38 / 78
壊れたラミリア
しおりを挟む謝罪をする事を決め、その後どうなるのかを考えた。
謝罪する人は、ノアを含めたエリソン侯爵家の方々、アルバート様、そして、エリー様。
エリー様以外は、私が謝る事などないと言ってくれるだろう。
だが、私が対応を間違えなければ、アルバート様とエリー様は婚約の解消などしなかった。
私が謝った事で何か変わる事はないだろうが、ケジメはつくと思う。
エリー様に謝罪したら罵声を浴びるだろう。
今更だとか偽善とか言われて、尚私を憎むかもしれない。ノアとは絶対別れないと言うかもしれない。
その時は、私もそれを受け止める。
どんなに辛くても受け止める。
全部私のせいだから。
ノアには、そばにいる、支えると言っておいて、覚悟を決めたノアに対して拒否してしまった、私の幼さと覚悟の無さを謝罪する。
おじ様やおば様、エリカにも私の間違った行いで起こったこの事件を謝罪し、ノアを傷付けてしまったと頭をさげよう。
おじ様達は許してくれるだろうが、私は私が許せない。だから謝るのだと説明しよう。
自己満足かもしれない。
でも、やはり謝罪はしたい。
私が謝る事で新たな火種が起きるだろうか…。
さらにエリー様を傷付けるのだろうか…。
この考えは間違っているのだろうか。
また一人で動いて迷惑をかけるなら、お父様かお兄様に相談しよう。
でもお父様に会うのは怖い。
もう自分に対して全く自信がない。
どう笑っていたのかも分からなくなっている。
誰とも喋らず、部屋に篭っている。
いつまで謹慎なのかは分からないけど、考えるには丁度いい。
あ、ノアはあれから何も言ってはこない。
手紙を書こうか…。
でも、また手紙を書いて迷惑をかけてしまうかもしれないと思うと、書けない。
でも、ひどい事を言ったことだけでも謝ろうか…
机に向かうが何も書けない。
ジッと便箋を見つめていた時、ドアの向こうからお兄様の声が聞こえた。
「リア、少し良いだろうか?」
「はい…」
部屋に入ってきたお兄様は私を見て、ギョッとしている。
そんなに驚くような顔なんだろうか?
「リア…ごめん、俺が余計な事言ったから…。俺がノアの思っている事、理由をちゃんと正確に伝えなかった。手紙に書いたのを読んだリアの気持ちを考えなかった。
リアを傷付けたのは俺だ。
ノアの事も傷付けた。普通にしてるが、ノアは落ち込んでる。
本当にごめん。」
「お兄様は悪くないわ。私が悪いんだもの。お父様の言う通り、覚悟もなかったし、自分の行動によって起こることの責任も分かってなかった。
私、エリー様に謝罪しようと思うの。
私がエリー様の婚約者だったアルバート様がお礼に来た時、お父様やお兄様と一緒に対応すれば良かったの。
なのに私が一人で対応してしまったんだもの、婚約者のいる方と二人きりで。
あの時、間違えなければこんな事にはならなかった。
だから、謝ろうと思うの。
私が悪かったんだもの。
おじ様にもおば様にもエリカにも謝るわ。
私のせいでこんな事になりすみませんって。
でないと、私は自分が許せないもの。
そのせいでエリー様の恨みを買っても仕方ないんだと思う。
私が何も考えていなかったから。
お兄様もごめんなさい、忙しいのに余計な仕事を増やしてしまって…」
「リア、リア、ちょっと何言ってるの!何でリアが謝るの?
それは違うよ、リア、聞いて!」
「ううん、全部私のせいだった。だから謝らないと。」
「違う、リア、聞いて、父上の所に行こう。ダメだよ、リア、しっかりして!」
お兄様に連れられ、お父様の執務室に入ろうとする。
「いや、お父様は部屋から出るなと言われたわ。私、部屋に戻るわ!また叱られてしまうから!」
「大丈夫だ、リア!入ろう、そして父上に話しを聞いてもらおう、ね、お兄ちゃんと一緒に行こう。」
「ダメ、だって私は何をやってもダメなんだもの、だから部屋でまた考えるわ。
今度こそ、ちゃんと考えるから!」
「何をしている!」
そこへお父様が執務室から出てきた。
「ごめんなさいごめんなさい、今部屋に戻るから!もう一度ちゃんと考えるから!
ごめんなさい、お父様、ごめんなさいごめんなさい…」
ポロポロ、涙が止まらなくなってしまった。
「リア、しっかりしなさい!リア!」
「ちゃんと考えるから!次はちゃんと迷惑かけないようにするから!
ごめんなさい…お父様…」
「リア、何を言ってる?リア、どうしたんだ?」
「父上…リアは・・・」
「何があったんだ!リアはどうしたんだ!」
「とにかく部屋に戻すよ…」
部屋に戻された私は、ベッドに寝かされて、
「ごめん…本当にごめん…お兄ちゃんが悪かった…」
と言ってお兄様が泣いていた。
「お兄様は悪くないから泣かないで。全部私が悪いんだから。泣かないで。」
お兄様はずっと私の手を握って泣いていた。
私も泣いていたが、いつの間にか眠ってしまった。
55
お気に入りに追加
1,465
あなたにおすすめの小説
形だけの妻ですので
hana
恋愛
結婚半年で夫のワルツは堂々と不倫をした。
相手は伯爵令嬢のアリアナ。
栗色の長い髪が印象的な、しかし狡猾そうな女性だった。
形だけの妻である私は黙認を強制されるが……
[完結]本当にバカね
シマ
恋愛
私には幼い頃から婚約者がいる。
この国の子供は貴族、平民問わず試験に合格すれば通えるサラタル学園がある。
貴族は落ちたら恥とまで言われる学園で出会った平民と恋に落ちた婚約者。
入婿の貴方が私を見下すとは良い度胸ね。
私を敵に回したら、どうなるか分からせてあげる。
本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
結城芙由奈
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います
<子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。>
両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。
※ 本編完結済。他視点での話、継続中。
※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています
※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。
政略結婚で結ばれた夫がメイドばかり優先するので、全部捨てさせてもらいます。
hana
恋愛
政略結婚で結ばれた夫は、いつも私ではなくメイドの彼女を優先する。
明らかに関係を持っているのに「彼女とは何もない」と言い張る夫。
メイドの方は私に「彼と別れて」と言いにくる始末。
もうこんな日々にはうんざりです、全部捨てさせてもらいます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる