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卒業式編
サイモン視点
しおりを挟むあの露天風呂での襲撃からだいぶ経った。
あの後、俺と母、同僚のハンスは残って護衛という名の休暇を満喫した。
母は傷が開き、三日は大人しくしていた。
それからはグランディ侯爵の奥方のシェリル様とワソニック伯爵の奥方のマリア様とで、
ワーワーキャーキャーと遊んでいた。
シェリル様とマリア様はすっかり母のファンになってしまったらしく、サインを貰っていた…。
どうすんの?アレ。
マリア様の娘のリリーナちゃんも目をキラキラさせて母を見ていた。
あ~サイン貰ってる…一家に二枚は要らないでしょ?って思うけど、まあ、あの武勇伝を聞いたら惚れるよね。
息子の俺としては鼻が高い!
鬼強かった母。
俺を妊娠して現役引退して二十数年、軽い訓練はしていても現役には敵うまいと思っていた。ましてやあの父には付いていけないだろうと。
いやいや、あの人いくつなの?いつから現役復帰してたの?ってくらい強かった。
魔王様の噂は聞いても実際戦ってる所はみた事なかったから間近で見れて感激した。
なので、母がいる安心感もあり温泉を満喫した。
そして出会ってしまった…運命の人に!
バタバタしてたから仕事に関係ない人は全く見てなかった。
余裕が出来たら、居た…めちゃくちゃ可愛い子が居た!
この子も妹の友達らしい。
妹よ、お前はこんなに可愛い子に囲まれた上で、殿下に惚れられたのか!
名前はシンシア・ランソル。
ここの領地のランソル伯爵の娘さんだ。
リリーナちゃんの話しでは、シンシアさんの婚約を解消させる為にここに来たんだとか。
婚約解消・・・・婚約者いるんだ・・・
しかーし、陛下の鶴の一言でそれも解決したんだとか。
そこからやる事は一つ。
護衛という名のストーカーと化し、街への買い物も散策も常に一緒にいた。
リリーナちゃんに、
「サイモン様はトリーとは真逆の性格なんですね。
トリーと殿下は見ていて焦ったくなりましたけど、サイモン様は清々しいほどのストーカーぶりにビックリしました。」
と言われた。
ロナルドには、
「僕はリリーの婚約者なので、付き纏っても犯罪ではありませんが、サイモン殿のはほぼ犯罪です。」
と言われた。
同じ影のハンスには、
「若…ヤバいっすよ。どんだけ好きなんですか。そのうちジュリア様に殴られますよ。」
と言われた。
そして母に一発殴られた後、
「お前のは相手の気持ちを無視した、付き纏いだ!ちゃんと告白して振られてきなさい!」
なのでシンシアさんに告白した。
「シンシアさん、一目惚れです。付き合って下さい!」
「あの、その、すみません、婚約を解消したばかりなので今すぐは考えられません」
と言われた…
「でも、お友達からならいいですけど、ダメですか?」
「もちろんです!是非!」
という訳で、今はお友達だ!
もちろん、王都に戻ってからも手紙のやり取りをしたり、
たまに妹かリリーナちゃんがいるが街でお茶をしたりしている。
で、今日は殿下の卒業式なので、ルイジェルド殿下に影として付いている。
卒業式って何かありそうで少しドキドキする。
親世代ではあったらしい婚約破棄。
『お前とは婚約破棄する!僕は○○と結婚する!』
なーんて物語ではよくあるけど、
実際問題、そんな事したら結婚なんか出来ないと思う。
会場入りした殿下を影から見守り、辺りを伺う。
視界の隅にシンシアさん発見!
うわぁ…もう泣いてる…
大丈夫?
任務に集中し、気配を消し壇上の殿下を見守りながら、周りの警戒をする。
殿下の挨拶は在校生であれば確実に泣いてしまう答辞だった。
殿下らしい良い最後の挨拶だった。
ふと、会場を見ると、ほぼ全員が泣いている?え?陛下も王妃も?
殿下の挨拶後、
殿下は大勢に囲まれた為、急いで近くに控えた。
だいぶ人が減ったので少し離れると、
シンシアさんが突進してきた。
殿下の手を取りブンブン振りながら、今の答辞の感想を言っているようだ。
あ~あ、泣いちゃった。
朝から泣きっぱなしだな…
でも泣き顔も可愛い。
あーー殿下も泣いちゃった…
これどうするの?いつ終わるの?
会場に母を見つけ、近付いたら母も泣いていた。
とにかく、良い卒業式だったって事だね。
そして、俺は殿下に集中し任務を継続した。
応援ありがとうございます!
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