信じないだろうが、愛しているのはお前だけだと貴方は言う

jun

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何故

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ジャン視点


何かと忙しくて仕事ばかりの生活が続いた。
ジャックにも会えず、リアさん達にも会う暇はなかった。

社交界での私の評価が変わったせいか、断れないお誘いも増え、毎日忙しくしていた。

そんなある日息抜きがてら王都の市場を散歩していた時、見覚えのある銀髪が視界に入った。
可愛らしいワンピースを着て、エプロンを付けているリアさんがユリアさんと買い物をしていた。
驚いて、思わず大声を出してしまった。

「リアさん⁉︎」

「わあ、ビックリした!ジャン様⁉︎どうしてこんな所に⁉︎」

「息抜きに散歩してました。どうしたのですか、その姿は⁉︎とても可愛らしいですが。」

「え⁉︎あ!エプロン!」

「あ!リア様、忘れていました、エプロン!」

2人で慌てている姿に笑ってしまい、

「お急ぎでなければ、エプロンを外して、お茶でもしませんか?何をしていたのか教えて下さいね。」

そして、近くのカフェに入り、リアさんのエプロンの訳を教えてもらった。

なんとも愛らしい指令を出したルーロック伯爵に拍手を贈りたいと思った。

たくさん勉強したいから留学したいのだと、真剣に話す様子は、リアさんらしいと思った。
その為に日々、お掃除などを頑張っているリアさんは可愛らしいのだろうなと微笑んでしまう。
今も市場で野菜を値切るのだと張り切っている。
野菜など値切らなくてもいいのにと思うが、とても楽しそうなので、その姿を見てみたいと思った。
だから離れているので見ていていいか聞くと、
恥ずかしいけど良いと言ってくれた。

カフェを出て、ユリアさんと離れてリアさんの値切りを見ていた。
身振り手振りでトマトを値切っている。
お店の人も面白がってなかなか値切らない。
しまいには、
「お願いします!」と頭を下げて、ようやく値切ったうえに、おまけももらっていた。
嬉しそうに戻ってくる姿は抱きしめたいほど可愛らしかった。
だから、たまに市場に行くようにすると、何度かリアさんに会えた。

そんな中、久しぶりにジャックの顔を見ようと病院に行くとミレーヌと偶然会った。
ミレーヌはだいぶ安定したらしく、ジャックの事も可愛がっていて、母乳もあげているらしい。
軽く挨拶をしたが、私の顔を見ずに話す様子が気になったが、反省しているのかと思い、そのまま別れた。


浮かれていた私は、気付かなかった。
私の秘密の恋人の噂に。

結婚しているのに、無防備に街でリアさんを誘ってカフェなどに行ってしまった。
愛おしそうにリアさんを見つめてしまった。
そんな事にも気付かなかった私は、その後死ぬほど後悔する事になる。


その後は忙しくて散歩もままならない生活を送っていた時、ノアさんから手紙が来た。

ノアさんとリアさんの2人で久しぶりに私に会いたいという内容だった。
すぐに都合をつけ、我が家に招待した。

久しぶりの休みに2人が来る事、こんな嬉しい事はない。
屋敷のみんなに、大切な人達が来るのでよろしくと伝え、当日は今か今かと待っていた。

馬車から降り、挨拶すると2人は私の所に駆け寄ってきた。
屋敷を案内し、サロンで楽しく3人でお茶を飲んでいた時、来客の知らせが来た。

タイミングの悪い事にミレーヌだった。

たまたま通ったので、ミレーヌが使っていた部屋に置いたままにしている荷物を少し持っていきたいのだと言う。
それは構わないが、今来客中だと言うと、屋敷に招待しているほど仲が良いなら私の事も知っているだろうから、迷惑をかけてすまなかったと謝りたいので挨拶させてもらっても良いかと聞いてきた。
せっかく変わってきたミレーヌを無碍にも出来ず、サロンに案内した。

ノアさんはおらずリアさんだけがいた。

するとミレーヌが、
「そう・・この人が・・・・」と言ったらツカツカとリアさんの側に行ったと思ったら、急にリアさんが倒れた。

え…と思ってリアさんに駆け寄ったら、ミレーヌは血をつけたナイフを持ち、リアさんの胸は真っ赤になっていた。

すぐナイフを叩き落とし、リアさんの刺された箇所を手で抑えた時、ノアさんが部屋に駆け込んできた。

すぐに医者を呼べと叫び、ミレーヌを捕まえろと言うが、ノアさんは動かない。
とにかく早くと思い、怒鳴るとノアさんは動き出した。
ミレーヌを押さえつけ、何か縛るものを持ってこいと指示している。
部屋の状況を見て、皆が迅速にそれぞれが動き、リアさんをすぐ近くの客室に運んだ。
ノアさんはミレーヌを縛り、騎士隊が駆けつけるまで、ミレーヌを捕まえていた。
医者が到着し治療が始まったのでノアさんの所に行くと、唇を噛んで立っていた。
私の姿を見て、目を見開くと、唇から血が滴った。

私はボォーっと立っているミレーヌに何故やったのか問い詰めたかったが、今口を開くとミレーヌを殺してしまいそうで、黙っていた。
騎士隊が到着し、ミレーヌを引き渡した。
話しを聞きたいので、状況が分かる方と言われ、私が説明した。
ノアさんは黙って聞いていた。
時折質問され、それに答える以外喋らなかった。
今日は混乱しているでしょうから、明日改めて来ると言って騎士隊は帰って行った。

玄関で私とノアさんはずっと立っていた。

「ノア…さん、申し訳…ありません・・私が・・ミレーヌ…妻を・・招き入れてしまいました・・・すみません…」

「俺が・・・トイレに行かなかったら…俺が・・・側に、いたら・・・」

執事に服を着替えるように言われ、2人で無言のまま、着替えにいった。

着替え終わって、リアさんのいる客室に行くと、ノアさんが着替えてドアの前に立っていた。
執事に至急、ルーロック伯爵家とエリソン侯爵家、レグリス子爵家に連絡を頼み、ノアさんとリアさんの治療が終わるのを待った。

「あの人は…ジャニス様の奥さんなんですか?」

「はい…今は実家にいます。今日はたまたま通ったので、置きっぱなしの荷物を持っていきたいと言っていました。
自分の事で私に迷惑をかけていたから、屋敷に招待するほど親しい人にご挨拶したいとサロンに連れて行ってしまいました・・・・・。
何故リアさんが刺されたのか分からないのです…本当にすみませんでした…私の落ち度です…。」

「今は・・・何も考えられなくて・・・すみません…」

その後もドアの前に立ち続けた。

どれくらい時間が経ったのかも分からないほど立っていたら、ドアが開いた。

「なんとか血を止め、傷を塞ぎました。
あと少しズレていたら心臓でした。
出血が酷く、体力が持てばなんとか持ち堪えると思いますが…今はなんとも言えない状況です…。
すぐにご家族をお呼びして下さい。」

その後はどう動き、何をしたのか覚えていなくて、気付けばアントンがいた。

「ジャン!しっかりしろ!ジャン!」

「アン・・トン・・」

「あのお兄ちゃんは彼女に付いてる。
もうすぐルーロック伯爵達が到着するそうだ。しっかりしろ!俺は執事のじいちゃんに呼ばれた。」

「はい…」

「俺が付いてる、大丈夫だ!大丈夫、大丈夫だから。」
と私を抱きしめ、何度も大丈夫と言ってくれた。















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