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どうか
しおりを挟むアラン視点
ロイ君が事故に遭ったと知らせが入ってからリリーナがおかしくなった。
私達が何度も声を掛けたが返事をしない。
真っ白な顔で一言も話さない。
マリアがリリーナを抱きしめても抱き返してこない。
とにかく三人で病院へと急ぐ。
カイルとシェリル夫人、レイモンドがいた。
事故に遭った状況を聞いた。
ロイ君の状態を聞く。
命に別状はないが、頭を強く打っていて意識が戻るまでは分からないと言う。
リリーナはずっと動かない。
カイルやシェリル夫人が声をかけても、
レイモンドが声をかけても、
じっと一点を見つめている。
マリアがリリーナに説明している。
リリーナの手を握ってあげた。
とても冷たくなっていた。
可哀想で何度も何度も摩ってあげた。
カトリーヌ嬢やシンシア嬢、殿下も病院に来ていた。
リリーナに皆が声を掛けている。
何も聞こえていないのだろう…
カトリーヌ嬢とシンシア嬢が泣いている。
いつものリリーナなら揶揄っているだろう。
“もう~どうしたの?泣いたらダメだよ~”と。
ロイ君にはしばらく会えないから帰ろうとリリーナに告げる。
返事はないが、連れて帰る。
動かないリリーナを横抱きし、馬車の中でも抱いていた。
マリアは泣いている。
「リリー、ロイ君はそのうち目を覚ますよ。大丈夫だから。心配ないから。
お父様がずっと側にいるから少し眠りなさい。」
とずっと耳元で言った。
こちらを見てくれるように。
話してくれるように。
マリアもリリーナに話しかける。
「お母様もいるわ。大丈夫よ、リリー。
大丈夫。もうすぐロイ君も起きるわ。
大丈夫だからね。」
屋敷に着いてリリーナを部屋へ運んでベッドに寝かせた。
二人でリリーナの手を握っていると、
突然、
「怪我してるから走ったらダメだから早く行かないと。」
と叫び出した。
二人で必死にリリーナを抑えるが、
何度もリリーナは行かなきゃと言っては暴れる。
執事に睡眠薬を持って来てもらい、飲み込まないので、可哀想だが無理矢理飲ませた。
しばらくして漸く眠ったリリーナを二人で泣きながら手を握り、頭を撫でた。
どうか眠って起きたらいつものリリーナに戻っていますように。
どうかロイ君が目を覚まし、いつものようにリリーナを呼びつけていますように。
どうか二人が離れる事がありませんように。
いるのかいないのかも分からない神に祈った。
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