貴方だったと分かっても

jun

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誰か助けて

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レイチェル視点


小説を読んだ日の夕方に突然、胸が苦しくなった。
何?と思っていたら、後悔の気持ちがわいた。
会わなければ良かったと、なぜ会ってしまったのかと、突然後悔する気持ちが湧いたのは私の気持ちではない。
ダニエレ様だ。

ダニエレ様は後悔している。
胸が苦しい…
私と会わなければ良かったと思っている。
泣いてはダメ。
悲しんでもダメ。
今、ダニエレ様は悲しんでいる。

深呼吸を何回もする。

「レイチェル様?どうなさいました?大丈夫ですか?」

「ええ、大丈夫よ。新しいお茶をもらえるかしら、喉が渇いたわ。」

「はい、すぐ淹れて参ります」

なんとか落ち着かせた。

ダニエレ様も今は落ち着いたようだ。


こんなのが毎日続くのだろうか。
誰にも頼れず、私だけで耐えられるだろうか…。

お茶を飲んだら、少し眠ろう。
起きていては引きずられる。

温かいお茶を飲み、ベッドに入った。


寝ていて、突然、ざわっとした。
誰かに身体を触られたような感触。
周りを見ても誰もいない。
完全に目覚めれば、少しの不快感と切なさが感じる。
申し訳なさと、助けてあげたい気持ち。

今、ダニエレ様はサンドラ様といるのでは?

止めどなく流れてくる感情は、申し訳なさと切なさ。

今、私達にあった事を話している?

そして、抱きしめている。

胸に嫉妬が渦巻いた。

とても嫌だ。やめてほしい。
抱きしめるのをやめて。

その時、唇に何かが触れた。


キスしたの?
ダニエレ様とサンドラ様がキスしたの?

胸が苦しい・・・

もう嫌、やめて・・・

耐えられず声を殺して泣いた。

こんなの耐えられない。
もし、この後これ以上の事をされたら私は耐えられない…。

やめて、もうやめて…

ダニエレ様が怒っているのが分かっても悲しくて涙は止まらない。

唇を擦っている感触にホッとするが、やっぱり涙は止まらない。


もう嫌。

こんなの一人では耐えられない。

そして、意識をなくした。




どれくらい経ったのか、外は真っ暗だった。
食欲はない。

しばらくボォーっとしていたら、寝室のドアをノックする音がした。

「レイ、起きてるか?」

お兄様の声にホッとした。
テレスだったらどんな顔をして良いのか分からない。

「起きてるわ、お兄様。」

そっとドアを開けて入ってきたお兄様は、
「大丈夫か?」と聞いてきた。

「お兄様は知っていたのね、何が起こったのか。」

「お前も気付いたのか…。それで、ただの一目惚れではなく、番だったのか?」

「うん…私…もう一人では耐えられない・・・。助けて、お兄様…。」

「何かあったのか?」

「おそらく、ダニエレ様も気付いて、サンドラ様に話したようです。
納得はされなかったようです…。
ダニエレ様の感情を読むとおそらくそうかと思います…」

「ついこの前だもんな、婚約したの。納得なんか出来ないだろう…。
向こうはこれからどうするんだろうな?」

「私もそうですが、他の異性の方に触られると不快感があります。
ダニエレ様がサンドラ様を抱きしめた事も分かりました…。
サンドラ様に無理矢理キスされたのも分かりました…。
私、もう・・・こんなの耐えられません…。
でも、私もテレスがいます…。
テレスは大事な人です。
でも、テレスと子作りなんて、きっと出来ません…、感覚がダニエレ様に伝わってしまいます…。
そんな事出来ません。
それに…多分、テレスに触れられません、もう…。」

「そんなになのか・・・」

「もう嫌です。私を何処か誰も来ない所に閉じ込めて下さい。
テレスを裏切るのも嫌です。
でも、ダニエレ様を悲しませるのも嫌です。悲しい思いをさせたくないのです…。」

「ハァ…なんでこんな事に・・・。

父上には報告した。テレスにも俺が言った。テレスは大人だ。取り乱すような事はなかったが、ショックは受けていた。
しばらく会いには来ないかもしれないが、会いに来た時は、話してやってくれ。」

「ごめんなさい…テレス…ごめんなさい・・」

「今日はもう遅い、眠くなくても眠れよ。
それとも何か食べるか?」

「何もいらない。」

「寝るまで付いててやる。横になれ。」

「ありがとう、お兄様。」

「俺も父上も付いている。これからの事もちゃんと考えるから安心しろ。」
と頭を撫でてくれた。

「ありがとう、側にいてね。」

「ああ、だから目を閉じて、眠りなさい。」


お兄様の優しさと、誰にも言えなかった辛さが無くなり、少しだけ安心出来た。


ダニエレ様は眠ったかしら…。
どうかダニエレ様が、私と同じように安心して眠れますように。
大好きです…ダニエレ様…

少しでもダニエレ様の気持ちが落ち着くようにと、心から祈った。
そして、サンドラ様とテレスの事を思うと辛くて堪らなくなったが、溢れた涙をお兄様が拭ってくれて、やっと落ち着いて、眠れた。


夢には、あの日バルコニーでの短くても幸せだったあの時、笑顔で手を振ってくれたダニエレ様が出てきた。


朝、目覚めて、夢だったのかと悲しくなったが、グッと堪え、気合いを入れた。
ダニエレ様を苦しめたくはないし、これからテレスを苦しめる私には泣く資格はないのだから。












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お久しぶりでございます。
もの凄く投稿が開いてしまい、大変申し訳ありませんでした。
今日は3話一気にあげましたが、明日からは一日1話、7時に投稿予定です。

その他の連載の作品も投稿していきますので、また楽しんで頂けたら嬉しいです。
よろしくお願い致します。


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