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あの姫は誰だ
しおりを挟むダニエレ視点
私はアティリア王国の王太子、ダニエレ・アティリア、18歳だ。
今夜は私とサンドラの婚約発表のパーティーがある。
サンドラは婚約者候補として幼い頃から王太子妃になる為の教育をしてくれていた幼馴染みとも言える女性だ。
愛とか恋とかそういったものはないが、サンドラとなら、この国、国民、臣下を守り、さらに発展させ、豊かで幸せな国を作っていく事が出来ると思っている。
その為の第一歩が今夜だ。
お揃いの衣装で、壇上に並んで座り、諸外国の来賓の挨拶を受けていた時、一人の女性が目に入った。
あの女性は誰だ…。
金髪が照明を浴び、キラキラと光り輝いていて、その女性にだけ光が当たっているように、目が離せなかった。
チラチラとその女性を見ていたが、
「ダニエレ様、何か気になるものでもございましたか?」
とサンドラが聞いてきた。
「いや、何だか目がおかしいのか、チカチカするんだ…済まない、大丈夫だ。」
「挨拶が終われば、ダンスだけです。もう少しの辛抱ですよ。」
と優しく労ってくれた。
他の女性を見ていた事が恥ずかしくなり、目の前の事に集中した。
挨拶が進み、あまり深い付き合いはないナースカス国の王太子と王女の番になった。
目の前で頭を下げている王女が、顔を上げると、全身に雷を受けたような感覚が走った。
驚いて王女を見ると、おそらく私と同じであろう顔をしている。
隣りの兄である王太子が上手く誤魔化してくれて、私もハッとし、挨拶を終えた。
今のは何だったのだろう。
だが、まだまだ挨拶は続く、少し間が空いた時、
「今日は具合が悪いのですか?いつもと違います、大丈夫ですか?」とサンドラが心配する。
「大丈夫だ。気を遣わせて済まない。」
サンドラに心配かけるわけにはいかない、もうあの王女を気にしないようにとしても、やはりチラチラ見てしまう。
一体なんなんだ。
それに王女も私をチラチラ見ている。
視線が合うと、心の底から嬉しく思ってしまうのは何なのだ!
今日初めて会ったあの王女の側に行きたい気持ちをグッと堪え、なんとか挨拶を終えて、ダンスとなった。
「ようやく婚約者としてダニエレ様とダンスが踊れます。」と頬を染め微笑むサンドラは美しい。
「そうだな、父上達が終わったら、私達の番だ、行くぞ。」
私達の番になり、ワルツを踊る。
時折視界に入る王女を見ると、涙を溢していた。
思わず手に力が入った。
「痛いです、ダニエレ様。」
「済まん、サンドラが美しくて力が入ってしまった。」
「まあ、ダニエレ様ったら。」
上手く誤魔化したが、涙を溢した王女が気になる。
私達のダンスが終わり、大勢の人がダンスを踊り出した。
王女を見つける事が出来ない。
交流のある隣国の外交官とサンドラと共に雑談をしていた時、ダンスを踊る王女を見つけた。
やはり、一人だけに照明が当たっているように見える。
ジッと見つめないように気を付けながら、気取られないように、王女を見た。
泣いてはいないが、具合が悪そうだ。
すると、ダンスの途中で、兄に肩を抱かれ会場を後にする後ろ姿が見えた。
思わず、
「他国の王族の方の体調が悪そうだ。少し様子を見てくる。」と言い、二人を追った。
声をかけると、レイチェル姫は、驚いた顔だが、泣きそうな顔になり、すぐ視線を外し、俯いた。
休憩場所までの案内を願い出たが、断られてしまった。
あんなに辛そうで、抱えて行ってあげたかった…。
待て。
何を思った⁉︎
抱えて行ってあげたかった⁉︎
一体何なんだ。
しばらく二人の後ろ姿を見ていたが、サンドラの元に戻った。
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