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新婚編
ルイジェルド視点
しおりを挟むロイとリリーちゃんの二人が来てくれて正直嬉しかった。
本来なら一人で解決しなければならない事だ。けど全く考えが纏まらない。
マルガリータを避けたとしても、それだけで型が付く訳でもないだろう。
どうやって帰ってもらうか何も思いつかなかった。
例え俺に帰れと言われて一旦帰ってもまた来るだろう。
二人の知恵を貸してもらえるなら有難い。
そして、俺とカトリーヌの事を助けたいと、
結婚させたいと願ってくれている。
有り難くて涙が出そうだった。
せめて誰かに言ってほしかった、マルガリータとの接し方を改めろと。
でも誰にも何も言われなかったから気付かなかった…。
自分で気付くべきだったと思うが、もっと早くに気付いていたらこんなに面倒な事にはならなかったと思うと、やりきれない。
そんな事も口には出せない。
父上も兄上も今は話しなど聞いてくれないだろう。
母上にはこの事は言いにくい。
そんな事を考えている時、サイモンの代わりについているハンスが現れた。
「殿下、王女が近くまできています。どうしますか?」
「仕事中で会えないと追い返してくれ。」
「了解しました。」
しばらくすると部屋の前が五月蝿くなった。
マルガリータが騒いでいる。
今までは自由に入れていたのにどうしてだと言ってるんだろう…。
マルガリータの気持ちに気付いた今は、もう他の令嬢達と同じにしか見えない。
触られるのも嫌だ。
静かになったので戻ったのだろう…
どうするか…
ハッキリ言ったとしても納得しないだろう。
今まで許されてきていたのだから。
俺の気持ちではなく、自分の気持ちを優先させるだろう。
自分はずっと好きだったのだと、カトリーヌより昔から好きだったのだと、それを助長させたのは俺だと…言うだろう。
そうなのだ…俺が距離を取っていたら何れは俺がマルガリータを何とも思っていないことに気付けただろうに。
ひょっとしたらと思うだろうな、こんな態度を取っていたら。
今もそう思っているんだろう、カトリーヌが居なくなれば自分が代わりにと。
だから帰らないのだ。
嫌だ、カトリーヌを邪魔者扱いする奴なんて。
ついこの間まで可愛がっていたマルガリータが気持ち悪い存在になった。
だからといって、放っても置けない。
いくら考えても言い聞かせる事しか思い浮かばない。
仕事もせずそんな事ばかり考えていたら、いつの間にか夜が明けていた。
少し仮眠を取り、ひたすら自分の仕事をこなした。
そこへロイが来た。
サイモンを使っていいかと言うので説明させた。
既に二人は動いてくれていた。
計画を立てるにしても相手の事を全く知らないから進められないと言う。
最もだ。
それくらいなら父上の許可がなくても大丈夫だと言うと、
「『愛でる会』に王女の近くで働いてる者はいないか探してもらったがいなかった。」
のだそうだ。
昨日帰ってからすぐに二人は考えてくれたのだろう…何をすべきか。
サイモンも戻り、ロイに説明してもらう。
サイモンはいつでもいけるがハロルドに一応報告したいと家に帰った。
ロイも戻り、一人になって、俺一人では何も出来ない事に落ち込んだ。
勝手に一人で動くのもマズいだろう。
慎重に行動しなければならない。
なら皆に頼ろう。一人では動けないのなら助けて貰おう。
それが一番、解決への近道だ。
頭を切り替え、仕事をした。
サイモンが戻ってきた。
ハロルドに言ったら父上に話しておきたいと言われたと。
そうだよな、王女が絡んでる事だ。
そのうち呼び出されるだろう。
しばらくしたら、父上に呼び出された。
サイモンを連れて会議場へ来いと。
会議場?
二人で会議場へ入ると父上の他に、ハロルドとジュリア殿もいた。
一瞬嫌な事が過ぎる。
カトリーヌ…
そこへロイとリリーちゃんが入って来た。
え?二人も?
その後は二人の独壇場だった。
俺はいつの間にか、参謀総長になっていたし、サイモンは参謀長官だった。
リリーちゃんが俺の気持ちを代弁していた。
放って置いたくせに、誰も何も言わなかったくせに、誰も助けないと怒ってくれていた。
俺に誰にも頼らせず、考える時間も与えない、そんな状況でも一人で踏ん張っているんだと、
カトリーヌを離さない為に立ち続けたんだと怒っていた。
ロイは冷静に大人達を責めていた。
マルガリータの気持ちを分かっていたのに何故誰も俺に距離を取れと言わなかったのか問うていた。
そして、未来の国の為、俺の未来の為に、友の為に自分達は動いているんだと。
動けない大人の代わりに動いているんだと。
カトリーヌのいない今が一番狙い易い、時間がないから力を貸してくれと懇願してくれている。
泣くのを堪えられない…
横を見たらサイモンも泣いていた…。
この二人は俺達を別れさせない為だけに、
この国のトップと影のトップ相手に戦ってくれている。
有り難くて泣いた。
動けない、言えない俺の代わりに動き、伝えてくれた。
ハロルドにも俺の気持ちが伝わったと言ってもらえた。
父上も俺だけが悪いのではないと、
俺の心を守ってくれてありがとうと言ってもらえた。
そして皆がカトリーヌを俺の隣りに戻そうと言ってくれた。
大物の参謀が増えていたが、その大物達が泣き出し、収拾がつかない…
最後にロイが締め、俺には水分を取れと言っている。
ロイ、ありがとう…
リリーちゃん、ありがとう…
もう泣かない。
これからこの大物達と一緒にカトリーヌを取り戻さなければならないのだから。
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