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幼馴染みでも友人でもない
しおりを挟むダニエレ視点
夢の中?でレイチェルに会い、たくさん抱きしめながら話しをした後、ロルフ殿の声が聞こえた後に目が覚めた。
既に部屋を出ていってしまったらしく誰もいないが、隣りの部屋にヘルマンとロルフ殿の声が聞こえ、急いで追いかけようとベッドから降り、歩き出そうとしてフラつき床に座り込んでしまった。
その後は物音に気付いた二人が駆け込み、目が覚めて良かったとヘルマンが泣き出し、ロルフ殿が父上や医者の手配をしてくれた。
それからの俺の寝室は号泣する両親と親友と、もらい泣きする周りの人達の啜り泣きが廊下にまで響いていたそうだ。
それからはとにかく体力を戻さねばと食事と運動を少しずつ増やし、殆ど以前と変わらない生活をたくれるようになるまでに5日かかった。
その間にサンドラとの婚約解消と王太子をクルトに変える為の話し合い、両親とロルフ殿とヘルマンに夢の話しをした。
信じられないようだったが、俺は確信している。
俺が手を握れば必ずレイチェルは目覚めてくれると。
ロルフ殿は嬉しそうに笑っていた。
そしてサンドラの処罰が決定した。
サンドラの実家のベッケン侯爵家には今回の件ではお咎めなしとした。
元はと言えば俺の責任だから。
サンドラは一年間の社交の場への出席禁止のみとなった。
本来ならばこちらがこちらの有責での婚約解消だ。
サンドラが媚薬を使ったとはいえ、貴族令嬢の処女散らしてしまったのは俺だ。
だから俺の私財から慰謝料をサンドラに払うことになった。
そして俺とロルフ殿、ヘルマンでサンドラがいる貴族牢に行った。
廊下側の護衛に鍵を開けてもらい、中に入ると、さらに奥に鉄格子のドアがあり、護衛が二人立っている。鉄格子の入り口の鍵を開けてもらってから、その二人に無理を言って廊下に出ていてもらってからサンドラがいる部屋に三人で入った。
あんなに艶々でサラサラだった金髪は少し強付いて見える。
頬もこけ、生気もなくソファに座っている。
「サンドラ。」
入ってきた事に気付かなかったか、ビクッとした後こちらを見た。
その後顔を歪め、床に跪き、土下座をしながら謝っていた。
「ダニエレ様・・・申し訳ございませんでした…。
自分の事しか考えず、大それた事を致しました。
どのような処罰も受ける所存でございます。」
「そんな所にいないでちゃんと座って。最後なんだから。」
そう俺が言った時の顔は悔しげに唇を噛んでいたのが見えた。
このままではレイチェルに何をするのか分からない。
夢の中でレイチェルから聞いたサンドラの過剰な俺への接触はレイチェルへの嫌がらせの数々だった。
そしてレイチェルへの復讐として選んだのが俺との性交。
最もレイチェルが傷付くだろう事を知っていての所業。
ヘルマンに聞いた時、俺とロルフ殿はサンドラへの怒りと殺気でヘルマンは顔を青くして倒れそうになっていた。
部屋の外にいた護衛が殺気に気付き飛び込んできたほどだ。
だからロルフ殿を連れてここに来た。
未だにサンドラはロルフ殿には気付いていない。
「俺達のせいで、レイチェル姫が怪我をしたのは聞いてる?」
「はい…ヘルマンに聞きました…。」
「何か言う事はある?あれば伝えるよ、今度お見舞いを兼ねてナースカスに行くことになったんだ。」
「王女殿下にお会いするのですか?」
「ああ、こちらのゴタゴタのせいで他国王女に大怪我を負わせてしまった。
下手すれば国交断絶だからね。
それだけの事をした事を自覚している。
それに彼女は私の“運命の番”だ。
彼女がもし故意に傷をつけられるような事があれば俺は決して許さない。
直ぐには殺さない、自分から殺してくれと懇願するまで甚振り続ける。
そして彼女のご家族も彼女を大事に思っている人達も同じ事をするだろう。
今回は多めに見るよ。
君が俺とやりたいから媚薬を盛ったのではなく、レイチェル姫を苦しめる為だけにこんな事をした事、ロルフ殿は許していないようだが、ね?」
後ろに立つロルフ殿を見たサンドラは目を見開き、顔色を変えた。
「わ、わた、わたくしは・・・ダニ…エレ様に…最後に・・・」
「サンドラ、ここにはヘルマンもいるよ、ヘルマンになんて言ったの?
俺は全て聞いたし、ロルフ殿も聞いたよ。
身体中の血液が沸騰するほどの怒りが湧いたよ。
てっきり私を思っての行動だと思っていたから。
なのに違っていて驚いてしまったよ。
後悔していないと言ったんだってね。
レイチェルが死んでしまえばいいと言ったんだって?
その辺どう思いますか、ロルフ殿。」
「あなたには申し訳ないと思っていた。
恋焦がれた人の為に努力し、やっと婚約出来たその日に、妹に邪魔された形になってしまい、申し訳なく思っていたし気にもなっていた。
少しでも何か力になれないかとも考えていた。
恨む気持ちも理解出来たし、妹もだからこそ修道院に入って一生独り身で過ごすと言っていたんだ。
そんな妹が日に日に窶れていくのを見るのは辛かった。
いつも支えてくれた婚約者にも頼れない。
私達家族には心配かけまいと無理をする。
誰にも頼れず、相談も出来ず、たった一人で毎日耐えていた。
そんな妹に貴方は、こちらからは何も出来ないのを良いことに、最も効果的に妹に対して嫌がらせをしていたそうだね。
泣いて縋った隙をみて、首筋や耳に口付け、指を絡め、胸を押し付ける。
何度諌められても辞めず、妹を攻撃し続けた。
貴方は何の証拠もないと言うだろうが、私もダニエレ殿もヘルマン殿も確信している。
今も反省すらしていない。
謝罪もしない。
貴方の目の奥には、私の向こうに見える妹を見て憎悪の炎を燃やし続けているのが分かる。
だから、今後は貴方が妹に対する嫉妬や妬みや怒りがなくなる時まで、ナースカス国は貴方のことを決して忘れない。
どんな小さな嫌がらせも、例えたまたま起きたトラブルでも、そのことに貴方がほんの少しでも関わっていたら、その時は国をあげてこちらに貴方を迎えにきましょう。
次期国王の私が自ら。
夢夢お忘れにならぬように。」
「サンドラ、レイチェルは何もしていない。
憎むのは彼女に対してではなく、私だ。
本当に謝っても許されないと思っているが、
申し訳なかった。
君は大事な幼馴染みだ、幸せになって欲しい。
もう二人で会う事も、こうやって話す事も無いが、遠くから君の幸せを祈っている。」
「何それ…。
王女様は何も悪くないの?
なんで?
私だって何も悪い事なんてしてない!
婚約者に抱きついて、キスして、朝まで抱かれる事の何が悪いの?
今は婚約者ではなくても、あの時私は婚約者だった。
何も悪い事はしていない。
謝罪なんかしない。
こっちこそ王女様に謝ってもらいたいくらいだわ!」
今までこんなに激高する姿は見た事なかった。
いつも穏やかに笑い、頬を赤らめ、ニコニコしている姿しか知らなかった。
驚いている俺の後ろの二人は殺気立っている。
ロルフ殿が口を開こうとした時、それまで黙っていたヘルマンがサンドラに冷たい口調で喋り出した。
「サンドラ、そんなに謝って欲しいならロルフ様と一緒にナースカスに行けばいい。
そしてロルフ様のお父上のナースカス国王陛下とお母上の王妃殿下に直接嘆願すれば良い、レイチェル王女陛下に謝って欲しいのだと。」
「そんな事出来るわけないじゃない!」
「何故?」
「ただの侯爵令嬢が他国の王族にそんな事言えるわけがないじゃない!」
「ちゃんと王族に畏怖する気持ちはあるんだな。てっきりそんなものはないのかと思ったよ。」
「あるに決まってるじゃない!当たり前じゃない!」
「だってお前はダニエレに媚薬を大量に飲ませ、他国の王族の殺人未遂まで起こしているのに、反省も謝罪もしないし、後悔もしていないじゃないか。
ダニエレには謝罪したのに、ロルフ殿には謝罪もしない。
あんなに頑張った王太子妃教育はもう忘れたのか?外交問題だぞ。
それに今回処刑されないのは、ただダニエレが大事にしたくなかったからだ。
ダニエレ自身ではどうする事も出来ない事情で今まで努力し続けた婚約者だったお前と婚約を解消せざるを得ないことに対する謝罪として決まった甘々の処罰だ。
ナースカスからダニエレに婚約の打診があったわけでもない。
ましてや修道院に入ろうとまでしていたレイチェル様はダニエレを奪おうともしていなかった。
なのに勝手に憎んで殺そうとしたお前はナースカス国に行ったら王族への殺害未遂で処刑は免れない。
ここでは婚約者に裏切られた可哀想な令嬢だが、一歩この国から出たらお前は犯罪者だ。
何故気付かないんだ、自分がどれだけの事をしたのか。
客観的に考えれば分かるだろ。」
「だって・・・こんなのってないじゃない…。
たった一日の婚約者なんていい笑い者だわ…特別美人でもない私は嘲りの格好の餌食だったわ…それでも耐えられたのはダニエレ様がいてくれたから。
いつかダニエレ様の隣りに立てるのならと…。
なのに婚約者でもなくなったら誰が私なんかを貰ってくれるのよ…」
「お前がどれだけ努力していたかを周りの皆んなが知っているし、夜会での凛とした姿に見惚れている男達がたくさんいた。
ダニエレが手放すなら俺は婚約の打診をするつもりだった。
お前が前さえ見てくれていたら、俺がお前を幸せにした!
なのにお前はあの日からダニエレに群がる他の令嬢と同じ存在と化した。
己の欲しいものを奪わせない為に、他人を傷付ける事だけを考えていた。
この場にもいない、何もしていない女性に対して即座に敵意を向けていた。
今までのサンドラなら冷静に熟考し、俺も含めて3人で対処しようとしただろうに…。
もうお前は幼馴染みでも友人でもなくなった。
この国の仇となる者となった…。」
親友はそう言うと静かに涙を流し、もう一人の幼馴染みは声を殺して泣いていた。
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今日は21時に2話投稿します!
お楽しみに!
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