私の婚約者の苦手なもの 番外編

jun

文字の大きさ
上 下
43 / 143
新婚編

ロナルド視点

しおりを挟む



母上が王女と会話している。
この人、凄いな、何の違和感もない。
王女も早速僕達を誘っている。
さあ、これからだ。


「シェリルもローリーも座って、今お茶を持ってきてもらうわ。」

「「ありがとうございます。」」

「それにしてもローリーは美しいわね~」

「ありがとうございます。」

「身長も高いのね、素敵だわぁ!」

「お恥ずかしいですわ。」

「シェリル様はよく城へは来られるの?」

「今日は主人に頼まれ物がありまして届けに来ましたの。そのついでに庭園を散策してましたら、王女様にお会いした次第です。」

「そうなの…私、知り合いがあまり居ないので話し相手が欲しかったのだけれど…」

「まあ、それは寂しゅうございましょう、もし宜しければ、こちらのローリーにお相手させますが。」

「まあ!それはとても嬉しいわ!でも良いのかしら…お忙しいでしょ?」

わたくしで良ければ、こんな光栄な事は御座いません。」

「本当に!とても嬉しいわ!明日も来て下さる?」

「喜んで。」

「本当に嬉しいわ!実はね、私…とても悩んでるの…。」

「あら、どうしましたの?こんな他国で心細い事でしょうに…。私達で宜しければお話しをお聞きしますが…。」

「うーーん、とても言いづらい事なの…」

「若い方同士の方がお話しし易いのでしたら私はお暇しますわ。
ローリー、私は主人の所にいるわ。王女様のお話しを聞いて差し上げて。」

「そんな悪いわ…」

「いいえ、構いません。ローリー、頼んだわよ!」

「はい、マリア様。」

「それでは王女様、私は失礼致します。」

「シェリル、ごめんなさいね。ローリーをお借りするわね。」

「承知致しました。では私はこれで。」

と言い、母上は退室した。


「ローリーもごめんなさいね、同年代の人に話しを聞いて貰いたかったの。」

「私でお役に立つか分かりませんが、お話しを聞かせて頂きます。」
王女は紅茶を一口飲み、言いづらそうにしている。


「あのね…私…お慕いしてる方がいるの…。
でも最近全然お会い出来なくて…。
それまでは毎日お会いしていたのよ、でも急にお会い出来なくなってしまって…。
お仕事が忙しいのかもしれないけれど、いつもなら何か連絡が来るのよ、それもないの…。嫌われてしまったのかしら…。」

「何か嫌われるような事をなさったのですか?」

「私はしてないつもりよ。でもね…その方…婚約者がいる方なの…。
私…その婚約者の方の前で意地悪をしていたの…。だから、その方に何か言われて会えなくなってしまったのかと思って…。」

「その婚約者の方には何か言われたりしたのですか?」

「いいえ、その方は困った顔をされるだけで何も言わなかったわ。だから、私、その方の目の前で腕を組んだり、手を握ったり、顔を近付けたりしたの…。」

「それでも何も言われなかったのですか?」

「そうなの…でも私が慕っている方も嫌がらなかったから、ひょっとしたら私の事の方が好きなのではないかと思ってしまったのよ…。そう思ったら止まらなくなってしまって…。二人がいる時に邪魔しに行ったりしたの。そんな事を何回かしていたら、イアン様が急な仕事だと言って、その方を連れて行ってしまったの…。
それから一度もお会い出来ないの…。」

「王女様はその婚約者の方から、お慕いしている方を奪いたいのですか?」

「奪いたいとかではないのよ!でも婚約破棄するという噂があって、だったら私が…と思ったの。」

「本当にその方達は婚約を破棄するのかは知らないのですね。」

「知らないわ…。でも相手の方も最近は登城してないみたい…」

「婚約を破棄なさらず、そのまま結婚する事になったら王女様はどうするのですか?」

「・・・・・私…諦められないの…」

「どんな手を使っても奪うという事ですか?」

「そんな事は…したくないわ…」

「お辛いですね…。」

「そうなの!私、どうしたらいいのか分からないの!
ローリーはどうすれば良いと思う?」

「私は…お相手の気持ちを大切にしたいです…。
例え二人が婚約破棄となっても、もしそのお相手を愛していらっしゃるなら私は…代わりになりたいとは思いません…。」

「相手の気持ち…」

「そうです。もしそのお二人が愛し合ってるのなら、なんらかの理由で婚約破棄になったとしてもお気持ちはお互い変わらないと思うのです…。
違う方と結婚したとしても、ずっとその方の事を想い続けていると思うのです…。
私を愛しては下さらない方とは一緒にいられません…辛すぎます…。
代わりに隣に立てたとしても、気持ちは遠く、いえ、立った瞬間、今までよりも気持ちが遠のくと思います。」

「それは何故?」

「隣りに立った者は、その人にとって愛した人を奪った相手になるからです。」

「でも、一生懸命慰めるわ!側にもいるわ!なんでもしてあげるわ!」

「それでもです。
やればやるほど別れたお相手と比べるでしょう。
慰め方も、側にいる時の距離感も、
癒してもらえる方法も、その別れた方とは違うのですから。
やればやるほど実感するのです、もう会えないのだと。
もう一緒にはいられないのだと。
そして、隣りに何故好きな相手ではなく別の人がいるのだと憤るのです。
忘れさせようとすれば、怒りが沸くでしょう。
自分の方が別れた相手より優れている事を分からせようとすれば、更に比べて嫌悪するでしょう…。」

「嫌悪…」

「実は私も…経験があるのです…。」

「え?ローリーも?」

「そうなのです…。私は全く今話した状況になりました…。結婚は致しておりませんが、彼とは結局別れました…。
とことん嫌われてしまいました…。
口も聞いては貰えません…。
顔を見れば嫌な顔をされ、逃げてしまわれます…。
もっと早くに諦めれば、今でも良いお友達でいられたのに…。
今でも近くで笑顔を見せてくれていたのに…。
後悔ばかりしております…。
ですから、王女様にはそうはなって欲しくはありません…。」

「そんな事が…。
そう…代わりにはなれないのね…。」

「そのお相手の方と婚約者の方の仲はどうなのですか?」

「・・・最初に…最愛のって紹介されたわ…」

「…そうですか…大事なお相手なんですね…。私の好きになった方もそうでした。
とてもとても婚約者の方を愛していらっしゃいました…。訳あってお別れされたのですが…。
私と別れた後、今もその方は結婚していません…。
死ぬまで誰とも結婚しないそうです…。」

「死ぬまで…。私、もう一度考えるわ…。
ローリー、明日も来てくれる?」

「もちろんです。」

「じゃあ、明日も今くらいの時間に来てくれる?」

「承知致しました。」

「今日はありがとう。ローリーも気を落とさないでね。」

「ありがとうございます。
では、また、明日伺います。」




そう言って退室した。


「おつかれ!」
とサイモン殿が出て来た。


「あれ?リリーは?」

「シェリル様と殿下の所に戻ったから、俺が二人の会話聞いてた。
凄いな、ローリー、迫真の演技だったな!」

「やめて下さいよ、戻りますよ!」


この後あの王女様はどう結果を出すか…明日だな。





二人で殿下の所に戻る間、ご機嫌のサイモン殿と着飾った僕の事が瞬く間に噂になるなんてその時は思わなかった。















しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

溺婚

明日葉
恋愛
 香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。  以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。  イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。 「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。  何がどうしてこうなった?  平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

【完結】あわよくば好きになって欲しい(短編集)

野村にれ
恋愛
番(つがい)の物語。 ※短編集となります。時代背景や国が違うこともあります。 ※定期的に番(つがい)の話を書きたくなるのですが、 どうしても溺愛ハッピーエンドにはならないことが多いです。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

私が、良いと言ってくれるので結婚します

あべ鈴峰
恋愛
幼馴染のクリスと比較されて悲しい思いをしていたロアンヌだったが、突然現れたレグール様のプロポーズに 初対面なのに結婚を決意する。 しかし、その事を良く思わないクリスが・・。

犠牲の恋

詩織
恋愛
私を大事にすると言ってくれた人は…、ずっと信じて待ってたのに… しかも私は悪女と噂されるように…

処理中です...