信じないだろうが、愛しているのはお前だけだと貴方は言う

jun

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白紙の手紙

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お兄様が王都に戻り、私とお母様も遅れて王都に戻る事になった。
馬なら日帰り出来るが、馬車なら途中宿屋に一泊した方が身体は楽なので、宿屋に泊まる事にした。

いつも利用している所なので、従業員の方達とも顔見知りだ。

夕食を食べている途中、突然、顔見知りではない従業員の方が、
「突然申し訳ございません。ルーロック伯爵様の奥様とお嬢様で間違いございませんでしょうか?」と話しかけてきた。

護衛のハリーとガイルが側に来て私達の前に立った。
「君の顔には覚えがない。本当にここの従業員か。」

「はい。最近採用されましたので、お目にかかった事はございません。」

「用事があるなら君が来るのではなく、君の上司に報告してから声をかけるべきだ。」

「大変申し訳ございませんでした。落とし物をされたのでお渡しせねばと焦ってしまいました。」

「とにかく責任者を呼んでもらえるだろうか。君が本当にここの従業員か確認したい。」

「畏まりました。今お呼び致します。」

そう言って食堂を出て行った。

「何だったのかしら?悪い人には見えなかったけど。」とお母様。

「奥様、ここは常宿でほとんど顔見知りです。新人だったら尚更責任者じゃなくても先輩従業員に相談するでしょう。
ですから念の為、確認します。」

「分かったわ。ハリーもガイルもありがとう。」

しばらく待っても責任者を呼びに行った従業員は戻って来なかった。

その代わり、受付カウンターの従業員が手紙を持って私達の所にやって来た。

「食堂をご利用になっていたお客様が、落とし物を届けて下さったのですが、宛先がお嬢様のお名前でしたので、お持ちしたのですが、落とされましたか?」
と言って、手紙を差し出した。

「手紙?」

受け取ろうとしたら、ハリーに止められた。

「私が確認致します。」

ハリーが受け取り、封蝋には家紋もなく、差出人の名前も書かれてはいなかった。
「私が開けても宜しいでしょうか?
触った感じでは紙しか入っていないようです。開けてみますか?」

「お願い。開けてもらえる?」

ハリーが折りたたみナイフを胸元から出し、中から手紙を出した。

「何も書いていません。白紙です。」

「白紙?白紙を何故私に?」

「分かりません。ですが、私がお預かりして
明日は早朝にここを出ましょう。
急ぎ、本邸の旦那様にこの手紙を送ります。
食事が済み次第、部屋に奥様とお入り下さい。ドアの前に護衛をおきます。」

「気味が悪いわね…。分かったわ。」

何かされたわけでもないのに、ザワッとする不気味な出来事だった。

翌日、お父様が護衛を増やしてくれたのか、物々しい雰囲気の中、早朝に宿を出発した。
お昼前には屋敷に着いたが、お父様とお兄様、ノアが出迎えてくれた。
すぐに私とお母様を中に引き入れ、ようやくホッとした顔をお父様達はした。

「ただいま戻りました。なにかあったのですか、お父様?」

「変な手紙が届いたと聞いた、心配したよ。
何事もなくて良かった。」

「はい、私もお母様も何もありません。ご心配おかけし、すみません。それにしてもノアまできてくれるとは思わなかったわ。」

「俺も心配だったから顔を見て安心したかった。」

とりあえず湯浴みをし着替えを済ませ、お父様達の所へ顔を出した。

「お待たせ致しました。」

何かただならぬ雰囲気の3人に不安になる。

「お父様、何があったのですか?」

「ジェニーには後で話すが、リアも関係がない訳ではないから、説明しよう。」

そしてジャン様が娼館で聞き出した話しから、導き出された話しは恐ろしいものだった。

私達が到着するのを待って、お父様は王太子殿下にお会いするため、王宮へ向かった。
お兄様とノアはお父様が帰って来るまで、いてくれる事になり、まだ頭がついていけてない私は、

「あまりにも話しが大き過ぎて整理がつかないのだけど、確定した話しではないけど、可能性は高い話、という事?」

「そういう事だな。俺達もそこまでデカい話しだとは思ってなかった。
そして、まさかこのタイミングでリアに正体不明の男が接触してくるなんて思ってなかった。ごめんな、リア。
俺が一緒に帰って来ていたら怖い思いなんかしなかったのに。」

「怖くはなかったけど、気持ち悪かった。
話しかけてきた男の人は、身なりもきちんとしてたし、宿の従業員だと言われても何の違和感もなかったもの。
ハリーが対処してくれなかったら、話しを聞いてしまっていたもの。」

「ララ、何もなくて良かった。さっきおじさんが話していた通り、警戒はしていた方がいい状況になったんだ。
しばらく外出は控えた方がいい。
俺がララを絶対まもるけど、気をつけて。」

「うん、ありがとう。ノアも気をつけて。」

「でも、彼女は本当にそんな人と繋がっていたの?そこまでして私達を貶めたかったの?」

「それは分からない。だからもう一度彼女から話しを聞きたいと思っている。」

「私も聞いてみたいけど、無理よね…。
ノア、1人では絶対会わないでね。
お兄様も先走っては駄目よ。」

「リア、分かってるよ。ノアと2人で聞くから。」


急に変わってしまった状況に戸惑うばかりだった。


夕方、お父様が帰って来たのと入れ替わりにノアとお兄様はエリソン家に戻った。

バウンズ男爵令嬢と話しをする為に。















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