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新婚編
ロナルド視点
しおりを挟む母上が王女と会話している。
この人、凄いな、何の違和感もない。
王女も早速僕達を誘っている。
さあ、これからだ。
「シェリルもローリーも座って、今お茶を持ってきてもらうわ。」
「「ありがとうございます。」」
「それにしてもローリーは美しいわね~」
「ありがとうございます。」
「身長も高いのね、素敵だわぁ!」
「お恥ずかしいですわ。」
「シェリル様はよく城へは来られるの?」
「今日は主人に頼まれ物がありまして届けに来ましたの。そのついでに庭園を散策してましたら、王女様にお会いした次第です。」
「そうなの…私、知り合いがあまり居ないので話し相手が欲しかったのだけれど…」
「まあ、それは寂しゅうございましょう、もし宜しければ、こちらのローリーにお相手させますが。」
「まあ!それはとても嬉しいわ!でも良いのかしら…お忙しいでしょ?」
「私で良ければ、こんな光栄な事は御座いません。」
「本当に!とても嬉しいわ!明日も来て下さる?」
「喜んで。」
「本当に嬉しいわ!実はね、私…とても悩んでるの…。」
「あら、どうしましたの?こんな他国で心細い事でしょうに…。私達で宜しければお話しをお聞きしますが…。」
「うーーん、とても言いづらい事なの…」
「若い方同士の方がお話しし易いのでしたら私はお暇しますわ。
ローリー、私は主人の所にいるわ。王女様のお話しを聞いて差し上げて。」
「そんな悪いわ…」
「いいえ、構いません。ローリー、頼んだわよ!」
「はい、マリア様。」
「それでは王女様、私は失礼致します。」
「シェリル、ごめんなさいね。ローリーをお借りするわね。」
「承知致しました。では私はこれで。」
と言い、母上は退室した。
「ローリーもごめんなさいね、同年代の人に話しを聞いて貰いたかったの。」
「私でお役に立つか分かりませんが、お話しを聞かせて頂きます。」
王女は紅茶を一口飲み、言いづらそうにしている。
「あのね…私…お慕いしてる方がいるの…。
でも最近全然お会い出来なくて…。
それまでは毎日お会いしていたのよ、でも急にお会い出来なくなってしまって…。
お仕事が忙しいのかもしれないけれど、いつもなら何か連絡が来るのよ、それもないの…。嫌われてしまったのかしら…。」
「何か嫌われるような事をなさったのですか?」
「私はしてないつもりよ。でもね…その方…婚約者がいる方なの…。
私…その婚約者の方の前で意地悪をしていたの…。だから、その方に何か言われて会えなくなってしまったのかと思って…。」
「その婚約者の方には何か言われたりしたのですか?」
「いいえ、その方は困った顔をされるだけで何も言わなかったわ。だから、私、その方の目の前で腕を組んだり、手を握ったり、顔を近付けたりしたの…。」
「それでも何も言われなかったのですか?」
「そうなの…でも私が慕っている方も嫌がらなかったから、ひょっとしたら私の事の方が好きなのではないかと思ってしまったのよ…。そう思ったら止まらなくなってしまって…。二人がいる時に邪魔しに行ったりしたの。そんな事を何回かしていたら、イアン様が急な仕事だと言って、その方を連れて行ってしまったの…。
それから一度もお会い出来ないの…。」
「王女様はその婚約者の方から、お慕いしている方を奪いたいのですか?」
「奪いたいとかではないのよ!でも婚約破棄するという噂があって、だったら私が…と思ったの。」
「本当にその方達は婚約を破棄するのかは知らないのですね。」
「知らないわ…。でも相手の方も最近は登城してないみたい…」
「婚約を破棄なさらず、そのまま結婚する事になったら王女様はどうするのですか?」
「・・・・・私…諦められないの…」
「どんな手を使っても奪うという事ですか?」
「そんな事は…したくないわ…」
「お辛いですね…。」
「そうなの!私、どうしたらいいのか分からないの!
ローリーはどうすれば良いと思う?」
「私は…お相手の気持ちを大切にしたいです…。
例え二人が婚約破棄となっても、もしそのお相手を愛していらっしゃるなら私は…代わりになりたいとは思いません…。」
「相手の気持ち…」
「そうです。もしそのお二人が愛し合ってるのなら、なんらかの理由で婚約破棄になったとしてもお気持ちはお互い変わらないと思うのです…。
違う方と結婚したとしても、ずっとその方の事を想い続けていると思うのです…。
私を愛しては下さらない方とは一緒にいられません…辛すぎます…。
代わりに隣に立てたとしても、気持ちは遠く、いえ、立った瞬間、今までよりも気持ちが遠のくと思います。」
「それは何故?」
「隣りに立った者は、その人にとって愛した人を奪った相手になるからです。」
「でも、一生懸命慰めるわ!側にもいるわ!なんでもしてあげるわ!」
「それでもです。
やればやるほど別れたお相手と比べるでしょう。
慰め方も、側にいる時の距離感も、
癒してもらえる方法も、その別れた方とは違うのですから。
やればやるほど実感するのです、もう会えないのだと。
もう一緒にはいられないのだと。
そして、隣りに何故好きな相手ではなく別の人がいるのだと憤るのです。
忘れさせようとすれば、怒りが沸くでしょう。
自分の方が別れた相手より優れている事を分からせようとすれば、更に比べて嫌悪するでしょう…。」
「嫌悪…」
「実は私も…経験があるのです…。」
「え?ローリーも?」
「そうなのです…。私は全く今話した状況になりました…。結婚は致しておりませんが、彼とは結局別れました…。
とことん嫌われてしまいました…。
口も聞いては貰えません…。
顔を見れば嫌な顔をされ、逃げてしまわれます…。
もっと早くに諦めれば、今でも良いお友達でいられたのに…。
今でも近くで笑顔を見せてくれていたのに…。
後悔ばかりしております…。
ですから、王女様にはそうはなって欲しくはありません…。」
「そんな事が…。
そう…代わりにはなれないのね…。」
「そのお相手の方と婚約者の方の仲はどうなのですか?」
「・・・最初に…最愛のって紹介されたわ…」
「…そうですか…大事なお相手なんですね…。私の好きになった方もそうでした。
とてもとても婚約者の方を愛していらっしゃいました…。訳あってお別れされたのですが…。
私と別れた後、今もその方は結婚していません…。
死ぬまで誰とも結婚しないそうです…。」
「死ぬまで…。私、もう一度考えるわ…。
ローリー、明日も来てくれる?」
「もちろんです。」
「じゃあ、明日も今くらいの時間に来てくれる?」
「承知致しました。」
「今日はありがとう。ローリーも気を落とさないでね。」
「ありがとうございます。
では、また、明日伺います。」
そう言って退室した。
「おつかれ!」
とサイモン殿が出て来た。
「あれ?リリーは?」
「シェリル様と殿下の所に戻ったから、俺が二人の会話聞いてた。
凄いな、ローリー、迫真の演技だったな!」
「やめて下さいよ、戻りますよ!」
この後あの王女様はどう結果を出すか…明日だな。
二人で殿下の所に戻る間、ご機嫌のサイモン殿と着飾った僕の事が瞬く間に噂になるなんてその時は思わなかった。
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