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こんなはずじゃなかった

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佐藤美咲 視点


こんなはずじゃなかった。
写真も撮った。射精もさせた。結婚もした。

なのにあの結婚式のスピーチで何もかも私の計画は崩れた。

あの弁護士の慎吾の友人の西山。

考えてみたら慎吾の高校は有名進学校で大学も国公立に進む人が多い。
弁護士や医者などが居てもおかしくはなかった。

友人に自慢したかったから慎吾の招待客は高給取りばかりで都合が良かった。

まさかスピーチであんな事を言うなんて思ってなかった。




私は子供の時から男の子には人気があった。
小中高と学校では常に告白されていたし、彼氏も途切れた事はなかった。

幼稚園で受験した為、大学までのエスカレーター式だったので、有名大学出身という事もあり、そこそこ良い企業に就職出来た。

どうせ腰掛けと思い、仕事はバレない程度に手を抜き、結婚相手を探した。

荒川慎吾は見た目良し、出世頭と謳われ、正確も良いし、適当に遊んでいる感じも良かった。ただ、付き合ってるを溺愛しているというのだけが引っかかった。

何度アプローチしても相手にされず、1人も寂しいので、上司の課長と時々会うようになった。
課長は既婚者だがまだ32歳で若いし、実はこの会社の社長の甥っ子だと聞いて、キープとして付き合っていた。

荒川慎吾は全く私には興味はなく、毎回素気無く私の誘いを断り、側にも寄らせない。

だから課長との付き合いにのめり込んだ。
27になった時、課長の子を妊娠した。

課長に言ったら、

「産ませる訳ないよね?産むつもりもないでしょ?産みたいなら誰か別の相手見つけないと、僕とはもう終わりかな。」

やばいやばい。

課長に捨てられるのは嫌だ。


そこで荒川慎吾を思い出した。
あの男なら、目の前にあるご馳走を食べない訳がないと思った。
それからはとにかく荒川が参加する飲み会を待った。
丁度、新入社員歓迎会があったのでそこを狙った。
強めの鎮痛剤を砕いておいて、見つからないように荒川のグラスに薬を何回かに分けて混ぜて飲ませた。

同期のお人好しの友利志帆が近くにいたので、

「荒川さん、酔っ払っちゃったからタクシーに乗せるの手伝ってくれる?私1人では運べないから。」
と言えば、それを聞いた同期の酔った男達が荒川をタクシーに乗せてくれた。

「おいおいお持ち帰りか~佐藤と友利は!」
へべれけの同期達を放っておき、三人でタクシーに乗り、私のマンションまで運ばせた。


私のマンションに入った瞬間、友利は荒川のマンションではないと気付いたが、共犯だといったら、すぐに逃げた。


その後は服をなんとか脱がし裸にして、口で荒川のを大きくした。
口で奉仕してるうちに濡れてきた私のものに、荒川のを入れようとしても完勃ちじゃないから入らない。
でも入ってるように見える角度で写真を撮り、
とにかく射精させようと必死に奉仕した。

なんとか射精させると荒川が目を覚ましたが、写真や自分の出した物を見て、すぐにマンションを出て行った。

そこからは私の思い通りになった。
課長にも手伝ってもらい、会社中に私と荒川が結婚する事を周知させる事が出来た。

荒川はウチに挨拶にくるのも嫌がったが、子供がいるのよ!って言えば、渋々挨拶していた。
その代わり、荒川の実家の対応は最低だった。

「分かりました。顔合わせも挨拶も終わりましたので、今日はありがとうございました。」
と玄関で挨拶して、そのまま帰らされた。

結婚式の日にちも衣装も全て私が勝手に決めて良いって言うから、存分に好きなものを選んだ。
費用は荒川家持ちだから。

招待客は新郎側は自分で決めるから、新婦側は好きに選べと言われ、元々友人が少ない私は会社関係の人を多く呼んだ。
もちろん課長も。

荒川が部長を呼んだ事に驚いたが、別におかしくはないからそのままにした。


引き出物も食事も指輪も私が選んだ。
荒川は隣りにいるだけ。
一言も喋らなかった。

友人代表のスピーチは同期に頼んだ。

友利は気付けば辞めていたから、少し失敗したと思った。
私の事を誰かにバラされたら不味いかもと思ったが、ビビって言いはしないだろうと思い、そのまま忘れた。


そして結婚式。



西山のスピーチの後の新婦側のスピーチは空々しいし、余興は誰一人反応なし。拍手はまばら。
お色直しの後のキャンドルサービスは、皆んな俯いて誰も私を見ていなかったし、
両親への感謝の手紙を読んでも誰も泣いてる人なんかいないし、両親は顔色を無くして俯いている。
渡した花束はすぐに回収された。

お見送りをしても、誰も祝福してくれる人はいないし、新郎側の高学歴のイケメン達は、私をゴミを見るような目で見た後、全員睨んでいた。

部長だけ話しかけてきたが、
「休暇明けに話しを聞きたいから、そのつもりで。」と言われた。
部長は課長の従兄弟で、社長の甥っ子と課長と同じだが、部長は、社長の弟、常務の息子だ。課長は社長の嫁いで家を出た妹の息子、つまり部長と課長では、会社の中では天と地ほどの差がある。

だから私はお腹が張ると言って、部長との面談から逃げた。

そして両家の話し合いからも逃げた。
その間に決まったのは、別居。
私は実家で静養。
生活費などは荒川家が出し、私と慎吾が住むはずだったマンションはこちらが出す事に決まっていた。
そして結局課長との不倫もバレて、生まれた子供が1歳になったらDNA鑑定をすると決定していた。
私は抗った。
違う、不倫なんかしてない、子供は慎吾の子供だ、写真もあると持ちうる手札を全部出した。
それを待ってましたとばかりに、西山は回収していった。

「脅迫罪が適用出来るかもしれませんから」と。


そしてわたしは子供を産んだ。
生まれた子供が誰に似ているのかはまだ分からない。

両親は喜んでいたが、心からではなかった。
兄夫婦は顔すら見にこなかった。

友人も同期も誰もお祝いには来てくれなかった。
もちろん課長も。

あの後、課長は左遷されたと聞いた。

慎吾は一度も見には来ていない。
ただ、両親にお金を渡しに実家には来ているようだが、私は会っていない。

夜中も泣く子供に苛々する。
寝ては泣き、おっぱいを飲んでは寝て、また泣き、オムツを替えて、またおっぱいを飲ませて、寝かせて、泣いて…頭がおかしくなりそう!

堕ろせば良かった。
生まなきゃ良かった。
なんで荒川を選んだんだろう。

もっと騙しやすい人はたくさんいたのに。

もうすぐDNAを検査される息子を見つめる。

ぐっすり寝ている息子が憎くて堪らない。

いつか、私はこの子を殺してしまいそうで、怖い…。

次泣いたら…夜中に泣いたら…明け方に泣いたら…私はこの細い首に手をかけてしまいそうだ…。


あの時、どうして荒川慎吾に執着したんだろう…。
男前だが、最初から彼女を溺愛していると聞いて、そんな二人に嫉妬したんだろうか…。

私は溺愛なんてされた事がない。

この人ならと…思ったのかも。
この人なら私を溺愛してくれるのかもと。


お願い、誰か私を誰よりも愛して。
誰か助けて…
















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