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卒業式編
国王イアン視点
しおりを挟む今日は我が息子第二王子ルイジェルドの卒業式だ。
幼い頃はそれはそれは可愛かった。
兄のヘンリーを「おにいちゃま」なんて呼びながら追いかけ回し、
ヘンリーに鬱陶しがられていたが、愛らしかった。
第一王子のヘンリーは卒なく何でも熟せる器用さがあり、優秀な部類に入るが、
ルイは努力型で時間はかかるが必ず成し遂げる子だった。
王族は、私もそうだったが幼い頃より何事も厳しく教育される。
愛情は二人には変わらず与えたつもりだが、
段々口数は減っていった。
ヘンリーの場合、淡白な性格故、早くから口数は少なかったが。
笑う事も少なくなり、淡々と毎日の勉強と執務を熟すようになり、夕食も静かになった。
ヘンリーが結婚し、ルイが学院に入学した。
その頃から少しずつ、夕食で学院の事を話すようになり、一人の友人が出来たようだった。
私の友人の息子のロナルドだ。
明るく学院の事を報告してくる様子に、王妃のアイリスは嬉しそうにしている。
ロナルドを側近候補にしてからは、もう一人名前が出るようになった。
同じく友人の娘のリリーナだ。
ロナルドとリリーナの話しを楽しそうに話すルイに、私もアイリスもヘンリーも笑った。
其奴らの父親、カイルとアランも面白い奴らなので、さすが親子だと一人笑ったものだ。
明るく笑う息子に、夫婦で心から安心した。
それから、もう一人、カトリーヌの名が出るが、他の二人とは何か違う。
愛おしそうにその名を言うルイを見たアイリスは、寝室に戻ってから泣いていた。
「ルイがあんな顔で女の子の話をしているのは初めてよ。
良かったわ…あの子の初恋ね!」
と嬉し泣きしていた。
その後もルイの話しは面白くて夕食が皆、楽しみになった。
そして、
「父上、カトリーヌと結婚したいです。
カトリーヌの了解は得ています。
婚約の手続きをお願いします。」
と言ってきた。
カトリーヌは私の護衛のハロルドの娘だ。
問題はないのでもちろん了承した。
まあ、この後色々あったのだが、今は王子妃教育も終了し、結婚するだけだ。
ルイの卒業式は皆が行きたがった。
ヘンリーまでもこっそり見せてくれとお願いしてきた。
話しを聞いてルイが話す学院の生徒達を見てみたかったのだろう。
卒業生代表挨拶をするルイの話しに、皆が笑い、泣き、保護者までもが泣いている。
もちろん私もだが、
まさかの超淡白男ヘンリーの涙を見てしまい夫婦で号泣した。
ルイの元へアイリスと駆け寄り、
「大きくなってーーーー」と抱きしめ号泣した。
友人のカイルとアランが、
“あ~あ、国王なのになぁ”と言いたそうな顔をして見ていたのは気付かなかった。
毎日退屈そうにしていたルイジェルド。
こんなに感情豊かにしてくれた皆には本当に感謝しかない。
「本当に良い卒業式だった!卒業生の皆、
卒業おめでとうー!」
今日の夕食は皆泣き過ぎて食欲がなく、
卒業祝いは後日になった。
ルイジェルド、卒業おめでとう。
応援ありがとうございます!
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