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ララの変化
しおりを挟むノア視点
この数ヶ月にあった全ての謎がほとんど解けた。
あまりにもたくさんの事があり過ぎて、それが一気に片付いたからなのか、体力が落ちていたのかあの後寝込んでしまった。
ララが泊まり込みで看病してくれた。
なのに殆ど朦朧としていて、一度ララだと思って手を握ったらジャニス様だった。
とても温かった。
恥ずかしかったが。
アルバス伯爵が断罪された時、ジャニス様が俺たちの為にアルバス伯爵を恫喝したらしい。
ジョシュア殿に聞いた。
あのジャニス様が恫喝したなんて信じられなかったけど、嬉しかった。
やっと仕事に復帰出来たと思ったら、ララが大変だとパトリックが泣きついてきた。
何事かと思ったら、ララが留学する為に掃除、洗濯、料理、裁縫、買い物、着替え、入浴、全て1人でやり出したと、とんでもない事を言った。
驚いてすぐにララの所に行ったら、使用人に混ざり、可愛いワンピースを着て、エプロンまでして、雑巾を絞っていた。
「ララ⁉︎何してるの⁉︎」
「ノア!お掃除を教えてもらってるの!とっても勉強になるの!雑巾は濡らすだけでは駄目なのよ、とっても固く絞らないとビシャビシャになってしまうの。みんなの大変さが分かって良かった。」
可愛い笑顔で楽しそうに掃除をしている姿は、これはこれで良いかもと思った。
パトリックは手伝いという名の邪魔をしていたが、俺はいつまでも見ていたかった。
ララがひと段落ついた時、何があったのか聞いた。
今回の事で、ララは自立しなければと思ったらしい。
もっといろんな経験を積み、勉強したいのだと。
そして、エリーのお腹の中の子供が誰の子供か分かるまでは俺と婚約は出来ないと言われた。だったらその間にたくさん勉強したい、だから留学させてくれと言ったら、1人で何でも出来るようになったら考えるとおじさんに言われて、今に至ったようだ。
それからは暇を見つけてはララの様子を見に行った。
一生懸命に拭き掃除をし、廊下をビシャビシャにするララ。
汚れが取れず延々洗濯しているララ。
厨房の端で、どんだけ割るの?ってほど卵を割るララ。
延々見ていられる。
面白くて、笑うと怒り、褒めても怒る。
でもふと思う。
もし結婚出来なかったらと。
エリーが生んだ子が俺の子供だったら・・・。
違った時、ララが俺を選ばなかったら・・・。
考えると胸が苦しくて、泣きそうになる。
その時、俺はどうするだろう。
ララは変わろうとしている。
変わった時に俺を選んでくれるだろうか。
俺も変わろうと思った。
ただ与えられた任務をこなすだけだった。
もっと上を目指したい。
そう思った。
だから、副団長に相談した。
団長は背中で教えるタイプだから、教えを乞うのは副団長しかいない。
副団長に相談すると、
「ノアは真面目だけど、柔軟性がありませんし、視野が狭いところがあります。
貴方の優しさは長所であり短所です。
中途半端な優しさは優柔不断と変わりません。
もっと視野を広げ、人を観察しなさい。
視線、目線、汗、指先、ほんの少しの揺れ、堅さ、たったそれだけでわかる事がたくさんあります。
今の貴方は、拳に力が入っています。
ちょっとの怒りと恥ずかしさ、
汗が滲んできました。
バレたと思いましたね?
目線が泳いでいます。
動揺していますね。
ま、そんな感じに覚える事はたくさんあります。
毎日、休憩や巡回、ちょっとした時、観察するようにしなさい。
後は訓練。
対人戦はまだまだです。
後、体術は良いのですが、打力が弱い。
体幹と筋肉を鍛えなさい。
今日は以上です。
また明日。」
と一気に言われ、泣きそうになった。
だから毎日言われた事をやった。
訓練の時、副団長が今まではなんだったの?って位厳しくなった。
それを見ていた団長が、
「おお!ノアやる気満々だなあ、俺も相手してやるぞ!」と変にやる気を出してきた。
辛い時はララに会いに行って、癒された。
段々様になってきたけど、なんかぎこちないララが可愛くて笑えた。
「これを自分で買ったの!可愛いでしょ!」と見せてくれたガラスのアクセサリーはとっても可愛いくてララに似合っていた。
今までは宝石以外つけた事もなかったのに、存在すら知らなかった安物を嬉しそうに見せてくれるララが愛おしいと思った。
うん、明日も頑張れる!
そんな生活が2か月程続いた。
俺とララで久しぶりにジャニス様に会おうとなって連絡したら、ラインハル侯爵邸に招待してもらった。
ジャニス様とはなかなか会えなくて、ララは何度か街でお茶をした事があったらしい。
エプロンをして買い物している姿に驚いて声をかけたらしい。
ララもユリアもエプロンは外して出掛けてよ!
ジャニス様は一度招待したかったそうで、喜んで2人でお邪魔すると返事した。
休みを1日追加したら副団長にめちゃくちゃ嫌味を言われたが挫けなかった。
ジャニス様へのお土産を持ち、馬車の中で、ララのお掃除の失敗談を聞き、2人で笑った。
ラインハル侯爵邸に着き、馬車を降りるとジャニス様が玄関先で待っていてくれた。
「ノアさん、リアさん、お久しぶりです。」
久しぶりのジャニス様に俺もララも嬉しくて駆け寄った。
屋敷の中を案内してくれて、日当たりの良いサロンで3人でお茶を飲み、またララの失敗談で笑った。
途中、ジャニス様が来客が来たと言って退席したので、俺も今のうちにトイレに行こうと思って、席を外した。
トイレに案内してもらって、待っててくれた執事の人が歩きながら壁の家族の肖像画の説明をしてくれていた時、ガシャンと大きな音がした。
音がした方向が、さっきいたサロンからだったような気がしたから走った。
「ララ!」と言って部屋に飛び込むと、
見た事のない女が立っていた。
床に倒れたララの胸を手で抑えながら、
「医者を早く!誰か、ミレーヌを確保して下さい!早く、ノアさん、ノア!その女を捕まえろ!」
と叫ぶジャニス様がいた。
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