信じないだろうが、愛しているのはお前だけだと貴方は言う

jun

文字の大きさ
上 下
61 / 78

ララの変化

しおりを挟む


ノア視点


この数ヶ月にあった全ての謎がほとんど解けた。
あまりにもたくさんの事があり過ぎて、それが一気に片付いたからなのか、体力が落ちていたのかあの後寝込んでしまった。
ララが泊まり込みで看病してくれた。
なのに殆ど朦朧としていて、一度ララだと思って手を握ったらジャニス様だった。
とても温かった。
恥ずかしかったが。

アルバス伯爵が断罪された時、ジャニス様が俺たちの為にアルバス伯爵を恫喝したらしい。
ジョシュア殿に聞いた。
あのジャニス様が恫喝したなんて信じられなかったけど、嬉しかった。

やっと仕事に復帰出来たと思ったら、ララが大変だとパトリックが泣きついてきた。
何事かと思ったら、ララが留学する為に掃除、洗濯、料理、裁縫、買い物、着替え、入浴、全て1人でやり出したと、とんでもない事を言った。
驚いてすぐにララの所に行ったら、使用人に混ざり、可愛いワンピースを着て、エプロンまでして、雑巾を絞っていた。

「ララ⁉︎何してるの⁉︎」

「ノア!お掃除を教えてもらってるの!とっても勉強になるの!雑巾は濡らすだけでは駄目なのよ、とっても固く絞らないとビシャビシャになってしまうの。みんなの大変さが分かって良かった。」

可愛い笑顔で楽しそうに掃除をしている姿は、これはこれで良いかもと思った。
パトリックは手伝いという名の邪魔をしていたが、俺はいつまでも見ていたかった。

ララがひと段落ついた時、何があったのか聞いた。

今回の事で、ララは自立しなければと思ったらしい。
もっといろんな経験を積み、勉強したいのだと。
そして、エリーのお腹の中の子供が誰の子供か分かるまでは俺と婚約は出来ないと言われた。だったらその間にたくさん勉強したい、だから留学させてくれと言ったら、1人で何でも出来るようになったら考えるとおじさんに言われて、今に至ったようだ。

それからは暇を見つけてはララの様子を見に行った。
一生懸命に拭き掃除をし、廊下をビシャビシャにするララ。
汚れが取れず延々洗濯しているララ。
厨房の端で、どんだけ割るの?ってほど卵を割るララ。
延々見ていられる。
面白くて、笑うと怒り、褒めても怒る。


でもふと思う。
もし結婚出来なかったらと。

エリーが生んだ子が俺の子供だったら・・・。

違った時、ララが俺を選ばなかったら・・・。


考えると胸が苦しくて、泣きそうになる。
その時、俺はどうするだろう。

ララは変わろうとしている。
変わった時に俺を選んでくれるだろうか。


俺も変わろうと思った。
ただ与えられた任務をこなすだけだった。
もっと上を目指したい。
そう思った。

だから、副団長に相談した。
団長は背中で教えるタイプだから、教えを乞うのは副団長しかいない。
副団長に相談すると、
「ノアは真面目だけど、柔軟性がありませんし、視野が狭いところがあります。
貴方の優しさは長所であり短所です。
中途半端な優しさは優柔不断と変わりません。
もっと視野を広げ、人を観察しなさい。
視線、目線、汗、指先、ほんの少しの揺れ、堅さ、たったそれだけでわかる事がたくさんあります。
今の貴方は、拳に力が入っています。
ちょっとの怒りと恥ずかしさ、
汗が滲んできました。
バレたと思いましたね?
目線が泳いでいます。
動揺していますね。
ま、そんな感じに覚える事はたくさんあります。
毎日、休憩や巡回、ちょっとした時、観察するようにしなさい。
後は訓練。
対人戦はまだまだです。
後、体術は良いのですが、打力が弱い。
体幹と筋肉を鍛えなさい。
今日は以上です。
また明日。」

と一気に言われ、泣きそうになった。

だから毎日言われた事をやった。
訓練の時、副団長が今まではなんだったの?って位厳しくなった。
それを見ていた団長が、
「おお!ノアやる気満々だなあ、俺も相手してやるぞ!」と変にやる気を出してきた。

辛い時はララに会いに行って、癒された。
段々様になってきたけど、なんかぎこちないララが可愛くて笑えた。

「これを自分で買ったの!可愛いでしょ!」と見せてくれたガラスのアクセサリーはとっても可愛いくてララに似合っていた。
今までは宝石以外つけた事もなかったのに、存在すら知らなかった安物を嬉しそうに見せてくれるララが愛おしいと思った。

うん、明日も頑張れる!

そんな生活が2か月程続いた。

俺とララで久しぶりにジャニス様に会おうとなって連絡したら、ラインハル侯爵邸に招待してもらった。
ジャニス様とはなかなか会えなくて、ララは何度か街でお茶をした事があったらしい。
エプロンをして買い物している姿に驚いて声をかけたらしい。
ララもユリアもエプロンは外して出掛けてよ!

ジャニス様は一度招待したかったそうで、喜んで2人でお邪魔すると返事した。

休みを1日追加したら副団長にめちゃくちゃ嫌味を言われたが挫けなかった。

ジャニス様へのお土産を持ち、馬車の中で、ララのお掃除の失敗談を聞き、2人で笑った。

ラインハル侯爵邸に着き、馬車を降りるとジャニス様が玄関先で待っていてくれた。

「ノアさん、リアさん、お久しぶりです。」

久しぶりのジャニス様に俺もララも嬉しくて駆け寄った。

屋敷の中を案内してくれて、日当たりの良いサロンで3人でお茶を飲み、またララの失敗談で笑った。
途中、ジャニス様が来客が来たと言って退席したので、俺も今のうちにトイレに行こうと思って、席を外した。
トイレに案内してもらって、待っててくれた執事の人が歩きながら壁の家族の肖像画の説明をしてくれていた時、ガシャンと大きな音がした。
音がした方向が、さっきいたサロンからだったような気がしたから走った。

「ララ!」と言って部屋に飛び込むと、

見た事のない女が立っていた。

床に倒れたララの胸を手で抑えながら、
「医者を早く!誰か、ミレーヌを確保して下さい!早く、ノアさん、ノア!その女を捕まえろ!」
と叫ぶジャニス様がいた。
















しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください> 私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】 私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。 その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。 ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない 自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。 そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが―― ※ 他サイトでも投稿中   途中まで鬱展開続きます(注意)

【完結】幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います

菊池 快晴
恋愛
令嬢メアリーは、幼い頃から将来を誓い合ったゼイン伯爵に婚約破棄される。 その隣には見知らぬ女性が立っていた。 二人は傍から見ても仲睦まじいカップルだった。 両家の挨拶を終えて、幸せな結婚前パーティで、その出来事は起こった。 メアリーは彼との出会いを思い返しながら打ちひしがれる。 数年後、心の傷がようやく癒えた頃、メアリーの前に、謎の女性が現れる。 彼女の口から発せられた言葉は、ゼインのとんでもない事実だった――。 ※ハッピーエンド&純愛 他サイトでも掲載しております。

成人したのであなたから卒業させていただきます。

ぽんぽこ狸
恋愛
 フィオナはデビュタント用に仕立てた可愛いドレスを婚約者であるメルヴィンに見せた。  すると彼は、とても怒った顔をしてフィオナのドレスを引き裂いた。  メルヴィンは自由に仕立てていいとは言ったが、それは流行にのっとった範囲でなのだから、こんなドレスは着させられないという事を言う。  しかしフィオナから見れば若い令嬢たちは皆愛らしい色合いのドレスに身を包んでいるし、彼の言葉に正当性を感じない。  それでも子供なのだから言う事を聞けと年上の彼に言われてしまうとこれ以上文句も言えない、そんな鬱屈とした気持ちを抱えていた。  そんな中、ある日、王宮でのお茶会で変わり者の王子に出会い、その素直な言葉に、フィオナの価値観はがらりと変わっていくのだった。  変わり者の王子と大人になりたい主人公のお話です。

【完結】聖女の手を取り婚約者が消えて二年。私は別の人の妻になっていた。

文月ゆうり
恋愛
レティシアナは姫だ。 父王に一番愛される姫。 ゆえに妬まれることが多く、それを憂いた父王により早くに婚約を結ぶことになった。 優しく、頼れる婚約者はレティシアナの英雄だ。 しかし、彼は居なくなった。 聖女と呼ばれる少女と一緒に、行方を眩ませたのだ。 そして、二年後。 レティシアナは、大国の王の妻となっていた。 ※主人公は、戦えるような存在ではありません。戦えて、強い主人公が好きな方には合わない可能性があります。 小説家になろうにも投稿しています。 エールありがとうございます!

【完結】元婚約者の次の婚約者は私の妹だそうです。ところでご存知ないでしょうが、妹は貴方の妹でもありますよ。

葉桜鹿乃
恋愛
あらぬ罪を着せられ婚約破棄を言い渡されたジュリア・スカーレット伯爵令嬢は、ある秘密を抱えていた。 それは、元婚約者モーガンが次の婚約者に望んだジュリアの妹マリアが、モーガンの実の妹でもある、という秘密だ。 本当ならば墓まで持っていくつもりだったが、ジュリアを婚約者にとモーガンの親友である第一王子フィリップが望んでくれた事で、ジュリアは真実を突きつける事を決める。 ※エピローグにてひとまず完結ですが、疑問点があがっていた所や、具体的な姉妹に対する差など、サクサク読んでもらうのに削った所を(現在他作を書いているので不定期で)番外編で更新しますので、暫く連載中のままとさせていただきます。よろしくお願いします。 番外編に手が回らないため、一旦完結と致します。 (2021/02/07 02:00) 小説家になろう・カクヨムでも別名義にて連載を始めました。 恋愛及び全体1位ありがとうございます! ※感想の取り扱いについては近況ボードを参照ください。(10/27追記)

貴方にはもう何も期待しません〜夫は唯の同居人〜

きんのたまご
恋愛
夫に何かを期待するから裏切られた気持ちになるの。 もう期待しなければ裏切られる事も無い。

大好きなあなたを忘れる方法

山田ランチ
恋愛
あらすじ  王子と婚約関係にある侯爵令嬢のメリベルは、訳あってずっと秘密の婚約者のままにされていた。学園へ入学してすぐ、メリベルの魔廻が(魔術を使う為の魔素を貯めておく器官)が限界を向かえようとしている事に気が付いた大魔術師は、魔廻を小さくする事を提案する。その方法は、魔素が好むという悲しい記憶を失くしていくものだった。悲しい記憶を引っ張り出しては消していくという日々を過ごすうち、徐々に王子との記憶を失くしていくメリベル。そんな中、魔廻を奪う謎の者達に大魔術師とメリベルが襲われてしまう。  魔廻を奪おうとする者達は何者なのか。王子との婚約が隠されている訳と、重大な秘密を抱える大魔術師の正体が、メリベルの記憶に導かれ、やがて世界の始まりへと繋がっていく。 登場人物 ・メリベル・アークトュラス 17歳、アークトゥラス侯爵の一人娘。ジャスパーの婚約者。 ・ジャスパー・オリオン 17歳、第一王子。メリベルの婚約者。 ・イーライ 学園の園芸員。 クレイシー・クレリック 17歳、クレリック侯爵の一人娘。 ・リーヴァイ・ブルーマー 18歳、ブルーマー子爵家の嫡男でジャスパーの側近。 ・アイザック・スチュアート 17歳、スチュアート侯爵の嫡男でジャスパーの側近。 ・ノア・ワード 18歳、ワード騎士団長の息子でジャスパーの従騎士。 ・シア・ガイザー 17歳、ガイザー男爵の娘でメリベルの友人。 ・マイロ 17歳、メリベルの友人。 魔素→世界に漂っている物質。触れれば精神を侵され、生き物は主に凶暴化し魔獣となる。 魔廻→体内にある魔廻(まかい)と呼ばれる器官、魔素を取り込み貯める事が出来る。魔術師はこの器官がある事が必須。 ソル神とルナ神→太陽と月の男女神が魔素で満ちた混沌の大地に現れ、世界を二つに分けて浄化した。ソル神は昼間を、ルナ神は夜を受け持った。

処理中です...