13 / 78
ララに会いに
しおりを挟むノア視点
リアとの婚約が破棄されてから、何もする気が起きず、仕事を休職し、部屋に篭っていた。
あれからどうなったのか、分からない。
リアがどうしてるのかも、これからどうなるのかも、何も考えたくなかった。
食事もほとんど摂らず、酒を飲む時に少し軽食を摘む程度だ。
眠るのが嫌で極力眠らなかった。
眠ると目が覚めた時、またあの女がいたらと思うと眠れない。
食事も、また何か入れてあるかもしれないと思うと口に入れられない。
もう死んでしまいたいと思った。
ララと別れなければならないなら死んだ方がマシだと思った。
そんな毎日を送っていた時、妹のエリカがララから手紙が来たと俺の所にきた。
“リア”と聞こえた。
リア…
ララ…ララ…俺だけが呼べるラミリアの愛称。
ララから俺に手紙?
エリカを部屋に入れ、手紙を受け取った。
震える手で丁寧に手紙を取り出す。
その手紙には、いつものララがいた。
俺の身体を心配し、会いたいと。
会いに来てくれと書いてある。
そして、傷付いてる俺を労ってくれる大好きなララ。
そして、俺の事が大好きだと言ってくれている。
もう会えないと思っていた。
嫌われたと思っていた。
俺は声をあげて泣いていた。
その騒ぎに父も母も駆けつけていたが、泣く事をやめられなかった。
エリカが手紙を両親に見せたのだろう、
母も泣き崩れていた。
エリカも泣いていた。
父は執事のトマスと静かに泣いていた。
あの日から今日までただこの状況をなんとかしなければと、そればかり考えて俺の事など考えていなかったのだろう…。
俺さえもそうなのだから。
俺はララを傷付けた事だけしか考えていなかったから、自分が傷付いている事すら気付かなかった。
それからは、俺の部屋を綺麗にし、その間に俺は風呂に入って、久しぶりにスッキリした。
狭いけれど、4人で久しぶりに食事をした。
俺はほとんど食べていなくて、スープだけだったが、家族揃っての食事は美味しかった。
父が、
「私はアルフの所に行って、お前が領地に行く事の了承を得てくるよ。土下座でもなんでもしてくるつもりだ。
何度でも行ってくる。だから、お前は少し食べられるようになりなさい。
睡眠も取りなさい。部屋の前に護衛を置くし、心配なら私がここで眠ればいい。
何も心配はいらない。
だから、リアちゃんに会いに行きなさい。
これを食べたら、すぐ手紙を書いて送りなさい。これからは私達がいる。
ノアを一人にはしない。
すまなかった…。リアちゃんの手紙を読むまで、お前の辛さを分かってあげられなかった。
一番傷付いたのはお前なのに…。」
「ありがとう、父上。俺は自分でも気付いてなかったんだから、気にしないで。
これから、どうなるかは分からないけど、
ララが会いに来てといってくれるなら、まだ諦めない。
俺を好きだと言ってくれるララにきちんと話しをしてくる。」
「お兄様、私、リアに手紙を書くから渡してくれる?それとリアの好きなお菓子も。」
「ああ、ララも喜ぶよ。」
ララ…ありがとう。
我が家に明るさが戻って来たよ。
まだまだ、何も解決していないけど、気力が湧いた。
会いに行くから待ってて。
その夜、手紙を書いた。
『大好きなララへ
手紙ありがとう。
嬉しかった。
体調崩してない?
ちゃんと眠ってる?
ご飯はちゃんと食べられてる?
嫌な夢を見ていない?
俺はあれから、薬が怖くて食事を口に入れられなくなった。
眠るのも、目が覚めた時に、またあの女がいたらと思うと、怖くて眠れなかった。
今の姿をララに見せるのは、少し恥ずかしいよ。ガリガリだ。
仕事は休職してる。
あの日から我が家は誰も笑わず、話しもせず、それぞれが部屋に籠っている。
あんなに明るい家だったのにね。
ララの手紙を読んで、エリカも両親も初めて気付いた。
俺も気付かなかった、俺があの女に傷付けられたんだと。
全員、ララを傷付けてしまった事しか考えてなかったんだ。もちろん俺も。
俺達は、ララの手紙を読んで、全員号泣したんだよ。
(手紙をみんなに見せてしまってごめん)
そして、ララが俺を労ってくれてた事をみんなが感謝していたよ、ありがとう、ララ。
それからは、ぐちゃぐちゃになった俺の部屋を全員で片付けて、俺は久しぶりにお風呂にも入って、伸び放題の髭も、ボサボサの髪もちゃんと整えて、家族4人で久しぶりに食事をしたんだ。
俺は食べていなかったからスープだけだけど。
父上はアルフおじさんに何度でも頭を下げて、俺を領地に行かせてもらえるように頼んでくれると言ってくれた。
俺も何度でも頭を下げるから。
エリカはジョシュア殿に何か調べてもらってるようだ。
だから、必ず行くから待ってて。
寒くなったよ、風邪ひかないようにね。
ララ…愛してるよ。
今は信じてくれないだろうけど、俺はララだけを愛してる。
ララだけのノアより。』
92
お気に入りに追加
1,465
あなたにおすすめの小説
形だけの妻ですので
hana
恋愛
結婚半年で夫のワルツは堂々と不倫をした。
相手は伯爵令嬢のアリアナ。
栗色の長い髪が印象的な、しかし狡猾そうな女性だった。
形だけの妻である私は黙認を強制されるが……
なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?
ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。
だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。
これからは好き勝手やらせてもらいますわ。
本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
結城芙由奈
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います
<子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。>
両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。
※ 本編完結済。他視点での話、継続中。
※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています
※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)
【完結】新婚生活初日から、旦那の幼馴染も同居するってどういうことですか?
よどら文鳥
恋愛
デザイナーのシェリル=アルブライデと、婚約相手のガルカ=デーギスの結婚式が無事に終わった。
予め購入していた新居に向かうと、そこにはガルカの幼馴染レムが待っていた。
「シェリル、レムと仲良くしてやってくれ。今日からこの家に一緒に住むんだから」
「え!? どういうことです!? 使用人としてレムさんを雇うということですか?」
シェリルは何も事情を聞かされていなかった。
「いや、特にそう堅苦しく縛らなくても良いだろう。自主的な行動ができるし俺の幼馴染だし」
どちらにしても、新居に使用人を雇う予定でいた。シェリルは旦那の知り合いなら仕方ないかと諦めるしかなかった。
「……わかりました。よろしくお願いしますね、レムさん」
「はーい」
同居生活が始まって割とすぐに、ガルカとレムの関係はただの幼馴染というわけではないことに気がつく。
シェリルは離婚も視野に入れたいが、できない理由があった。
だが、周りの協力があって状況が大きく変わっていくのだった。
夫が隣国の王女と秘密の逢瀬を重ねているようです
hana
恋愛
小国アーヴェル王国。若き領主アレクシスと結婚を果たしたイザベルは、彼の不倫現場を目撃してしまう。相手は隣国の王女フローラで、もう何回も逢瀬を重ねているよう。イザベルはアレクシスを問い詰めるが、返ってきたのは「不倫なんてしていない」という言葉で……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる