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卒業式編
シンシアの父 アルバート視点
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私の娘は飄々としているが、明るく元気が取り柄のどこにでもいる娘だ・・・
と思っていた。
学院に入った頃から、部屋で何やら絵を描いている。
誰かの姿絵を黙々と描いていた。
まあ、趣味を持つのは良い事だと深く考えもせずに放置していた。
娘が三年生になって、少ししてからだ。
娘が超大物のご子息、ご令嬢と友人になったと言う。
リリーナ・ワソニック伯爵令嬢
ロナルド・グランディ侯爵令息
カトリーヌ・イーガー侯爵令嬢
挙句に
ルイジェルド・マクドリア第二王子
・・・・なんで?
三人は全て国王の友人の子供達だ。
もうちょい身分にあった友達いただろうと思ったものだ。
我が家の領地は緑豊かな温泉地だ。
大きな湖があり、夏にはボート、冬は湖が凍ればスケートも出来る。
観光客もある程度は来るが、宿泊施設や観光客向けの商店がない。
我が家が管理している宿だけだ。
もっと観光客を呼ぶ為には施設の増設、商店街の拡大、観光地の整備などやる事は山積みだ。
だが、予算がない。
隣接している領地との共同で進める為にそこの息子とシンシアを婚約させた。
最初は二人も仲良くしていたのに、
途中から相手が浮気を始め、噂になり出した。シンシアもそんな相手は嫌だと言ってきたが、領地の為にと説き伏せた。
本当は娘の為にそんな男に嫁がせたくはない。しかし…と思い悩んでいた時だった。
娘の友人、リリーナ嬢の母親のマリア夫人とロナルド殿の母親、シェリル夫人を連れてこの領地に来るという。
泊まる部屋はあるが、特別豪華ではない。
料理も領地で取れる食材で作るシンプルなものだ。
それでも良いならと了解すれば、冬の長期休暇に長期滞在するとの事だった。
娘と共に夫婦で出迎え、挨拶すれば、
リリーナ嬢もロナルド殿も娘と親しげに話し、夫人方もとても気さくに私達夫婦に接してくれた。
部屋割りの際は、ロナルド殿とシェリル夫人が親子喧嘩をしていたが、微笑ましいものだった。
部屋も料理もとても気に入ってくれて、妻の
ベルも安心していた。
次の日からが大変だった。
これまで生きてきて、こんな小説でしか読んだ事がないような事の連続だった。
陛下と重鎮達の来訪、陛下への襲撃、捕縛と訳のわからない内に始まり、訳の分からない内に終わっていた。
気付けば、イーガー侯爵のジュリア夫人が怪我をし、その息子のサイモン殿も加わり、イーガー家勢揃いしていた。
イーガー家のご令嬢とも娘は友人だ。
そのご令嬢はルイジェルド殿下の婚約者だ。
娘よ、お前は一体何をして友人になったのだ?
そして、陛下、アラン殿、カイル殿、ハロルド殿と露天風呂に入れる栄誉を賜り、皆さんの仲の良い姿を見る事が出来たのは私にとって宝物だ。
アラン殿はリリーナ嬢から聞いていたのだろう、我が領地の窮地の事を陛下に進言して下さった。
陛下が、迷惑をかけたお詫びにと、この領地を国を挙げての開発計画にして下さり、予算も気にする事もなくなった。
娘の婚約解消も皆さんがまとめて下さった。
有り難かった…こんな弱小貴族にこんな高位の方々が力になって下さって…。
その夜は夫婦で泣いた。
陛下達は先に王都にお帰りになったが、
リリーナ嬢、ロナルド殿達、イーガー家のジュリア夫人とサイモン殿達が引き続き滞在して、皆さんと楽しく過ごさせてもらった。
最初こそ緊張していたが、帰る頃には気軽に話せるようになっていた。
娘もサイモン殿といい感じになっていて、
次の婚約者も早く決まりそうだ。
そして娘の卒業式。
ベルと共に大ホールに入り、煌びやかな雰囲気に圧倒されたが、私達に気付いたアラン殿達が声をかけてくれて、力が抜けた。
ベルもマリア夫人達と一緒にいて楽しそうだ。
殿下の挨拶が始まり、学院での出来事がどれだけ楽しいものであったかが想像出来た。
こんなに良い学院に通っていたんだと、
良い友人に恵まれていたんだと、
涙が出た。
挨拶が終わり、生徒は号泣し、保護者も泣いている中、
二階席にいた国王と王妃が駆け降りてきて殿下を抱き締め号泣する姿は、良い国だなとほんわかした。
あの人と風呂入ったんだあ…と思ったら少し笑えた。
娘は最初から泣きっぱなしで酷い顔をしていたが、最後は笑っていた。
本当に良い卒業式だった。
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