信じないだろうが、愛しているのはお前だけだと貴方は言う

jun

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綻び始めた事、絡み始めた事

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ノア視点


ジャニス様の話しを戻ってからすぐ団長に報告した。
すると、ジョシュア殿と王太子に呼ばれた。

「ノア、忙しいとこ済まない。少し話しを聞きたいと思ったんだ。」とジョシュア殿。

「いえ。
エリソン侯爵家嫡男ノアと申します。
ルカリオ王太子にご挨拶申し上げます。」

「会った事はなかったね、いつもジョシュアに話しは聞いてるよ。エリカ嬢の兄君だね。」

「はい。妹がエレーヌ様と仲良くさせて頂いております。」

「そうらしいね。エレーヌがエリカ嬢に纏わりついてるみたいだけどね。
それよりね、君が報告してくれたマスナルダの間諜の話しを詳しく聞きたいんだ。」

俺はエリーが外出した時のこと、ジャニス様から聞いた話を話した。

「じゃあその薬屋と雑貨屋が間諜の可能性があるんだね。
そして怪しい薬を君を嵌めた女性に渡したかもしれない、という事だね。」

「はい。実際本当にそんな薬があるのかは、ラインハル侯爵からの話しを聞いてからでないとなんとも言えませんが。」

「ラインハル侯爵か…彼は何だか大変だったみたいだけど、大丈夫なの?」

「ジャニス様は私と同じに嵌められて結婚したようですが、今は私達に協力して下さっています。
話しをしてみて、とても…とても素敵な方でした。」

「ほお~素敵とは?」

「私の婚約者・・・だったララミア嬢は、領地に戻り、静養していたのですが、落ち込んでいた彼女の話し相手をして下さったようで、その際私ともう一度話すよう後押ししてくれたのもラインハル侯爵なんです。
その後も色々と私やラミリア嬢、ラミリア嬢の兄のパトリックの相談ものってくれています。
とても穏やかで優しくて、カウンセリングを受けているようで、話終わった後は胸のモヤモヤがなくなるのは、毎回ですね。
だから俺達はみんなジャニス様が大好きなんです!」

「へえ~そんなに凄いんだぁ~一度俺も話してみたいな。
ラインハル侯爵は、友人に薬の事聞いてくれるんだよね?」

「はい、俺が…私が聞きに行っては良くないだろうからとジャニス様が聞いてくれるとの事です。」

「じゃあ、直接聞きたいからって言ってくれるかな。実はね、君ほど酷くはないんだけど、似た案件が数件こちらに報告が入っていてね、薬の出所がどうしても分からなかったんだ。
そしてその薬、数は少ないが我が国にもあるんだよ。管理は完璧で数が合わないって事もない。
なのに、その薬が使われて婚約破棄となったと疑われる事案がある。
なら、薬は何処から?ってなるだろ。
そしてその薬を使って婚約破棄になっている家は全て高位の家だ。これが偶然なのか必然なのか。他国が関わっているのなら何か意味がある。放っては置けないよね。」

「…それはウチも狙われた可能性があるって事ですか?」

「今はなんとも言えないね。そのエリー嬢?がどこまで知ってるのかによるかな。
相手の男がエリー嬢と偶然出会って、その相手がたまたま君だったから薬をあげたのか、エリー嬢に絆されて薬をあげたのか、まだ判断がつかないから。」

「エリーはだいぶ前からこの計画を立てていたようです。何件も薬屋を回り、希望の薬が見つからなかったのか、怪しい店にまで行っていたようですから。
あの薬屋は見かけは普通の薬屋ですから、薬屋が利用しようとしていたなら、もっと前に計画を実行していたと思います。
おそらくエリーから話しを聞いて、薬を渡したと考えればあのタイミングだったのかと思います。」

「どちらにしてもその薬が大量ではないにしろ存在しているという事になる。
それも街に他国の間諜が2人も長い期間潜んでいた。
おそらく向こうもこちらを警戒し始めているだろう。
エリー嬢と接触してしまったからね。
何故バレる危険を犯してまでエリー嬢を追ってきたのかはまだ分からないが、今後もエリー嬢の監視は怠らないようにしておいてね。
こちらから監視の者を出してもいいんだが、逆に警戒されてしまうから、エリソン家とギブソン家で上手くやってくれると助かるかな。」

「「御意」」

ルカリオ様に呼び出された後、すぐにジャニス様に、王太子に友人の方から聞いた話しをジャニス様から直接聞きたいとの旨を連絡し、数日後、ジャニス様から返事がきた。
王太子の都合が宜しければ明日にでも伺えるとの事。
急ぎジョシュア殿からルカリオ様に連絡してもらった。

翌日、ジャニス様を出迎え、ルカリオ様の執務室へ2人で向かっている時、
「ノアさんはあれからちゃんと休んでいますか?」と聞いてきた。

「はい。ジャニス様と話しをさせてもらってからは、きちんと食べて寝て、身体を動かしています。
心配して頂きありがとうございます。
ジャニス様はどうですか?休めていますか?」

「私の妻が生んだ子供、ジャックと名付けたのですが、早産だったのでとても小さいのです。血は繋がっておりませんが、赤子はやはり可愛らしいのでよく病院に行ったりはしますが、以前より問題なく過ごしています。
お気遣いありがとうございます、ノアさん。」

「早産というのは…どれくらい早かったのですか?」

「2ヶ月早く生まれました。
妻は最初、自分の子とは認めず、産まれたばかりの子に手をあげようとしました。
なので面会はさせていなかったのですが、今は自分の子と認めたようです。」

「ジャニス様は・・・今後どうされるのですか?」

「時期をみて離婚はします。一緒にいても私は彼女を愛せませんし、彼女がした事は許しません。
ですが、生まれた子は書類上私の子供ですから健やかに育つまで金銭面は援助しようと思います。」

「ジャニス様はどうしてそんなに優しいのですか?」

「優しいのかどうかは分かりません。
ただ私は、私の気持ち、考え、思いを周りにいる人に知ってもらいたいなと思っているだけなんです。
だから素直に言葉にしているだけなんですよ。

腹が立つ事はたくさんあります。
でも、怒りに任せ大きな声で怒鳴っても、相手が納得しなければ話すら聞いてもらえません。
私の妻はどんなに穏やかに話しても私の話しを聞いてはくれませんでした。
それもそうです。そうやって騒げば騒ぐほど私が逃げられないと分かってやっていたんですから。
それまでは“妹分”として可愛がっていました。本人も私の事を“兄”としか思っていないと言い続けていました。
でもそれは私の側にいる為の嘘でした。

その嘘の為に、婚約者とは別れ、ラインハル家の評判は地に落ち、私は妊娠させた幼馴染みを捨て、他の女性と結婚しようとした外道になってしまいました。
ですから、妻とは離婚以外にありません。」

「何というか・・・ジャニス様…ストレスって溜まらないのですか?」

「溜まります。そんな時は美味しい物を食べて、お酒を浴びるように飲むんです。
お気に入りの店にリアさんとユリアさんが来て、知り合いになったんですよ。

毎回ユリアさんはノアさんの事を怒っては酔っ払っていましたよ。
その時ユリアさんが話していた内容を聞いていて、なんとなく私と似たような状況だなと思ったんです。
リアさんは毎回ちっとも酔えなくて、ある日涙を瞳いっぱいに溜めて手も震えているのにワインをチビチビ飲んでいたんです。
あまりにも悲しそうだったので思わず声をかけてしまいました。
その時にリアさんと悪口合戦をしたのです。
とても楽しかったんですよ。
そうやってお店でストレス発散しています。」

「悪口合戦…」

「フフ、アソコがもげろと言っていました。」

「ええ⁉︎」

「面白いでしょ?今度一緒に行きましょう、ノアさん。」

「楽しそうです。行きたいです。」

「はい、楽しみです。」

気付けば執務室についており、2人で執務室に入った。

「ラインハル侯爵家当主ジャニス・ラインハルでございます。
お召しに与り罷り越しました。」

「態々済まなかったね、ノアがあまりに貴方の事を褒めるから話してみたくなった。
それに君が聞いた話しを直接聞きたかった。」

「はい、了承致しました。では、報告致します。」


ジャニス様が聞いた話しは、ジャニス様にとってはかなり嫌な話しだった。















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