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すぐに行くから
しおりを挟むダニエレ視点
あの夜から丸一日眠っていたらしい俺は、目が覚めると、真っ白い顔をしたヘルマンがいた。
「体調はどうだ?頭痛はないか?身体におかしいところはないか?」
泣きそうな顔で聞くヘルマンに、
「寝過ぎたからか、少し怠いが大丈夫だ」
「良かった・・・」
「何があったのかよく覚えてないんだが、サンドラの部屋に行ったのは夢か?」
「・・・夢ではない。サンドラの部屋でお茶を飲んだだろ…」
「そうだった、お茶を飲んで・・・・・」
そうだ。
お茶を飲んだ後、サンドラが隣りに座って、急に口付けをされて・・・・。
それから…
サンドラを抱いた…。
「俺は・・・サンドラを・・・・・」
「サンドラがお茶に薬を盛った。
自分も飲んで、訳の分からなくなったお前に襲われた。
お前よりも薬の量は少なかったから昨日の昼には手が覚めて、医者に診てもらった。
酷い有様だったが、しばらく休めば大丈夫だそうだ。
だが、お前には通常の倍の量を飲ませた。
下手したら脳に異常が出るほどの量だ。
サンドラは…処罰されるだろう、王族に薬を盛ったのだから。」
「・・・・・そうか。」
最後だからと油断した俺が悪いし、そこまで追い詰めてしまったことに、いたたまれない気持ちになった。
ほとんど覚えていないが、手酷く抱いた事は覚えている。
優しく慎ましいサンドラには幸せになって欲しかった。
クルトと共に幸せになって欲しかった。
「ダニエレ…お前は何も感じないのか…」
「感じない訳ないだろ!俺達のせいで・・・」
“俺達”・・・・レイチェル⁉︎
なんて事・・・・
他の女を抱いた感覚をレイチェルに一晩中伝え続けたのか、俺は⁉︎
なんて事を…。
さっきまでサンドラに怒りなんてなかったのにレイチェルを傷付ける事が分かっていたのに薬を盛ったサンドラに殺意すら湧く。
「ヘルマン・・・・今サンドラに会ったら…殺してしまいそうだ!」
レイチェルは一晩中泣いていたのだろうか…
俺がレイチェル以外の女を抱いたと分かって、どんなに辛かっただろう…。
会わせる顔がない…。
でも会いたい…。
レイチェル・・
レイチェル?
レイチェル…レイチェル?
何も伝わってこない…
眠っているのか?
「レイチェル姫は…大丈夫だろうか…。一晩中苦しめ続けてしまった・・・。」
「・・・・・もうすぐロルフ王太子が来る…。」
「王太子が⁉︎姫もか⁉︎」
「・・・お一人で来られるとさっき連絡が来た。夜中に到着予定だそうだ…。」
「お怒りなのだろうな・・・とても仲が良いご兄妹のようだったから。」
「…ダニエレ・・・レイチェル姫は…」
目が覚めた時も顔色の悪さには気付いていたが、今は泣きそうな顔のヘルマンはそれ以上は言葉に出来ないのか、俯いたまま黙ってしまった。
お一人で急ぎ、こちらに向かっているロルフ殿、何も感じられないレイチェルの感情、ヘルマンの態度…
「姫に・・・レイチェル姫に…何かあったのか…?ヘルマン、教えてくれ、姫に何があった⁉︎」
「今朝…ナースカス国から連絡があった。
レイチェル姫が・・・自室のバルコニーから…飛び降りたと…。」
「飛び・・降り…た…」
「植え込みが衝撃を和らげたお陰で即死は免れたが…頭を…打ち付けたらしい…」
「・・・自害…しようとしたのか…俺が…サンドラを抱いたから・・・」
そこからヘルマンの声も、外から聞こえていた様々な雑音も、何も耳に入らなくなった。
「一人にはしないから・・・すぐに…すぐ行くから・・・待ってて…くれ…」
目の前が真っ暗になり、俺は意識をなくした。
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