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ロックハート家の夜会
しおりを挟むサイモン視点
僕はイーガー家の嫡男で“影”の一員だ。
歴代の影はほとんどがイーガー家の者だ。
父は今の影を率いてる長官だ。
母も影をしていたが、僕を妊娠した時に引退した。
“影”の存在を知っているのは数限られるが、両親と同じ世代の人の数人にはバレている。
父はデカいし厳ついが、優しい父だ。厳しく冷静に判断し、調査対象を確実に追い詰めていく父を尊敬している。
母には弱いが。
母は…怖い。
怒らせると物凄く怖い。
両親世代にバレてるのも母のせいである。
学生時代の両親は、父は今の陛下が王太子の時の側近をしていた。
王太子の側近候補の力量を見極める事と警護の為にだ。
当時は反王族派がいて、王太子を狙っていた事もあり、常に側で周りを監視していたそうだ。
側近候補には今のグランディ侯爵のカイル様、ワソニック伯爵のアラン様、ロンバーグ公爵のリチャード様もいた。
後一人候補がいたが、その一人が反王族派だった。
ある日、王太子が大勢の敵に囲まれ襲われそうになった事があったそうだ。
その時“影”に付いていたのが…母だ。
母が出て来てからは圧巻だったそうだ…
目に浮かぶ…
黒髪を靡かせ、笑顔でバッサバッサ敵を倒す様は魔王のようだったとか。
全員倒した後、高々と大笑いしている姿にその場にいた全員が震えたそうだ。
その姿に父は惚れたようだが、どこに惚れる要素があったのか理解出来ない。
その後父と母を含めた“影”で反王族派はほぼ壊滅させた。
その事件があった為、当時の側近候補の三人は“影”の存在を知ってはいても黙認している。
その時から、陛下、父、側近候補だった三人は母の事を「魔王」と陰で呼んでいる。
母は知らない、知ったら魔王降臨だ…。
その魔王様を怒らせた僕は夜中なのに仕事をしている。
ルイジェルド殿下は意外と優秀で、ロックハートと聞いて何かを感じたのだろう。
ロナルド殿の話しを聞き、即座に指令を出した。
確かにロックハート家は以前から目は付けられていた。
ロックハート家の夜会は毎回ではないが、その夜会に出席した男女がその後すぐ結婚すると有名になった。
それと同時に、そこの夜会に出席すると婚約破棄になるとも。
結婚したい者はいいだろう、誰でもいいなら。
だが、相手のいる者は泣く泣くだ。
夜会で羽目を外すのはよくある事だ。
酔って我を忘れてって事もある、男は。
だが、女性は別だ。
いくら男を侍らせていても最後の一線は越えさせないのがほとんどだ。
婚約者がいたら尚更だ。
だが、そこの夜会に行くと一線を越える者が多数いる。
相手がいない者、すぐ結婚したかった者、相手が好みだった者は喜んで結婚した。
だが、相手がいる者、結婚など考えていなかった者、全く好みではない者達にとっては大問題だ。
事が事だけに隠していたい内容の為、皆、口が固い。
薬が盛られたのは確実なんだろうが、それぞれが相手を疑っている為話し合いにはならない。
まさにエール子爵がそれだった。
だが、よくよく話しを聞いてみれば、相手が入れたのではなく、誰かが薬を入れた水を飲んだ結果によるものだと分かった。
それで僕はロックハート家を調べている。
薬の出所が分からなければ先に進めない。
なので今、屋敷に忍びこんでいる。
大体の隠したい事は地下か隠し部屋だ。
この屋敷に地下はない。
隠し部屋の場所はすぐ分かった。
外から見たら良く分かる。
規則的に並んだ窓。一箇所、一部屋分窓がなく、壁の所があった。
あ~あ、これはダメでしょ…
丸わかりだ。
面倒なのは隠し部屋の開け方だ。
とりあえず屋敷に忍び込んだはいいが、隠し部屋の出入口は夫婦の寝室だ。
今夜はダメだなぁ~。
魔王、怒るだろうな~。
明日頑張ろう、そうしよ!
こっそり帰って寝よ!
僕は家に帰った後、自分の部屋には行かず、別棟の使用人用の空き部屋で寝た。
後日、執事のセバスチャンが魔王に報告してた事を今の僕は知らない…。
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