16 / 78
悔しい
しおりを挟むノアと部屋に入り、二人きりにしてもらった。
ユリアは最後まで反対していたけど、どうしても二人で話したかった。
二人で隣り合わせでソファに座り、ずっと手を握っていた。
そしてノアを正面から見つめた。
頬はこけ、あんなにがっしりしていた身体はほっそりしていた。
頬に手を当てノアを見つめると、やっぱり涙が出た。
「ノア…こんなに窶れて・・・ごめんね、私のせいだわ…」
「違うよ、ララのせいじゃない。
ララ、抱きしめさせて…お願い…」
頷くと、ギュッと抱きしめながらノアが、
「会いたかった…もう会えないと思った…嫌われたと…」
「もう会わないと思ってた…別の人と結婚するノアを見たくなくて逃げてしまった…。
でもやっぱりノアが好きなの…」
「ララ…ララ…ララだけが好きなんだ…他のやつとなんて結婚したくない…」
「ノア、あの時何があったのか全部教えて。逃げないから最初から最後に会った時までの事。」
「・・・分かった。でも手は握ってて。」
「うん、ずっと握ってる。」
そしてノアが全てを話してくれた。
辛くて悲しくて悔しくて、涙が止まらなかった。
ノアも泣いて、途中落ち着かせながら最後までを話してくれた。
なんて酷い人なんだろう。
私達を何だと思っているんだろう。
ノアをこんなに傷付けて、それでも結婚したかったのだろうか。
許せない。
許せない。
汚い手を使い、ノアの身体と心を汚し傷付け、私を罵ったあの人を許さない。
あの人が罪を犯したのは明白なのに証拠がないから告発する事も出来ない。
悔しい…。
「ノア…私、悔しい…。あの人が悪いのにのうのうとノアの屋敷で暮らしている事が悔しくてたまらない。
こんなにノアを苦しめているのに、ノアの隣りに立つ権利があるのがあの人なのが許せない。」
「ララ…俺も悔しい…俺は騎士で、こんな犯罪を取り締まる側なのに、捕まえる事も出来ない…。
そして・・・・あの女の…お腹・・には…」
「ノア、その事は後で考えよう。今はあの人のした事は犯罪だと証明させる事を優先しよ。その後の事はそれから考えよ。」
「うん、ごめん…そうだね。本当にありがとう…ララがいてくれるなら俺は頑張れる。」
「ノア、エリカはジョシュア様に何を頼んでるの?」
「ジョシュア殿が王太子殿下に相談すると言ってたらしい。期待はしないでほしいが、ひょっとしたらなんとかなるかもとも言ってたって。」
「王太子殿下⁉︎何か王都であったのかしら…。」
「分からない…俺は休職してたし、休む前も何も聞いてなかったな。」
「そう…でも王太子殿下やジョシュア様が動いてくれるなら、少し希望が出てくるね」
「うん、でも俺もそろそろ仕事に復帰して情報集めようと思う。あの女が使った薬がなんなのか、似たような事案はなかったか調べてみる。」
「身体は大丈夫?まだ体力は戻っていないでしょ?」
「まあね、でもゆっくりしていられないからね。こうやってララを抱きしめられるから力が沸くよ。」
「ノア、あの人は屋敷で何をしているの?」
「知らない。誰も関わりたくなくて放っているんだ。」
「誰か監視する人を入れた方がいいわ。一人ではなく二人は。」
「そうだな、あまりにも静かで不気味なんだ。父上とジョシュア殿に相談してみるよ。」
「お兄様とはあれから会ってないの?」
「そうだな…パトリックはまだ怒ってるだろうな…」
「私、お兄様に手紙を書くわ。ノアの力になってもらえるように。」
「パトリックが怒るのは当然だ…ララを傷付けたんだから…。」
「ノアが傷付けたんじゃないわ。私に傷付けたのはあの人よ。」
「うん…そう言ってもらえただけで、俺は…本当に嬉しい…」
「ノア、今日は帰っちゃうの?」
「泊まっていってもいいの?」
「泊まっていってほしい…ダメ…かな?」
「泊まりたい。ずっとララといたい。ララを抱きしめて眠りたい。
いつもララからの手紙を抱いて寝ていた。
だから出来るなら本物のララを抱きしめて眠りたい。」
「うん…今日は一緒に寝よう。夕食も一緒に食べよう。」
「うん。ララ、会えて良かった。話しが出来て良かった。俺が早くララに話してたらこんなに傷付ける事もなかったのに、俺の話しを聞いてくれてありがとう。
会ってくれてありがとう。
ララ…愛してる。」
「私もノアを愛してる。」
その日私達はキスは何回もしたけどそれ以上は何もせず、抱き合って眠りについた。
74
お気に入りに追加
1,465
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
形だけの妻ですので
hana
恋愛
結婚半年で夫のワルツは堂々と不倫をした。
相手は伯爵令嬢のアリアナ。
栗色の長い髪が印象的な、しかし狡猾そうな女性だった。
形だけの妻である私は黙認を強制されるが……
子育てが落ち着いた20年目の結婚記念日……「離縁よ!離縁!」私は屋敷を飛び出しました。
さくしゃ
恋愛
アーリントン王国の片隅にあるバーンズ男爵領では、6人の子育てが落ち着いた領主夫人のエミリアと領主のヴァーンズは20回目の結婚記念日を迎えていた。
忙しい子育てと政務にすれ違いの生活を送っていた二人は、久しぶりに二人だけで食事をすることに。
「はぁ……盛り上がりすぎて7人目なんて言われたらどうしよう……いいえ!いっそのことあと5人くらい!」
気合いを入れるエミリアは侍女の案内でヴァーンズが待つ食堂へ。しかし、
「信じられない!離縁よ!離縁!」
深夜2時、エミリアは怒りを露わに屋敷を飛び出していった。自室に「実家へ帰らせていただきます!」という書き置きを残して。
結婚20年目にして離婚の危機……果たしてその結末は!?
本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
結城芙由奈
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います
<子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。>
両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。
※ 本編完結済。他視点での話、継続中。
※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています
※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)
「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。
政略結婚で結ばれた夫がメイドばかり優先するので、全部捨てさせてもらいます。
hana
恋愛
政略結婚で結ばれた夫は、いつも私ではなくメイドの彼女を優先する。
明らかに関係を持っているのに「彼女とは何もない」と言い張る夫。
メイドの方は私に「彼と別れて」と言いにくる始末。
もうこんな日々にはうんざりです、全部捨てさせてもらいます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる