7 / 21
こんなはずじゃなかった
しおりを挟む佐藤美咲 視点
こんなはずじゃなかった。
写真も撮った。射精もさせた。結婚もした。
なのにあの結婚式のスピーチで何もかも私の計画は崩れた。
あの弁護士の慎吾の友人の西山。
考えてみたら慎吾の高校は有名進学校で大学も国公立に進む人が多い。
弁護士や医者などが居てもおかしくはなかった。
友人に自慢したかったから慎吾の招待客は高給取りばかりで都合が良かった。
まさかスピーチであんな事を言うなんて思ってなかった。
私は子供の時から男の子には人気があった。
小中高と学校では常に告白されていたし、彼氏も途切れた事はなかった。
幼稚園で受験した為、大学までのエスカレーター式だったので、有名大学出身という事もあり、そこそこ良い企業に就職出来た。
どうせ腰掛けと思い、仕事はバレない程度に手を抜き、結婚相手を探した。
荒川慎吾は見た目良し、出世頭と謳われ、正確も良いし、適当に遊んでいる感じも良かった。ただ、付き合ってる彼女を溺愛しているというのだけが引っかかった。
何度アプローチしても相手にされず、1人も寂しいので、上司の課長と時々会うようになった。
課長は既婚者だがまだ32歳で若いし、実はこの会社の社長の甥っ子だと聞いて、キープとして付き合っていた。
荒川慎吾は全く私には興味はなく、毎回素気無く私の誘いを断り、側にも寄らせない。
だから課長との付き合いにのめり込んだ。
27になった時、課長の子を妊娠した。
課長に言ったら、
「産ませる訳ないよね?産むつもりもないでしょ?産みたいなら誰か別の相手見つけないと、僕とはもう終わりかな。」
やばいやばい。
課長に捨てられるのは嫌だ。
そこで荒川慎吾を思い出した。
あの男なら、目の前にあるご馳走を食べない訳がないと思った。
それからはとにかく荒川が参加する飲み会を待った。
丁度、新入社員歓迎会があったのでそこを狙った。
強めの鎮痛剤を砕いておいて、見つからないように荒川のグラスに薬を何回かに分けて混ぜて飲ませた。
同期のお人好しの友利志帆が近くにいたので、
「荒川さん、酔っ払っちゃったからタクシーに乗せるの手伝ってくれる?私1人では運べないから。」
と言えば、それを聞いた同期の酔った男達が荒川をタクシーに乗せてくれた。
「おいおいお持ち帰りか~佐藤と友利は!」
へべれけの同期達を放っておき、三人でタクシーに乗り、私のマンションまで運ばせた。
私のマンションに入った瞬間、友利は荒川のマンションではないと気付いたが、共犯だといったら、すぐに逃げた。
その後は服をなんとか脱がし裸にして、口で荒川のを大きくした。
口で奉仕してるうちに濡れてきた私のものに、荒川のを入れようとしても完勃ちじゃないから入らない。
でも入ってるように見える角度で写真を撮り、
とにかく射精させようと必死に奉仕した。
なんとか射精させると荒川が目を覚ましたが、写真や自分の出した物を見て、すぐにマンションを出て行った。
そこからは私の思い通りになった。
課長にも手伝ってもらい、会社中に私と荒川が結婚する事を周知させる事が出来た。
荒川はウチに挨拶にくるのも嫌がったが、子供がいるのよ!って言えば、渋々挨拶していた。
その代わり、荒川の実家の対応は最低だった。
「分かりました。顔合わせも挨拶も終わりましたので、今日はありがとうございました。」
と玄関で挨拶して、そのまま帰らされた。
結婚式の日にちも衣装も全て私が勝手に決めて良いって言うから、存分に好きなものを選んだ。
費用は荒川家持ちだから。
招待客は新郎側は自分で決めるから、新婦側は好きに選べと言われ、元々友人が少ない私は会社関係の人を多く呼んだ。
もちろん課長も。
荒川が部長を呼んだ事に驚いたが、別におかしくはないからそのままにした。
引き出物も食事も指輪も私が選んだ。
荒川は隣りにいるだけ。
一言も喋らなかった。
友人代表のスピーチは同期に頼んだ。
友利は気付けば辞めていたから、少し失敗したと思った。
私の事を誰かにバラされたら不味いかもと思ったが、ビビって言いはしないだろうと思い、そのまま忘れた。
そして結婚式。
西山のスピーチの後の新婦側のスピーチは空々しいし、余興は誰一人反応なし。拍手はまばら。
お色直しの後のキャンドルサービスは、皆んな俯いて誰も私を見ていなかったし、
両親への感謝の手紙を読んでも誰も泣いてる人なんかいないし、両親は顔色を無くして俯いている。
渡した花束はすぐに回収された。
お見送りをしても、誰も祝福してくれる人はいないし、新郎側の高学歴のイケメン達は、私をゴミを見るような目で見た後、全員睨んでいた。
部長だけ話しかけてきたが、
「休暇明けに話しを聞きたいから、そのつもりで。」と言われた。
部長は課長の従兄弟で、社長の甥っ子と課長と同じだが、部長は、社長の弟、常務の息子だ。課長は社長の嫁いで家を出た妹の息子、つまり部長と課長では、会社の中では天と地ほどの差がある。
だから私はお腹が張ると言って、部長との面談から逃げた。
そして両家の話し合いからも逃げた。
その間に決まったのは、別居。
私は実家で静養。
生活費などは荒川家が出し、私と慎吾が住むはずだったマンションはこちらが出す事に決まっていた。
そして結局課長との不倫もバレて、生まれた子供が1歳になったらDNA鑑定をすると決定していた。
私は抗った。
違う、不倫なんかしてない、子供は慎吾の子供だ、写真もあると持ちうる手札を全部出した。
それを待ってましたとばかりに、西山は回収していった。
「脅迫罪が適用出来るかもしれませんから」と。
そしてわたしは子供を産んだ。
生まれた子供が誰に似ているのかはまだ分からない。
両親は喜んでいたが、心からではなかった。
兄夫婦は顔すら見にこなかった。
友人も同期も誰もお祝いには来てくれなかった。
もちろん課長も。
あの後、課長は左遷されたと聞いた。
慎吾は一度も見には来ていない。
ただ、両親にお金を渡しに実家には来ているようだが、私は会っていない。
夜中も泣く子供に苛々する。
寝ては泣き、おっぱいを飲んでは寝て、また泣き、オムツを替えて、またおっぱいを飲ませて、寝かせて、泣いて…頭がおかしくなりそう!
堕ろせば良かった。
生まなきゃ良かった。
なんで荒川を選んだんだろう。
もっと騙しやすい人はたくさんいたのに。
もうすぐDNAを検査される息子を見つめる。
ぐっすり寝ている息子が憎くて堪らない。
いつか、私はこの子を殺してしまいそうで、怖い…。
次泣いたら…夜中に泣いたら…明け方に泣いたら…私はこの細い首に手をかけてしまいそうだ…。
あの時、どうして荒川慎吾に執着したんだろう…。
男前だが、最初から彼女を溺愛していると聞いて、そんな二人に嫉妬したんだろうか…。
私は溺愛なんてされた事がない。
この人ならと…思ったのかも。
この人なら私を溺愛してくれるのかもと。
お願い、誰か私を誰よりも愛して。
誰か助けて…
547
お気に入りに追加
845
あなたにおすすめの小説
だから愛した
佐治尚実
BL
大学生の礼嗣は恋人の由比に嫉妬させようと、せっせと飲み会に顔を出す毎日を送っている。浮気ではなく社交と言いつくろい、今日も一杯の酒で時間を潰す。帰り道に、礼嗣と隣り合わせた女性が声をかけてきて……。
※がっつり女性が出てきます。
浮気性の攻めが飲み会で隣り合わせた女性に説教されて受けの元に戻る話です。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
【完結】可愛いあの子は番にされて、もうオレの手は届かない
天田れおぽん
BL
劣性アルファであるオズワルドは、劣性オメガの幼馴染リアンを伴侶に娶りたいと考えていた。
ある日、仕えている王太子から名前も知らないオメガのうなじを噛んだと告白される。
運命の番と王太子の言う相手が落としていったという髪飾りに、オズワルドは見覚えがあった――――
※他サイトにも掲載中
★⌒*+*⌒★ ☆宣伝☆ ★⌒*+*⌒★
「婚約破棄された不遇令嬢ですが、イケオジ辺境伯と幸せになります!」
が、レジーナブックスさまより発売中です。
どうぞよろしくお願いいたします。m(_ _)m
ひとりぼっちの180日
あこ
BL
付き合いだしたのは高校の時。
何かと不便な場所にあった、全寮制男子高校時代だ。
篠原茜は、その学園の想像を遥かに超えた風習に驚いたものの、順調な滑り出しで学園生活を始めた。
二年目からは学園生活を楽しみ始め、その矢先、田村ツトムから猛アピールを受け始める。
いつの間にか絆されて、二年次夏休みを前に二人は付き合い始めた。
▷ よくある?王道全寮制男子校を卒業したキャラクターばっかり。
▷ 綺麗系な受けは学園時代保健室の天使なんて言われてた。
▷ 攻めはスポーツマン。
▶︎ タグがネタバレ状態かもしれません。
▶︎ 作品や章タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。
親友だと思ってた完璧幼馴染に執着されて監禁される平凡男子俺
toki
BL
エリート執着美形×平凡リーマン(幼馴染)
※監禁、無理矢理の要素があります。また、軽度ですが性的描写があります。
pixivでも同タイトルで投稿しています。
https://www.pixiv.net/users/3179376
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/98346398
捨てられオメガの幸せは
ホロロン
BL
家族に愛されていると思っていたが実はそうではない事実を知ってもなお家族と仲良くしたいがためにずっと好きだった人と喧嘩別れしてしまった。
幸せになれると思ったのに…番になる前に捨てられて行き場をなくした時に会ったのは、あの大好きな彼だった。
やめて抱っこしないで!過保護なメンズに囲まれる!?〜異世界転生した俺は死にそうな最弱プリンスだけど最強冒険者〜
ゆきぶた
BL
異世界転生したからハーレムだ!と、思ったら男のハーレムが出来上がるBLです。主人公総受ですがエロなしのギャグ寄りです。
短編用に登場人物紹介を追加します。
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
あらすじ
前世を思い出した第5王子のイルレイン(通称イル)はある日、謎の呪いで倒れてしまう。
20歳までに死ぬと言われたイルは禁呪に手を出し、呪いを解く素材を集めるため、セイと名乗り冒険者になる。
そして気がつけば、最強の冒険者の一人になっていた。
普段は病弱ながらも執事(スライム)に甘やかされ、冒険者として仲間達に甘やかされ、たまに兄達にも甘やかされる。
そして思ったハーレムとは違うハーレムを作りつつも、最強冒険者なのにいつも抱っこされてしまうイルは、自分の呪いを解くことが出来るのか??
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
お相手は人外(人型スライム)、冒険者(鍛冶屋)、錬金術師、兄王子達など。なにより皆、過保護です。
前半はギャグ多め、後半は恋愛思考が始まりラストはシリアスになります。
文章能力が低いので読みにくかったらすみません。
※一瞬でもhotランキング10位まで行けたのは皆様のおかげでございます。お気に入り1000嬉しいです。ありがとうございました!
本編は完結しましたが、暫く不定期ですがオマケを更新します!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる