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兄からの手紙
しおりを挟むノアがたまに会いに来るが、何も進展がなく焦っているのが分かった。
不安なのか私から離れない。
帰る時も名残惜し気に帰って行く。
せっかくの休みなのに移動だけで疲れてさせているのではと、私も心配で手紙だけで大丈夫だと言っても、無理してでも来ようとする。
何度も父に帰ると言ってもまだ駄目だと言われてしまう。
そんな日が続いていたある日、兄から手紙が来た。
『親愛なる妹へ
元気でやってるか?体調はどうだ?
お兄ちゃんは、変わらず元気だ。
父上からも聞いてると思うが、今はエリソン家であの女の護衛という名の監視をしている。
毎日見ていて分かった事は、あの女はノアに全く興味も好意もない。
お腹の子すら興味はない。
酒まで飲んでるからな。
そして、あの女の目的が分かった。
リア、お前が聞いたら衝撃を受けるかもしれないが、ノアがその事を知り、今、あの女への復讐心で危うい状態で、何をするか分からないんだ。
アイツ、あの女を地獄に落とす為に、あの女を愛するフリをして、幸せだと思わせてから捨てる、そんな事をしようとしていた。
俺も侯爵も反対して止めたが、ノアはあの女に対して、尋常じゃないほど怒っている。
それほど怒った理由はリア、あの女の本当の狙いがお前だった事を知ったからだ。
リア、以前アルバート・シルバー男爵令息を助けた事があっただろう?
その令息はあの女の元婚約者だったんだ。
シルバー男爵令息はリアに一目惚れしたらしい。でも、ただ遠くから見てるだけで良かったらしいが、横でそれを見ていた婚約者の女は溜まったもんじゃない。
それで結局婚約解消になったらしい。
そう、あの女は逆恨みでお前を貶める為にノアをお前から奪ったんだ。
何にもしてないリアを傷付けた事が分かったノアは、今本当に危うい。
父上は帰ってこない方がいいと言ってるが、
もうあの女はお前に手を出さないと思う。
だから、一度こっちに帰ってこい。
お前が近くにいるだけで、ノアも落ち着くだろう。
もし、この話しを聞いて、不安になったとしたらごめん。
でも、一度帰ってきて俺や父上、ノアや侯爵と相談しても良いと思うんだ。
お前の事はお兄ちゃんが絶対守る。
だから心配ないからな。
パトリックより』
兄の手紙が衝撃過ぎて、言葉が出なかった。
まさか、私のせいでこんな事になったなんて考えた事もなかった。
アルバート様があの人の婚約者だったなんて…。
アルバート様は偶然街で具合を悪くしている所に通りかかってほんの少しお手伝いしただけなのに、丁寧に挨拶に来て頂いた方だ。
それ以降会った事はなかったが、まさかアルバート様が私を…。
それが原因で婚約解消なんて…。
婚約者が他の女性を好きになって、その姿を隣りで見続けていたら…私だったら辛い。
耐えられず婚約を解消するだろう…。
私を恨みたくなるのも分かるが、そんな事、私は知らなかった…
どうすれば良かったんだろう。
誰が悪いの?
あの時アルバート様を助けなければ良かったの?
でも、逆恨みしたくなるほど、隣りで私を見る婚約者の姿を見てきたのだろう。
私のせいだから、恨んではいけないの?
憎んではいけないの?
そんなのはおかしいし、嫌だ。
どうしたら良いのか分からない…
「リア様、パトリック様はなんと?」
ユリアが心配して聞いてきた。
ユリアに手紙を見せた。
「そんな・・・リア様には何の問題はないではないですか!なのに、こんな・・・」
「ユリア…私はどうしたら良いんだろう…。許さなきゃならないの?
あの人に謝罪しなきゃならないの?
私は…」
「リア様、リア様は悪くはございません。
不幸な事にはなってしまったのでしょうが、リア様は何もしてはいないではないですか!謝罪するのは向こうです、リア様ではありません。
でも、お一人で悩んでいては悪い方に考えがちです。一度王都に帰りましょう。
旦那様やパトリック様に相談致しましょう。すぐ支度致します。」
「ありがとう…ユリア。お願い、するわ…」
部屋を出て行ったユリアの背中を見ていた。
一番の発端が自分だった事が衝撃で、何も考えられなくて、ただ床を見つめていた。
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