ったからここに来た。


みんなで考えよう。どうすれば無事にアランを取り戻せるか。


アラン…早く帰ってきてくれ…







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