貴方だったと分かっても

jun

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夢の中で

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ダニエレ視点


真っ暗な場所にいた。
目を閉じているのか、開いているのかさえ分からないほどの真っ黒な世界。
何処かなどどうでもいいと思い、身体を丸めただじっとしていた。

遠くで子猫が鳴いている。

迷子だろうか…

ずっと鳴いている子猫…

気になり、鳴き声の方へ這っていく。

少しずつ鳴き声が近くなるが、真っ黒なので何処にいるのか分からない。

「鳴いていないで、こちらにおいで。声のする方へおいで。」

俺の声に驚いたのか、鳴き声は一瞬止まったが、鳴き声が変わったが、何か鳴いている。

「迷子なのかい?それともお腹が空いた?食べ物はないけどこっちにおいで、一緒にいよう。」

「だれ?」


人⁉︎子猫じゃないのか⁉︎

「え?子猫じゃないの?人間なの?」

「あなたは誰ですか?」

「俺は…ダニ・・・ダニー。君は?」

「私は…レイ。」

「レイ…良い名前だね。どうして泣いていたの?」

「もう耐えられなかったの…」

「何に?」

「何もかもに…」

「俺もだ。一緒だね。」

「ダニーもなの?」

「そうなんだ…大事な人を傷付けてしまった…。一人で泣いていたのに慰めてもあげられなかった…」

「今からでも慰めてもあげたら大丈夫よ、すぐいってあげて…」

「俺が眠っている間にその人は遠くに行ってしまったんだ…」

「そうなのね…私は逃げてしまったの・・」

「でも…会いたい…。もう一度だけで良いから会いたかった・・・」

「君こそすぐ戻って会いに行けばいいよ、会えば何かが変わるかも。」

「会いたい…もう一度ダニエレ様に会いたい…」

「は⁉︎誰に会いたいの?」

「私の大切な人なの…ダニエレ様って言うの…でも…ダニエレ様はサンドラ様を選んだの…」

「違う!俺はサンドラを選んでなんかいない!俺が一番大切なのはレイチェル姫だ!」

「え・・・貴方は誰?私、ダニーなんて方知らないわ…」

「君は・・レイチェル姫?レイじゃなくてレイチェル姫なの?」

「ダニー・・・・ダニエレ様なのですか?私…夢の中でダニエレ様に会っているのかしら?」

「レイチェル、レイチェルなんだね?真っ暗で分からない!俺はダニエレだよ、何処にいるの?」

「ダニエレ様なのですか?どうしてこんな所にいらっしゃるの?」

「レイチェルがバルコニーから落ちて…意識が戻らないと聞いて…すぐにレイチェルの所へ行かなくちゃと思ったらここにいた。
レイチェルは身体は大丈夫なのかい?
痛い所はないかい?
近くに来て、無事を確かめたいから。」

「ダニエレ様は…サンドラ様を選んだのではないのですか…あの日ダニエレ様は・・・どなたか女性とご一緒でしたでしょ…」

「レイチェル、聞いてもらえないだろうか。
君を深く傷付けてしまった。
謝っても許してはもらえないだろうけど、話しを聞いて欲しい。
媚薬を盛られ、身体は裏切ってしまったが、心は、俺の気持ちは裏切ってはいない!
君がいない世界ならもう生きていてもしようがないと思ったら、ここにいた…。

レイチェル…レイチェル…お願いだから近くにいて欲しいんだ。近くに行ってもいい?」

「ダニエレ様はサンドラ様を選んだ訳ではないの…?一晩中女性の身体に触れていたのは薬のせいなの?
柔らかくて、熱くて、そしてダニエレ様を抱きしめていた女性を選んだのではないのですか?」

「ごめん、ごめんねレイチェル…最後だからと二人きりになった時に薬を大量に飲まされたらしい…みっともないね…情けない…君以外の女性に触れられるのは吐き気がするほどの不快感なのに、本能には逆らえなかった…。
ほとんど覚えてはいないけど、薬を盛られたと分かった時、悔しくて涙が出た…。
ごめんね、レイチェル…たくさん泣かせてしまった…いつもレイチェルが辛いのを我慢して明るくしてくれているのが分かっていたよ。なのにごめんね、辛い思いばかりさせてしまった…。
もう嫌われてしまっただろうか…」

「ダニエレ様・・・近くに行ってもいいですか、手を握って欲しいのです…とても寒くて…」

「俺が行くから、レイチェルはそこにいて。動かないでね、近くに行くから。
だから、辛かった事教えて、ちゃんと謝るから。」

「いつもサンドラ様は・・・ダニエレ様を抱きしめていらっしゃいました…。
それが辛くて辛くてたまらなかった…。
そして、テレス…私の婚約者がそんな私を見て辛そうにしているのが辛かった…」

「ごめんね、側にもいられず、泣かせるばかりで涙の一つも拭ってあげられない。
レイチェルの婚約者にも辛い思いをさせてしまっている。
でも、どうしてもレイチェルと共にいたいと思ってしまってごめんね…」

「後、サンドラ様は抱きついた時、首や耳に口付けるのが嫌…でした…。」

「え?そんな事されてた⁉︎」

「はい…おそらくソファに座っている時なのだと思います…。
ダニエレ様の手を取りサンドラ様の胸に押し付けるのも不快でした…。」

「は⁉︎胸⁉︎気付かなかった…。
レイチェル、すぐ近くにいるような気がするんだけど、手を動かせる?」

「お声がとても近いですね、ダニエレ様、何処にいらっしゃいますか?」

「あ、こっちか。
でも、レイチェルもおでこにキスされた後、抱きしめられたでしょ?
俺、悔しくて唇噛み切っちゃったよ。」

「あ、あれはダニエレ様がまたサンドラ様に触れられていたのが分かって…思わずテレスの前で泣いてしまったのです…ごめんなさい…。我慢していたのですが、堪え切れませんでした…。」

「あ、なんか良い香りがするよ、凄く近くにいるね、レイチェル。」

「ダニエレ様も良い香りがします。」

「手を伸ばすよ、触れるかもしれない、驚かないでね。」

「はい」

「「あ!」」

「触れたね」

「何か触りました!」

「もう少し近くにいくよ、今度はどうかな?」

「「あ…」」

「捕まえた…レイチェル」

「ダニエレ様!」

ようやく腕に触れて、グイッと優しく引き寄せた。
腕に抱き込んだレイチェルは少し冷たい。

「レイチェル、寒いね、温めてあげるよ、もう大丈夫だよ。」

「ダニエレ様…ダニエル様なのですね…とても温かいです…温かいです…」

「もう離れないよ、レイチェルが寒くないようにずっと抱きしめているよ。」

「毎日、私もこうして欲しかった…。ダニエレ様に私も触れたかった…」

「うん、俺もレイチェルにこうしたかった。」

「ダニエレ様は普段は“俺”と言うんですね」

「あ、忘れてた…こんな俺は嫌かな?」

「いえ、いろんなダニエレ様が知れて嬉しいです。」

「良かった、嫌われたくはないからね。
レイチェルも普通に話していいよ、俺もヘルマンと話すように話すから。」

「ヘルマン様?」

「そう、ヘルマン。俺の側近で幼馴染みで親友なんだ。
いつも怒られてる。」

「フフ、お兄様とテレスと同じですね。」

「テレス?」

「あ、私とお兄様の幼馴染みでお兄様の側近で、私の…婚約者…です。」

「あ~婚約者か…。うん、俺とヘルマンと同じだね。」

「はい…同じです…。少し聞いてもらえますか?」

「うん、なんでも話して誰もいないし。」

「そうですね、ここには私と、ダニエレ様しかいないのですね」

「そう、だから二人だけの秘密だ。」

そして彼女は話し出した。














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