13 / 143
結婚式編
シェリル視点
しおりを挟むロナルドとリリーちゃんの結婚式が後二週間となった。
我が家には息子のロナルドしか子供はいない。
二人目はどうしても出来なかった。
カイルは一人居れば充分だと言ってくれたが、やっぱりもう一人欲しかった。
女の子がいたらなぁと思っていた。
娘が出来たら、娘の結婚式のベールは私が編んだ物をあげたかった。
私がそうだったから。
私の結婚式のベールは母の手編みだった。
とても嬉しくて、母の愛情に涙が出た。
でも息子しかいないので諦めた。
リリーちゃんがロナルドの婚約者になって、
よく家に遊びに来るようになって、
「シェリルおばちゃま」と呼んでくれるようになって、
“この子が大きくなってロナルドのお嫁さんになってくれたらベール編んであげたいなぁ”
と思った。
リリーちゃんは大きくなっても、素直で愛らしくて、可愛くて仕方なかった。
逆にロナルドは大きくなればなるほど反抗的になっていった。
男の子はみんなそうだと言われても、寂しかったからとことん構った。
構えば構うほど避けられたが、ちょっと楽しかった。
ロナルドが怪我した時は、死んでしまうのではと思い、怖くて身体が震えた。
いつも文句を言ってくるロナルドが白い顔で身動きせずに寝ている姿は今でも忘れられない。
私のやることなす事、文句を言うロナルドが私の編んだレースのベールを見て、なんて言うのか少し不安だ。
でも、リリーちゃんに渡して欲しくてロナルドの部屋へ行った。
最初、私を見て一瞬眉を寄せたが、いつもと違う私を見て口調を柔らかくして部屋に入れてくれた。
恐る恐る箱を渡すと、とても驚いた顔でレース編みのベールを見た。
綺麗だと、凄いとロナルドが喜んでいる。
嬉しいけど少し恥ずかしいので、ロナルドからリリーちゃんに渡せと押し付けて部屋を出た。
すると、ロナルドが追いかけてきて、
「お母様!いつもありがとう!」
と言った。
驚いて振り向いたら、大きくなってからは見てなかったロナルドの子供の時のような笑顔だった。
そして“お母様”って…
泣きそうになり、ロナルドに背中を向けたらカイルとアラン様がいた。
カイルと目が合ったら涙が溢れた。そして、
駆け寄ったカイルが抱きしめてくれた。
ロナルドにお母様と呼ばれたのが久しぶりだからなのか、
素直なロナルドの“ありがとう”に感動したのか分からないが涙が止まらない。
カイルももらい泣きしている。
近くでも鼻を啜る音が聞こえるから、アラン様も泣いているのだろう。
あ~あ、ロナルドは呆れてるな…
後ろにいるロナルドの顔は見えないが、きっと笑顔でそこにいるだろう。
私の大事な息子よ、
いつもあなたがリリーちゃんと笑っていられるように母が笑かしてあげるわ。
お幸せにね!
37
お気に入りに追加
450
あなたにおすすめの小説
【完結】聖女の手を取り婚約者が消えて二年。私は別の人の妻になっていた。
文月ゆうり
恋愛
レティシアナは姫だ。
父王に一番愛される姫。
ゆえに妬まれることが多く、それを憂いた父王により早くに婚約を結ぶことになった。
優しく、頼れる婚約者はレティシアナの英雄だ。
しかし、彼は居なくなった。
聖女と呼ばれる少女と一緒に、行方を眩ませたのだ。
そして、二年後。
レティシアナは、大国の王の妻となっていた。
※主人公は、戦えるような存在ではありません。戦えて、強い主人公が好きな方には合わない可能性があります。
小説家になろうにも投稿しています。
エールありがとうございます!
嘘つくつもりはなかったんです!お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
季邑 えり
恋愛
異世界転生した記憶をもつリアリム伯爵令嬢は、自他ともに認めるイザベラ公爵令嬢の腰ぎんちゃく。
今日もイザベラ嬢をよいしょするつもりが、うっかりして「王子様は理想的な結婚相手だ」と言ってしまった。それを偶然に聞いた王子は、早速リアリムを婚約者候補に入れてしまう。
王子様狙いのイザベラ嬢に睨まれたらたまらない。何とかして婚約者になることから逃れたいリアリムと、そんなリアリムにロックオンして何とかして婚約者にしたい王子。
婚約者候補から逃れるために、偽りの恋人役を知り合いの騎士にお願いすることにしたのだけど…なんとこの騎士も一筋縄ではいかなかった!
おとぼけ転生娘と、麗しい王子様の恋愛ラブコメディー…のはず。
イラストはベアしゅう様に描いていただきました。
【完結】王太子と宰相の一人息子は、とある令嬢に恋をする
冬馬亮
恋愛
出会いは、ブライトン公爵邸で行われたガーデンパーティ。それまで婚約者候補の顔合わせのパーティに、一度も顔を出さなかったエレアーナが出席したのが始まりで。
彼女のあまりの美しさに、王太子レオンハルトと宰相の一人息子ケインバッハが声をかけるも、恋愛に興味がないエレアーナの対応はとてもあっさりしていて。
優しくて清廉潔白でちょっと意地悪なところもあるレオンハルトと、真面目で正義感に溢れるロマンチストのケインバッハは、彼女の心を射止めるべく、正々堂々と頑張っていくのだが・・・。
王太子妃の座を狙う政敵が、エレアーナを狙って罠を仕掛ける。
忍びよる魔の手から、エレアーナを無事、守ることは出来るのか?
彼女の心を射止めるのは、レオンハルトか、それともケインバッハか?
お話は、のんびりゆったりペースで進みます。
社長、嫌いになってもいいですか?
和泉杏咲
恋愛
ずっと連絡が取れなかった恋人が、女と二人きりで楽そうに話していた……!?
浮気なの?
私のことは捨てるの?
私は出会った頃のこと、付き合い始めた頃のことを思い出しながら走り出す。
「あなたのことを嫌いになりたい…!」
そうすれば、こんな苦しい思いをしなくて済むのに。
そんな時、思い出の紫陽花が目の前に現れる。
美しいグラデーションに隠された、花言葉が私の心を蝕んでいく……。
結婚5年目の仮面夫婦ですが、そろそろ限界のようです!?
宮永レン
恋愛
没落したアルブレヒト伯爵家を援助すると声をかけてきたのは、成り上がり貴族と呼ばれるヴィルジール・シリングス子爵。援助の条件とは一人娘のミネットを妻にすること。
ミネットは形だけの結婚を申し出るが、ヴィルジールからは仕事に支障が出ると困るので外では仲の良い夫婦を演じてほしいと告げられる。
仮面夫婦としての生活を続けるうちに二人の心には変化が生まれるが……
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
ロザリーの新婚生活
緑谷めい
恋愛
主人公はアンペール伯爵家長女ロザリー。17歳。
アンペール伯爵家は領地で自然災害が続き、多額の復興費用を必要としていた。ロザリーはその費用を得る為、財力に富むベルクール伯爵家の跡取り息子セストと結婚する。
このお話は、そんな政略結婚をしたロザリーとセストの新婚生活の物語。
片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜
橘しづき
恋愛
姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。
私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。
だが当日、姉は結婚式に来なかった。 パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。
「私が……蒼一さんと結婚します」
姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる