信じないだろうが、愛しているのはお前だけだと貴方は言う

jun

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彼女は悪くないけど 1

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エリー視点


あいつらが大嫌いだった。
二人だけの空気感を纏い、その他は何も目にも入れず、ひたすらベタベタしている二人、

ノア・エリソン侯爵令息
ラミリア・ルーロック伯爵令嬢

周りはお似合いだと言っていたが、見るたびイライラした。

私もお似合いだと思っていた時期がある、
私の婚約者がルーロック伯爵令嬢を好きになるまでは。

それは偶然だった。
街に買い物に来ていた私の婚約者は、急な目眩と吐き気でしゃがみ込み動けなくなった。
そこへたまたま居合わせたルーロック伯爵令嬢は、侍女と護衛に彼を近くのベンチまで運ばせ、水で冷やしたハンカチを額にあてたり、水を飲ませたりと、とても親切に介抱してくれたそうだ。
馬車で家まで送るとまで言ってくれたが、さすがにそこまではと断って、お礼は改めてという事でその日は別れた。

後日、彼は伯爵家にお礼に伺い、彼女と少し話したそうだ。
具合の悪い人を放って置けなかっただけなので気にしないで欲しいと、優しく諭され、恐縮したと後日彼は教えてくれた。
それからだ。
彼は私と一緒に居てもどこか上の空。
どうしたのかと聞いてもなんでもないとしか言わない。
彼の両親に聞いても分からないと言われた。

ある日彼と街を歩いている時、急に立ち止まった。

なに?と思い、彼の視線を辿ると、そこには有名カップルがいた。
そして、彼が切なげに見つめている先にはルーロック伯爵令嬢がいた。

胸がザワっとなり彼に声をかけると、
「あの二人がどうかしたの?」
と聞くと、以前具合が悪くなった時、令嬢に親切にしてもらったと言った。
その時の彼の顔は、頬を赤らめ、明らかに恋してる顔だった。

「そうなのね、じゃあ、私もお礼が言いたいわ、行きましょう!」
と言う私を彼は止めた。

「もうお礼はちゃんと言ったし、せっかく二人で楽しんでいるところを邪魔してはいけないから。」

と悲しそうに言った。

多分、私と一緒に行きたくなかったんだろうと思う。
“私”というか“婚約者”を連れて行きたくなかったんだろう。

彼の気持ちが分かり、握った手に力が入ったが、あれほど仲睦まじい二人の姿を見せつけられれば、そのうち彼女への気持ちも落ち着くだろうし、諦めるだろうと思っていた。

それからの彼は、表面上はなんら変わっていないが、どこに行っても何をしていても、彼女の事を思っているのが分かった。
お茶をすれば、紅茶のカップをジッと見た後、フッと笑い何かを思い出している。
宝石店に行った時は酷かった。
私へのプレゼントを買う為に行ったその店で見ていたのは、私の髪の色でも瞳の色でもない、彼女の瞳の色と同じ色の宝石だった。
最後はちゃんと私の色のアクセサリーを買ってくれたが、彼の色の物を買ってはくれなかった。
それでも今だけだと我慢した。

そんなのが一年程続いた時、彼が間違えて私の名前ではなく彼女の名前を呼んだ。
たった一度、
だった一度だけど、私にはもう耐えられなかった。
彼は、すぐごめんと言ったが、気まずいのか視線を逸らした。
私は、彼に婚約を解消してほしいと告げた。
元々親同士が仲が良いから、それだけで婚約しただけなので、解消したからといって何か問題があるわけではないので、私は彼から逃げた。

その後、両家の話し合いで婚約は解消された。
最後だからと彼と二人になった時、

「ごめん。エリーを裏切るつもりはなかった。ただ遠くからでも見ていたかった。 

ちゃんとエリーと結婚する意思はあったんだ…。
傷付けてしまって本当にごめん…。」

そう言って彼は振り返らず帰って行った。

怒鳴りつけようと思っていた。
今まで我慢し続けた事を全部言おうと思ってた。
平手くらいしてやろうと思っていた。
でも、彼が本当に彼女を好きだった事を彼の口から聞いた事が、悲し過ぎて何も考えられなくなった。

彼が帰ってから、どうやって部屋に戻り、誰と何を話したか、全く覚えていなかった。

それから、あの二人を見ると虫酸が走った。

ただの逆恨み。
ルーロック令嬢は親切でした事であって、彼を誘惑した訳ではない。
そんなの分かってる。
でも、私達の仲を引き裂いたのは彼女だ。






だったら私も同じ事をしたって間違ってないと思う。

だって私達だってあの二人くらい仲が良かったんだから。


そして私の計画が始まった。












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