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壊れたラミリア

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謝罪をする事を決め、その後どうなるのかを考えた。

謝罪する人は、ノアを含めたエリソン侯爵家の方々、アルバート様、そして、エリー様。

エリー様以外は、私が謝る事などないと言ってくれるだろう。
だが、私が対応を間違えなければ、アルバート様とエリー様は婚約の解消などしなかった。
私が謝った事で何か変わる事はないだろうが、ケジメはつくと思う。
エリー様に謝罪したら罵声を浴びるだろう。
今更だとか偽善とか言われて、尚私を憎むかもしれない。ノアとは絶対別れないと言うかもしれない。
その時は、私もそれを受け止める。
どんなに辛くても受け止める。
全部私のせいだから。

ノアには、そばにいる、支えると言っておいて、覚悟を決めたノアに対して拒否してしまった、私の幼さと覚悟の無さを謝罪する。
おじ様やおば様、エリカにも私の間違った行いで起こったこの事件を謝罪し、ノアを傷付けてしまったと頭をさげよう。
おじ様達は許してくれるだろうが、私は私が許せない。だから謝るのだと説明しよう。

自己満足かもしれない。
でも、やはり謝罪はしたい。

私が謝る事で新たな火種が起きるだろうか…。
さらにエリー様を傷付けるのだろうか…。

この考えは間違っているのだろうか。

また一人で動いて迷惑をかけるなら、お父様かお兄様に相談しよう。
でもお父様に会うのは怖い。

もう自分に対して全く自信がない。

どう笑っていたのかも分からなくなっている。

誰とも喋らず、部屋に篭っている。

いつまで謹慎なのかは分からないけど、考えるには丁度いい。

あ、ノアはあれから何も言ってはこない。

手紙を書こうか…。
でも、また手紙を書いて迷惑をかけてしまうかもしれないと思うと、書けない。
でも、ひどい事を言ったことだけでも謝ろうか…

机に向かうが何も書けない。


ジッと便箋を見つめていた時、ドアの向こうからお兄様の声が聞こえた。

「リア、少し良いだろうか?」

「はい…」

部屋に入ってきたお兄様は私を見て、ギョッとしている。
そんなに驚くような顔なんだろうか?

「リア…ごめん、俺が余計な事言ったから…。俺がノアの思っている事、理由をちゃんと正確に伝えなかった。手紙に書いたのを読んだリアの気持ちを考えなかった。
リアを傷付けたのは俺だ。
ノアの事も傷付けた。普通にしてるが、ノアは落ち込んでる。
本当にごめん。」

「お兄様は悪くないわ。私が悪いんだもの。お父様の言う通り、覚悟もなかったし、自分の行動によって起こることの責任も分かってなかった。
私、エリー様に謝罪しようと思うの。
私がエリー様の婚約者だったアルバート様がお礼に来た時、お父様やお兄様と一緒に対応すれば良かったの。
なのに私が一人で対応してしまったんだもの、婚約者のいる方と二人きりで。
あの時、間違えなければこんな事にはならなかった。
だから、謝ろうと思うの。
私が悪かったんだもの。
おじ様にもおば様にもエリカにも謝るわ。
私のせいでこんな事になりすみませんって。
でないと、私は自分が許せないもの。
そのせいでエリー様の恨みを買っても仕方ないんだと思う。
私が何も考えていなかったから。
お兄様もごめんなさい、忙しいのに余計な仕事を増やしてしまって…」

「リア、リア、ちょっと何言ってるの!何でリアが謝るの?
それは違うよ、リア、聞いて!」

「ううん、全部私のせいだった。だから謝らないと。」

「違う、リア、聞いて、父上の所に行こう。ダメだよ、リア、しっかりして!」

お兄様に連れられ、お父様の執務室に入ろうとする。

「いや、お父様は部屋から出るなと言われたわ。私、部屋に戻るわ!また叱られてしまうから!」

「大丈夫だ、リア!入ろう、そして父上に話しを聞いてもらおう、ね、お兄ちゃんと一緒に行こう。」

「ダメ、だって私は何をやってもダメなんだもの、だから部屋でまた考えるわ。
今度こそ、ちゃんと考えるから!」

「何をしている!」
そこへお父様が執務室から出てきた。

「ごめんなさいごめんなさい、今部屋に戻るから!もう一度ちゃんと考えるから!
ごめんなさい、お父様、ごめんなさいごめんなさい…」
ポロポロ、涙が止まらなくなってしまった。

「リア、しっかりしなさい!リア!」

「ちゃんと考えるから!次はちゃんと迷惑かけないようにするから!
ごめんなさい…お父様…」

「リア、何を言ってる?リア、どうしたんだ?」

「父上…リアは・・・」

「何があったんだ!リアはどうしたんだ!」

「とにかく部屋に戻すよ…」

部屋に戻された私は、ベッドに寝かされて、
「ごめん…本当にごめん…お兄ちゃんが悪かった…」
と言ってお兄様が泣いていた。
「お兄様は悪くないから泣かないで。全部私が悪いんだから。泣かないで。」

お兄様はずっと私の手を握って泣いていた。



私も泣いていたが、いつの間にか眠ってしまった。














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